第23話 大連山

今日は測量士をイリーナの街(仮称)に招いてから10日目である。

一辺12kmに渡るおっさんの領都であるが、測量によって作りたい建物も街壁も作り終わったのである。

おっさんの作りたい街の全容はほぼ出来上がったのである。

2重の街壁と建物1つだけだったのだ。

あとは、魔道具がやってきたときに施設を作るのである。

また、町民の住まいなどは大工が建築材で作るのである。


測量士達は、その後の施設の場所を羊皮紙の地図に整理などで、日々忙しいようだ。

新たにやってきた従者達は開墾の手伝いをしている。


10日もあったので、新たなパッシブスキルがロキとパメラに生えたのである。


ロキは素早さ向上Lv1、パメラは力向上Lv1である。


これでロキとパメラのパッシブスキルはこのようになったのだ。


NAME:ロキ=フォン=グライゼル

Lv:38

AGE:31

パッシブ:力【1】、耐久【1】、素早さ【1】


NAME:パルメリアート=ヴァン=ガルシオ

Lv:38

AGE:20

パッシブ:力【1】、素早さ【1】


今日は測量による土壁の建物と街壁の作成がある程度落ち着いたので、ウェミナ大連山に魔石を取りに出かけるのだ。

Aランクの魔石が何十個もいるのだ。

チェプトとメイのレベルも上げてあげたいのである。

また、既にある程度メイとチェプトのレベルが上がったため、もうコルネによるレベル上げも難しいのだ。


飛竜とセピラスの2体の召喚獣に分かれて、大連山に向けて直進するおっさんらである。

8時頃出かけた、おっさんである。

180kmほど進むと大連山に達するのだ。


「大連山がこんなに近くで見えるぞ!」


おっさんの後ろでイリーナが心躍っているようだ。

冒険心の強いおっさんの妻である。

その声色からも、イリーナの心の動きが伝わるおっさんである。

そこには、そびえたつ標高1万mを超える山々があったのだ。

山は、最初はなだらかであるが、段々角度を上げていき、最終的には絶壁のように90度近く感じるおっさんである。

山のすそ野から山の頂上までも200kmほどもあるのだ。


山のすそ野の始まり付近に到着したおっさんである。

まだ、まばらにではあるが木も生えているのだ。


「いったん大連山のすそ野でおりましょう」


(ふむ、ここが大連山のふもとか。木の密度も減って閑散とした感じで山岳地帯だな。富士山も実はすそ野はかなり広く東京まで伸びているんだっけ?大連山もすそ野の広い山だな)


ごつごつした岩も多い大連山のすそ野である。

100km以上のすそ野が続いた後、急激に角度を上げそびえたつ大連山だ。

しかしそれは、視界の両端である。

おっさんの目の前には、その大連山の切れ目があるのである。

1万mもの大連山に現れた、ぱっかりとした切れ目である。

数kmに及び切れ目だ。


「この切れ目が帝国まで続いているんですね」


(ここが昨晩話を聞いた、美容ブロガーの鈴木ちふるさんが切った大連山の切れ目か。俺もブログを起こし続けたら、そのうち大連山すら切ることができるようになるのかな。今は無理だけど)


おっさんは、大連山に行くと皆に言った日の晩、イリーナから話さないといけないことがあると言われて、話を聞いたのだ。

それは1年ほど前に国王から聞いた、300年前に現れた検索神の使徒の話であったのだ。

自分と同じように検索神の加護を持ち、美容やグルメの情報が好きな20代の女性であったとのことだ。

国王から他言無用と言われたが、おっさんにとって大事な情報である。

おっさんにだけは話しておこうと思ったようだ。


(命と引き換えに邪神を封印した美容ブロガー)


「では、この辺一帯をもう少し調べて、狩りをしましょう」


新たな指示を皆に出して、狩りをするようである。


「「「はい」」」


ここには、おっさん、イリーナ、コルネ、セリム、チェプト、メイの6人がいる。

もう一度、召喚獣に乗り込み、大連山の一帯を探すおっさんらである。


探すこと10分

おっさんの乗る飛竜がモンスターを見つけたようだ。

飛竜が頭を下げ、下降を始めたため、背に乗るおっさんもモンスターを視認する。


「トカゲ型のモンスターのようです。数百m離れたところに降ろしてください」


おっさんらを背に乗せたままモンスターに突っ込むようなことは指示していないのだ。

モンスターの前方数百m手前で降りるおっさんらである。

ここは切れ目から数十km北の地点である。

緩やかな山岳地帯が続いているようだ。


(ふむ、これ以上、北上しても何もなさそうだな。ここは木も少なくて見晴らしもいいし、ここにするか)


2体の召喚獣から降りるおっさんらである。


「たしか、このモンスターはダンジョンにいたはずです」


(初めてのモンスターがいたらセリムに1つ吸収させるかな)


「分かった」


100種類以上のAランクのモンスターを倒してきたおっさんらである。

その中に似たようなモンスターがいたのだ。

さらに近づいていくおっさんらである。

仲間支援魔法でステータスも取得経験値増加もかけているのだ。


「チェプト、メイ、最初のうちは戦闘に参加する必要はありません。素材の回収を手伝って下さい」


「「は、はい」」


15mもの巨大な大きさのトカゲのモンスターである。

おっさんらに気付いて突っ込んでくる。


「エアプレッシャー」


残り数十mまで近づいてきたところで、4枚の巨大な風の刃がモンスターを瞬殺する。


「セリム、ここにしましょう。セピラスと飛竜に対してモンスターをなるべく連れてくるようにお願いします。何十体連れてきてもいいです」


「分かった」


『グルアアアアアアアア』

『クワアアアアアアアア』


飛竜とセピラスが方々に散ってモンスターを探しに行くようだ。

魔力接続により通常のモンスターより早く飛べると考えたおっさんである。

モンスターを探すのではなく、ここに連れてくるのである。

これはセリムの魔力接続のレベル上げも兼ねているのだ。

いわゆる釣り狩りだ。

モンスターのいる世界だが、そこまで頻繁にモンスターに出会えるわけではないのである。


(モンスターの多いダンジョンでさえ、モンスターに遭遇するのは1時間に1回程度だったからな)


探し回っても、効率が悪いと判断したようだ。

そして、こちらにはまだレベルを上げ切れていないチェプトとメイがいる。

視界の広いところに敵をおびき寄せるのである。

セリムもなぜ、こんなにポンポン召喚獣の使い方を思いつくのだろうと考えるのであった。


「コルネ、敵を近づけないでください。しかし、あまり遠くで倒すと素材の回収が難しいです。1町(100m)以内で倒してください」


「はい!」


魔導弓を持つコルネである。

コルネ用に高台も作ってあげるのだ。


待つこと30分が経過する。

すると、高台からコルネが叫ぶのだ。


「前方3里(9km)先から飛竜が戻ってきます!敵は8体、飛竜型の飛ぶドラゴンです!」


(飛竜も含めて米粒未満しか見えないけど、思ったより釣ってきたね。最初から複数釣ってくるのね。釣り道を心得ているではないか)


「分かりました。皆、待機を。チェプトとメイは土壁の中に入っていただきます。終わったら出しますので、少々お待ちを」


「「ひ、は、はい」」

「「「はい!」」」


かなりビビっているチェプトとメイである。

イリーナたちは一切動揺せず返事をする。

おっさんの指示でダンジョンの生活を思い出すようだ。

一度ダンジョンに入れば、300体以上のAランクを狩ってきたのである。


さらに近づく飛竜である。

速度を上げ、セリムのいる場所を突っ切って行く。

そして、やってくるドラゴン達である。


「エアプレッシャー」

「エアプレッシャー」

「エアプレッシャー」


おっさんの風魔法Lv3とコルネの魔導弓で仕留めていくのだ。

タンク役のソドンもいないので、近接戦闘はしないのだ。

100m以内に入った瞬間に倒していくのだ。


「ふむ、倒せましたね。コルネも助かります」


一度に近づかれないように、ドラゴンの両目を射抜くコルネである。


「うん、あ、セピラスが敵を連れてきます!トカゲ型と狼型です!12体です!!!」


(いいね、釣ってくるタイミングもいいぞ)


同じくある程度まで近づけて、ドラゴンを倒した辺りで、おっさんとコルネで倒すのだ。

一通り倒したら、土壁を解除するおっさんである。

おっさんの風魔法で肉塊になったモンスター達である。


「では、手分けして解体しましょう。チェプトとメイも解体の方法を覚えてください」


「は、はい」


20体のモンスターの解体をするおっさんである。

セリムもオーガを3体召喚し、解体を手伝わせるのだ。

コルネは敵の見張りである。


「これからどうするんだ?」


「そうですね。まもなくお昼です。解体をして、昼食を食べて、午後から同じく召喚獣にモンスターをおびき寄せて狩りましょうか」


「分かった」


四次元収納にはAランクの魔石が50個以上入るのである。

そして、この日に備えて、丈夫な大きめの麻袋を持ってきたのだ。

入りきれない素材の一部を麻袋にいれて、飛竜やセピラスの足につなぐのだ。


今回6人でやってきて、人数も少なく負担が少ないこともあるが、魔力接続により飛行能力の確認も兼ねているのである。


あと1月半ほどで、獣王国に向かうときにどの程度までの重さに耐えて飛べるのか確認する必要があるのだ。


検証に検証を重ねるおっさんである。

解体を進めていく。

イリーナが大剣でドラゴン達を解体していくのだ。

ドラゴンを解体し、一部はこの場でドラゴンステーキとして昼食になる予定だ。

魔石とお土産のお肉だけ持って帰るのだ。

殆どの素材は持って帰れないので、解体はほどなくして終わるのだ。


イリーナとメイが昼食を作ってくれる。

アウトドアの中での昼食だ。

土壁を周りに作って、コルネも呼んで昼食を食べるのだ。

おっさんが肉にかぶついているとチェプトが話しかけてくる。


「ヤマダ子爵様。あ、あの、すごい力が湧いてきます。わ、私こんなに…」


チェプトが話しかけてくる。

その横でメイが全力で頭を上下に頷いている。

メイも体感しているようだ。


「はい、20体のAランクのモンスターによってレベルが29になりました。多少体の動きに違和感があるようですが、徐々に慣れていってください。あとチェプト」


「は、はい」


「あなたはどうやらレベルが上がってはっきりしたのですが、斥候タイプのようですね」


「私は、斥候なのですか」


「はい」


レベルが上がって、ステータスの特徴がはっきりしたようだ。

そうなのですかと返事をするチェプトである。


「そして、メイ」


「は、はい」


「魔力も十分に上がってきました。3日後にもう一度、フェステルの街にいって回復魔法等の上級を習得できるか確認をしましょう」


(できれば、レベル20台で習得できるか確認したかったな。恐らく上級はレベル20台、通常はレベル10台で魔法を習得できると思ってたけど、検証はできそうにないな)


「わ、わかりました」


「そういえば、そろそろ、フェステル伯爵も王都から戻ってくると言っていたな」


「はい、一度作った街の説明をしないといけませんね」


「あ、あれを説明するのか?」


「え?どうかしました」


どうやらおっさんは自分が作ったものも自覚が足りないんだなと思う皆であったのだ。

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