第47話 うわさ
冒険者ギルドに呼ばれた翌日に、魔石95個を競りに出した。
お願いしたら魔石がいっぱい出たといった顔をされたおっさんである。
なぜなら、年間を通して、王国内で競りに出るAランクモンスターの魔石は全部で100個前後であるのだ。
その魔石の数に匹敵する数の魔石を1度に競りに出したのだ。
また、講習会も全員で参加した、王国の記録を更新した70階層までの話であったので皆、真剣に話を聞いたのだ。
今回ウガルダンジョン都市に在籍するAランクのクランでその時参加できるものが、全員参加したのだ。
しかも、槍視点や剣視点の話など、魔法使い以外の視点での話を聞けるということもあり、講習会の参加者の質問量も数倍に増えたのだ。
今回、イリーナ、コルネ、パメラも講習に参加したのだが、ダンジョンに潜る冒険者で女性が少ないのも、今回の講習会の参加者の熱意が違った原因1つかもしれない。
おっさんら一行が71階層に目指してダンジョン広場に到着する。
無音の波ができるように、会話が停まるダンジョン広場である。
おっさんら一行を見つめる冒険者達である。
既に2日前、王国建国以来の記録が更新された旨、周知されているのだ。
本当に侍女が仲間にいるとか言う会話も聞こえてきており、おっさん以外の認知度もあがってきたようである。
また、おっさんらがダンジョンに入った日から競りの日を予測するものも多いのだ。
そして、現在71階層前の入り口である。
当然70階ボスは討伐してから71階層の攻略をするのである。
「70階層ボスは2種類の4体固定のようですね」
「うむ、そうであるな。今回は魔法を使う敵がいなくて楽であったな」
「はい、その分ブレスに注意が必要でしたね。今回は守りが固くて助かりました」
飛竜が4体出たのだ。
「今回は盾2個もちであるからな」
おっさんはソドンに対して、ハルバートは荷台に乗せて盾2個持つように指示したのだ。
「ソドンは回復を1日も早くレベル3にして、範囲回復魔法を使えるようにしてください。そのレベルです。使い続けたらすぐに上がるはずです」
「あい分かった」
ソドンに対して、防御回復特化を指示するおっさんである。
攻撃は他のものに任せるのだ。
「陸地がないんじゃ、飛んでくる敵を倒しても落ちちゃうな」
セリムが、どうやって魔石を回収するのか尋ねるのである。
今回から1度の攻略で魔石は100個を回収する方針である。
「はい、ですので網を張ります」
「え?網?」
「そうです、アースウォール」
1辺100mの土壁を2枚貼り付け、幅200mの道を作成するのだ。
「おお、砂漠や海の時より幅がかなり広いであるな」
「はい、あの時は敵を引き寄せる必要があったので、あの程度の幅でした」
砂漠や海は下から敵がやってくるので、あまり幅のある道だと、攻撃できる範囲に敵がやってこない。
当然タブレットの索敵範囲外になる。
やってきても土壁が邪魔をして敵が地上に上がってくることができず、倒せないと判断したのだ。
レベルを上げる必要があるのだ。
そのため、土魔法のレベルを1に抑えて、40m幅程度の道にしたのだ。
今回は空から当然やってくると思われるので、道幅を広くして、倒した敵も土壁に落として、魔石も回収するのだ。
「おそらく最大5体の敵がやってきます。飛竜もやってくると思いますので、ブレスなどの遠距離もありますので気を付けてください。土壁は寝かすだけではなく、縦にも作成します。皆さんも判断して位置を変更して盾に使ってください。ソドンは台車も守るようにお願いします」
「「「はい」」」
あるくこと1時間である。
「前方上空に敵5体飛んできます!」
コルネが敵を発見する。
(む、タブレットに当然まだ範囲外として、ずいぶん遠くにいるな。さすが鷹の目、敵が米粒のようだ。ブレスがあるから、ある程度の距離で倒したいし助かるな)
コルネがおっさんのタブレットよりかなり広い範囲の索敵をカバーしており、空中からやってくる敵を早い時点で教えてくれるのだ。
飛竜、鳥系、蟲系のAランクモンスターが襲ってくる中、一行は進んでいくのである。
障害のない状況で、上空からのやってくる敵である。
中には下から回り込んで、いきなり横から出てくる敵も左右後に担当を決めて索敵を行っているのだ。
おっさんは遠くにいる間に敵の数を減らし、近づかれたら、翼や羽を狙って土壁の道に落とし、土壁で皆を守るという作戦を取っていくのである。
また、セリムが吸収したことがない魔石はセリムに吸収させながら、魔石以外は無視して進んでいくおっさんら一行である。
進んでいくこと2時間が経過する。
毛のように見えた、陸がある。
「あれ?何かありますね。宝箱です。セリムお願いします」
「わかった」
陸には1個の宝箱がある。
いつものごとく宝箱がでたら、セリムの罠解除をしてもらうのだ。
開けると1本の槍が出てくる。
「これは、オリハルコンですね」
「うむ。そうであるな。素晴らしい槍である」
武器について、調べているおっさんである。
「たしか、最硬度がオリハルコンですよね」
おっさんが理解している最強の素材順
1位 オリハルコン
2位 アダマンタイト
3位 ヒヒイロカネ
4位 ミスリル
【ブログネタメモ帳】
・オリハルコンこそ最強の武器
店売りの最高はアダマンタイトであるが、たまに市場でオリハルコンが競りに出たら武器屋、防具屋で販売されることもある。
飛竜の魔石と同じ程度の確率であるのだ。
小さい街ではなく、王都など一定以上の大きさの街ではないと扱われないとのことである
「はい、これほどの槍なら国宝級でしょう。白金貨300枚はしますよ」
槍使いのロキもオリハルコンの槍を見て感動をしている。
(ふむふむ、宝箱から最高の素材は69階層までアダマンタイトであったか、70階層超えてからオリハルコンもでるようになったか。さすがオリハルコン、国宝級か)
「では、これはロキが装備してください」
「え?わ、わかりました」
おっさんが言ったらもう断ることもできないと理解しているロキである。
仰々しく両手で受け取るのだ。
「皆さんも、オリハルコン製の武器が出たら、1人1つは装備していただきます!オリハルコンはあまり出ないようですので、とりあえず店に売らずとっておきましょうか」
「「「はい!」」」
そして、73階層まで進み、続きの攻略は次回という話をして帰路に着くのである。
12日の日程を終えるのであった。
拠点につき、チェプトとメイからねぎらいの言葉を貰いその日が終わるのである。
そして翌日、13人がそろっている朝食である。
若干寝不足のおっさんである。
眠気を我慢して朝食を食べていると、パン屋の娘ヘマから質問を受ける。
「ヤマダ男爵様、ちょっとお尋ねしてもよろしいですか?」
ヘマは、最初のころは自分の想像していた貴族の家で仕えることと違っていて戸惑っていたようだ。
何で皆一緒に食事を取るのか。
パンが思いのほか好評である。
私も風呂を使っていいのか。
給金が思った以上に高い。
それ以上に彼氏の給金が半端なく高い。
ヘマもずいぶん慣れてきたので、声をかけてくれるようになったのだ。
「はい、なんでしょう?」
「お店で聞いたのですが、ヤマダ男爵様ってオーガ3000体を倒したって本当ですか?」
「へ?本当ですけど?なぜそんな話を?」
(ん?パン屋で聞いたって?拠点の誰かから聞いたのではなくて?)
ヘマは、歩いてすぐの大通りに実家でお店のパン屋があるのだ。
パンに必要な小麦粉などの材料を店から持ってきているとのことである。
また、店に顔を出せば、なじみの客も多く、最近は冒険者じゃなくてもおっさんの話でもちきりとのことだ。
「ほ、本当だったのですね…。実は街で吟遊詩人が詩っていまして、それを聞いたお客さんが教えてくれたのですよ」
「吟遊詩人?」
おっさんが60階到達した情報は特に冒険者にとって激震が走ったのである。
これまでの、最下層の記録を塗り替えたのだ。
それからの70階層到達の情報が15日ほど前に、冒険者ギルドを通して発表されたのだ。
当然のごとく、おっさんは何者だという話に街を上げてなったのだ。
そんな中、現在、フェステルの街が活況のため、フェステルの街とウガルダンジョン都市の間を行き交う行商人が多いのだ。
今までは聞き流されていたおっさんのオーガ3000体伝説が、ウガルダンジョン都市でも囁かれるようになったのだ。
一部の吟遊詩人が街民に詩って聞かせているとのことだ。
冒険者だけでなく、街民にもおっさんの情報が流れていったのである。
「なるほど、そういうことだったんですね。貴重な情報ありがとうございます」
(アヒムもそうだが。ヘマさんも街のこと教えてくれて助かるな。さすが大通りにあるお店の看板娘といったところか)
「と、とんでもありません」
実は噂の真相を聞いてほしいとたくさんの人から言われて、勇気を出して聞いてみたヘマである。
親ばかの父モルソンが、娘ヘマがおっさんの従者を射止めたという話をお客にしまくった結果なのだ。
「ですが、このパンって、お店の材料を使っていたのですね。チェプト代金はしっかりお支払いするように」
(考えてみたらそうだな。小麦粉を店から持ってきた方が早いからな)
「はい、ヤマダ男爵様」
「え、いえ、そんな大した量ではありませんので…」
「いえ、こういったことはきっちり払うのがヤマダ家の家訓なのです」
「あ、ありがとうございます」
会話が一段落着いたので休暇を宣言するおっさんである。
「休暇日です。そして3日間の予定です。では、今回手に入れた魔石100個を競りに出します。また前回の競りの代金も回収しましょう」
なお、チェプト、メイ、セリム母、ヘマについても7日に2日は休日を与えているのである。
週休2日制である。
パン屋の娘ヘマが拠点に来て喜びまくっているメイやセリム母を見て、おっさんは知ったのである。
負担が減って助かる。
パンも出来立てが食べることができると。
おっさんの部屋はダンジョンに入っているときもメイとセリム母が毎日掃除していたのだ。
おっさんは驚きおののくのである。
おっさんは1k8畳の賃貸の部屋をハンド型の掃除機で掃除するのは週に1度である。
布団のシーツを洗うのは月に1度である。
拠点には、ダンジョンに入ると最低10日は現在戻らないため、10日に1度の掃除で良いと言ったのだ。
すると侍女からも、ロキからも大反対を受けて、妥結案として、3日に1度に変更されたのだ。
他の部屋も同様に3日に1度に変更されたのだ。
なお、お風呂もおっさんが拠点にいるときはおっさんが積極的に水と火魔法でお湯貼りをしているのだ。
「では、まずは、冒険者ギルドに行きましょう」
馬車2台を使って冒険者ギルドに向かうおっさんらである。
素材回収担当の受付に魔石100個を渡し、前回の95個の魔石の競りの代金白金貨3700枚をもらうおっさんである。
(ふむ370億円か。王国中のお抱え商人が集まって、鉱物の加工、水路、ゴミ廃棄場など大型の施設に使う魔石を競りと落としているのか。現実世界なら、魔石は石油だな。産油国の油田の利益半端ないからな。石油王ならぬ魔石王といったところか)
魔石を石油に例えて収益を考えるおっさんである。
「では、拠点にお金を戻して、ダンジョンに行きます」
眠気を我慢して、ダンジョンに行こうとするおっさんである。
「それは、今日しないといけないのか」
「もちろんです、絶対に今日しないといけません。絶対にです」
「そ、そうか…」
イリーナの返事に答えるおっさんである。
何をしに行くかというと、70階層ボスは8体現れたのだ。
では、60階層ボスは4体である。
ならば、これから戦う80階層ボスは16体の可能性が高いのだ。
敵も多いため、土魔法でボスの間でも防壁として、土壁を築きたいのである。
土魔法を使ったら中央に固まっているボス達は動くのか検証する必要があるのだ。
敵が動かないなら、先に土壁を作る。
敵が動くなら、優先順位決めて、攻撃を加えたあとに土壁を作らないといけないのだ。
検証先は、50階層ボスがAランクモンスター2体である。
そこで土魔法の土壁をいろいろな位置で作ってみて、敵の反応を知りたいのである。
この実験をすると、ワープゲートは1日1回しか使用できないため、24時間ほど実験が終わってもダンジョンに待機して、明日に帰ることになるのだ。
従者侍女は断ったが、1人では心配と他のクランメンバーは同行するのだ。
(いや、今日もさすがに拠点は厳しいわ。昨日はもうだめかと思ったわ。ホテル代いくらでも払うからホテル行ってくださらぬか…。それか実家近いんだし、職場へは泊まり込みじゃなくて通いにするか。うちの会社は、通勤手当は徒歩通勤でもだしますよ)
この土魔法の実験は大事なのだが、理由は別にあるのだ。
おっさんの部屋の真下がイグニルとヘマが一緒に住む部屋なのだ。
現実世界と違い、防音素材を一切使ってない建築物である。
10数日ぶりにイグニルが帰ってすぐは、夜に愛が溢れて大変なのである。
しかもそれを、イリーナがベッドにいるときに溢れる愛を聞かなければならないのだ。
イリーナもそれを分かってか、ベッドの中でおっさんを凝視するのだ。
特に最近、イリーナの視線が熱を帯び始めているのだ。
イリーナに食われる寸前のおっさんであるのだ。
「クランの安全を確保するためには、クランリーダーは積極的に行動しなければなりませんからね!」
おっさんの土魔法の検証に力を入れるのであった。
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