エピソードTWENTYーTWO ー香月

「え・・・あの、なんでしょうか・・・?」



「いや・・・お願いがあってきたんだけど」




はい?いや・・・今会ったばかりだろ。見知らぬ人に突然お願いされるとかどう考えてもおかしいだろ。




「もしかして今何かしてた?邪魔してたらごめん」



「あ、いえ。全然構いませんよ」



にこにこした顔で返事をした。が、愛想笑いだということを知りもしないこの人には僕の気持ちは分からないだろう。









「ふーん。まいいや。これから俺が言うことを1字1句聞き漏らさないで聞いてね。もしわかんないことがあっても2度目はないから・・・・・・カツキくん・・・」



ん?・・・今、僕の名前・・・





「あんたの大事なお姉さんは、あるヤツの手によって、とある場所に閉じ込められてる可能性が高い。まあ、1口に言うと監禁?確か、ジョセフが何かあったら連絡しろって言ってあんたの連絡先を渡したんだったね。で?その連絡ってのは来てるの?」








は?



「来てんの?」



「いや、あの・・・」


全く意味がわからない。なぜこの人が僕の姉のことを知っているのかも分からないし、なぜジョセフまでこの男と絡んでいるのか不明だ。




「ごめん忘れてた。あんたのお姉さんと共演させていただいている声優の、棗です。ジョセフから全部聞いてるから、あんたにイトナちゃんの場所、教えようと思って」





え・・・姉さんの場所・・・





「あの・・・教えてもらえるんですか」






「もちろん」







棗さんは頷いた。・・・って、棗さん!?ちょっと待って!!あの人気声優の!?姉さんと共演することになったイケメンでかつイケボの!?すげー・・・・・・とか喜ぶわけない。




そこら辺のやつらはそうかもしれないが、僕は違う。












「ん。やるよ」


そう言って渡されたのは謎の白い紙。




「別に怪しいなにかじゃないから。まあ、個人情報とかもろもろ」



怪しい何か・・・ではある気がする。



紙を開くと、様々な情報が殴り書きで書いてあった。





「〇〇学園、〒?????、電話番号?????、生徒会長・・・ってこれ、棗さんが書いたんですか!?」




「まあ。急いで調べたから間違ってたらごめん。あ、字見えるか?殴り書きなものだから汚いだろ。見えなかったら言え」




すごい・・・これだけの情報を。







「あの・・・ありがとうございます」






「別にいい。これでイトナちゃんが助かるのならどうってことない」



涼しい顔で言う棗さん。この人は・・・姉さんの言ってた通り本当にすごい人なんだ。












「それよりさ、早く行ってくんない?俺、あんたの礼が聞きたくてここに来たわけじゃないんだけど」



棗さんが鋭い顔をして僕をはやし立てた。




「あ・・・ありがとうございました!」



僕は深く一礼をして走り出した。


















「助けなかったらまじ許さねえから」




後ろで低い声がしたが、僕は気にとめなかった。

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