第11話 おっさん、異世界の村に滞在してみる
村長宅に泊まるところまでの記事を書き終え数日たった土曜日である。
「まあ、PVとASポイント稼がないと異世界でつむかもしれんしな。モンスターも盗賊もいる世界だろうし。ポイント貯めをメインにしないとな」
これから村イベントを控え、経験値によるレベル上げは当面厳しいと踏んで、異世界に行くタイミングを遅らせたのである。
「さて確認すべきことがいくつかあるぞ」
・タブレットはほかの人には見えるのか
・村の名前
・村のある国について
・魔道具はあるのか
「曜日やお金の単位とかも含めれば膨大になりそうだがまあぼちぼち調べるか。あんまり具体的な数字や固有名詞が分らんとふわっとした記事になってしまうからな」
パソコンを立ち上げ、検索神サイトを開く
『ブログ記事の投稿が確認できました。異世界にいきますか はい いいえ』
おっさんは『はい』をクリックすると、ふっと目の前の風景が現実世界に戻る前の村長宅の借りた部屋に変わる。
もうかなり夜も更けたのでかなり暗い。
(部屋には魔道具っぽいものなさそうだな。暗くてさっぱり見えないが。)
(ステータスオープン)
深夜の、人いる家なので無言でおこなうおっさんである。
Lv:11
AGE:35
HP:144/144
MP:156/156
STR:30
VIT:42
DEX:42
INT:138
LUC:40
アクティブ:火魔法【1】、水魔法【1】、風魔法【1】、回復魔法【1】
パッシブ:体力向上【1】、魔力向上【1】、力向上【1】、耐久力向上【1】、素早さ向上【1】、知力向上【1】、魔法耐性向上【1】
加護:検索神の加護(微小)
EXP:1693
PV:127P
AS:13P
(先週の日曜からなので6日経ってるが、結構PVとAS増えてるな。一日平均20PVか。すぐポイント消費すると必要な時に取得できないから置いておくか)
(さてと少しスキルどんなものがあるか調べてから仮眠するか)
気になる新しいスキルを羅列していく。
・土地魔法Lv1 1ポイント
・しのび足Lv1 1ポイント
・礼儀Lv1 10ポイント
・魔力回復加速Lv1 100ポイント
・時空魔法Lv1 1000ポイント
・4次元収納Lv1 10000ポイント
(戦闘系で必要そうなのがこんなもんか。今もってるスキルをレベル2にするには全て10ポイント必要だな。時空魔法と4次元収納は当分取れそうにないな)
タブレットの画面を見ながら、眠りにつくおっさんである。
独特の草の香りのするベッドに寝ながら、干し草のベッドも初めてだなという感想をもつ。
日の光がおっさんのいる部屋にふりそそぐ。
どうやら朝になったようだ。
おっさんは目覚め窓を見る。
(やはり窓ガラスはないか。木枠だな。街に出ればあるのかな)
木枠を開き、村を眺める。
村長の家の近くに村人の家がないためか、既に村人が活動を始めたか分からない。
(家の中も物音がしないな。今何時か分からないが早すぎたか。トイレどこだろう)
トイレを探しに部屋を出るおっさんである。
廊下を進むと居間につく。
どうやらテレシアさんがいるようだ。
「あら。おはよう。ゆっくり眠れた」
「はい。ぐっすりでした。トイレはどちらですか」
「こっちの廊下の突き当りよ」
突き当りのトイレで用をすまし、居間を経由するおっさんである。
「もう少ししたらみんなでお食事しましょう。部屋で待っててね。呼ぶから」
どうやら部屋で待っててほしいらしい。汲み取り式だったなという感想を持ちながら自室に戻り朝食を待つ。
(トイレも魔道具使ってなかったぞ。まあ田舎だからだろうか。街に出ればあるのか)
部屋で小一時間したら朝食に呼ばれる。
家族一同がそろっているようだ。
長老、息子夫婦、孫二人のようだ。
「もう少し経てば、ヨハンらがやってくるのじゃ」
長老が話しかけてくる。
「はい。同行させていただきます」
「村のものでけが人がいるか声をかけておくのじゃ。戻ってきたら回復させてほしいのじゃ」
昨晩に言われたことを朝も言われる。
ゴブリンの脅威も完全に消えたわけではなく、貴重な回復魔法も必要なため、当然の態度だろうという感想を持つおっさんである。
(村長候補の息子も孫二人も話しかけてこないな。まあよそ者だしな)
一切目を合わせようとしない孫を見ながらそんな感想を持つ。
部屋に戻って待つとほどなくして、ヨハンらが迎えに来る。
「待たせたな。いってくれるか」
と話しかけてくるヨハンである。
もう傷は完全に癒えたのか包帯はしていない。
村を出るヨハンら。
コルネも一緒に行くようだ。
もう少し大勢で行くと思ったが3人で行くらしい。
(イノシシとか倒したら重そうだな。人手足りるのかな)
という感想を持ちながら、村の外に出る3人組である。
村ではもう畑仕事をしている人がぽつぽついる様子がうかがえる。
村はもう活動を始めたようだ。
(この辺で収穫されるのは何だろう。気候もそんなに暑くないし、米というより小麦系かな)
頭で現実世界の『世界イモ、米、小麦の分布図』を思い描きながら田園風景を横切っていく。
「それで猟は何を狩りに行くんですか」
「グリーンボアやコロコロ鳥だな」
(ボアって言ったな)
「モンスターとかいるんですか」
「まあたまにでてくるぞ。ゴブリン、オーク、トロルあたりだが、この辺はそんなにいないんだ。たまにはぐれのオーガがうろついてる時もあるぞ」
異世界感のあるワードが出てくるなという感想を持つおっさんである。
「昨日かなりうろつきましたが、何も出てきませんでしたよ」
「去年から不作の不猟でな。動物の餌も減ったんだ。それに、ゴブリン村も近くにあって獲物の数が減ったんだ」
(豊作、不作の影響が大きい世界なんだろうな)
「今日は森の中を探し回るような感じですか」
「いや。まずは動物が良くやってくる水場が1刻ほど歩いたところにある。そこで待ち伏せをしよう。」
「そうなんですね。水場につくまでに村のことについて聞いていいですか」
「いいぞ。わかることなら何でも聞いてくれ」
村について情報収集するおっさんである。
(なるほど、ここはヴィルスセン王国のアロルド=フォン=フェステル子爵が治めている子爵領のルルネ村だそうだ。携帯も何もないから忘れそうだぜ)
必死に名前を覚えようと頭の中で異世界感のある固有詞を反芻するおっさんである。
(あと、ふつうに魔道具はあるらしい。ランプのような魔道具なら村長宅にもあるらしい。モンスターの魔石を燃料にしてるんだって。魔石はモンスターによって価値はピンキリだそうだ。消し炭にしたゴブリンにもあったのか。もったいなかったか。いやナイフも何もないのにゴブリンさばけねえよ)
さらに会話を続けるながら水飲み場へ向かう3人であった。
(何か異世界に来てずっと歩いてるな)
もうすぐ水飲み場かなと感想を持ち始めたおっさんの思考をさえぎって、ヨハンが警戒するように言葉を発する。
「む。何か音が聞こえるな」
「どうしたの。おとうさん」
娘も心配なようだ。
「どうやら先客がいるらしい」
森の中を切り分けたところが森林の中から見えかけたところで異変に気付く3人である。
というより異音に気付く。
「グルアアアアア」
けたたましい雄たけびが聞こえる。
「なんでしょうか」
「静かに。様子を見に行こう」
・・・・・・・・・
ここはルルネ村である。
まもなく昼に差し掛かろうとしているとき、団体での来訪者がやってきていた。
何事かと村人たちが集まってきている。
「我が名はイリーナ=クルーガーである。領主様の命によりゴブリンの討伐を命じられた。村長に会いたい」
数十騎の騎馬隊を引き連れ、ゴブリン討伐隊を任せられたイリーナである。
人込みの中から待ちに待った討伐隊により歓喜の声が湧いてくる。
数人が村長を呼びに行く。
「わしが、この村の村長です。わが村の願いを聞き届けていただきまことにありがとうございます」
「礼には及ばぬ。領民を守るのは騎士の務めである。さっそくゴブリンの巣を案内してほしい。だれか乗馬できるものの中から案内役をかってはくれぬか」
「案内役を選んでおきましょう。しかし騎士団の皆様は村についたばかり。馬の飼料や水も用意させていただきましょうぞ」
おもてなしをしようとする村長である。
きっちり領主直属の騎士団に胡麻をする村長である。
税が変われば死者もでる世界であり、当然である。
「そうか、それは感謝する。馬に休憩を取らせたらすぐに出発するぞ」
おっさんたち3人が猟に出ている間にとうとう騎士団のゴブリン討伐隊がやってきた。
「ゴブリンの巣の様子も聞いておきたい。だれか詳しいものはいるか」
「それなら私が」
と村長は言う。
「村長自らか。助かる」
「いえ、先日、見習いの魔導士から聞いた話で」
昨日おっさんから聞いたばかりの情報を話す村長である。
「なに。見習いの魔導士だと」
ゴブリンとは別の単語に反応するイリーナである。
村長はそのまま、ゴブリンの状況の説明をする。
今回のできごとがおっさんにどのような影響をもたらすのか、おっさんはまだ知らない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます