(4)今後の展開
本日(2021/1/1)投稿1話目(1/2)
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魔物の進化形態については色々と複雑すぎて現時点でまとめるのは不可能――というよりも、恐らく今後もまとめ切ることはできないだろうと考えている。
それは、新たな魔物が出てくればそれに合わせた進化というのが存在しているのではないかと推測しているからだ。
勿論その時はその時で色々と考察していかなければならないのだろうが、それはその新しい進化をする魔物が出てきた時に考えるしかない。
とりあえず今は今見えている進化の形態で物事を考えて進めていかなければいけないのだろう。
というわけで、未知の進化は脇に置いておくとして、子眷属たちの今後ことにについて話を切り替えた。
「話は変わるけれど、偵察用の子眷属を増やすことって可能かな?」
「それは勿論できますが、理由をお伺いしても?」
「今までは領域の拡大に合わせて増やしてきたけれど、今後は間違いなくそうはいかなくなるからね」
「人の町の存在ですわね?」
「それもあるけれど、その先のことも考えていてね」
「その先、ですか」
「そう。俺の中では
そう断言すると、シルクとクイン、それにラックは同時に頷いていた。
このことは既に眷属たちには伝えているので、納得することではあっても驚くようなことではないのだろう。
北海道を攻略するにあたって人を完全に排除するつもりはないが、その過程で何らかの争いが起こることは間違いないと確信している。
その争いが直接的な暴力ではなく、物の流れだったり政略的な物だったりするかはわからないが、避けることができないのは間違いないだろう。
特に北海道の南端、日本でいうところの函館辺りにある町は、南側との交流もあるので簡単にこちらのものにはならないはずだ。
それでも領域内に加えようとしているのは、その先の安定性を考えてのことだ。
一つの島に二つの勢力があれば、いつか必ず争いごとが発生する。
それをなくすためにも、北海道制覇は確実にしておきたい。
ただ、今問題にしているのは北海道内で争いが起こることではなく、その先のことだった。
「この島を攻略したその先、南の大きな島に進むかどうかはまだ未知数だけれど、全くの無関係でやっていくことはできないだろうからね。どうしたって情報は必要になるよ」
「……なるほど。情報収集役としての子眷属を必要としているというわけですか」
「そうなるね。こんなことを考えられるようになったのも、くず魔石があまり出してきたからだけれどね」
「確かにあれだけの魔石を余らせておくのはもったいないですわね」
「ですがくず魔石で作る子供たちだけでは、色々と難しい面もありますよ?」
「まあね。だから無理にくず魔石だけで作ってというつもりはないよ。ただ偵察部隊が必要になるのはわかるよね?」
「それはその通りですわね」
改めての俺の問いかけに直接返してきたのはシルクだったが、クインも納得した顔で頷いている。
――と、同時に数秒の間何やら考えるような表情になった。
やがてその考えがまとまったのか、クインがこんなことを言い出してきた。
「それでしたら一つ考えていたことがあるのですが……」
「クインが? 珍しいね。いつもだったら溜めておかないですぐにでも話そうだけれど?」
「はい。一つはまだ早いと考えていたからなのですが、主様がそこまで先のことを見通されていらっしゃるのであれば、必要になるかと思います」
「恐らくわたくしと同じ考えですわね」
シルクはクインが何を言い出そうとしているのか分かったのか、そんなことを言って小さく笑った。
「そういえば、今までこの島を攻略した後のことは話していなかったね。――それで?」
「はい。簡単に言ってしまえば、私と同じような存在を作り出す許可を貰いたいのです」
「クインと同じような存在……? ということは、子眷属を生み出せる眷属ってこと?」
「正確にいえば、その子が生み出すのは孫眷属辺りになるのでしょうが、考え方は合っています」
「それって大丈夫なの? 主に統治方面で」
「私が作る子眷属は、間違いなく主様への忠誠は揺るがないので大丈夫です。その子が生み出す子も主様への忠誠を誓うことになるでしょう。というよりもそれ以外は親となる子が許さないでしょう」
「親となる子って表現が分かりずらいけれど、言いたいことはわかった」
蜘蛛はともかくとして蜂が女王を中心とした集団生活を行っていることは、ただの野生生物でも分かっていることだ。
それは魔物となっているクインのような種でも同じようで、子を産む女王蜂の存在は絶対となるようだ。
それが蜘蛛にも当てはまるかはわからないのだが、シルクが同じように頷いているのを見るとそうなるのだろう。
だとすれば、俺から言えることは一つしかない。
「そう。だったらやり方は二人に任せるよ。俺としては島の外に出て偵察できる部隊を作ってもらえれば何も言うことは無いよ」
「ありがとうございます。――それで、厚かましいのですが一つお願いがございます」
「何?」
「強い子を作るためにも、できることなら主様が作った魔石が欲しいのです」
「ああ。そういうこと。シルクも一緒?」
「そうですわね」
「分かったよ。今すぐにとはいかないけれど、きちんと用意しておく。……明日か……遅くても明後日には用意できると思うよ」
「ありがとうございます。それからもう一つ考えていただきたいことがあります」
「何かな?」
「女王蜂を作るために、私……たちはしばらくまともに動けなくなると思われます。ですので、その間のことを考えていただけるとありがたいです」
「ああ~。子眷属たちが困ったことになるのか」
「いえ。そちらは大丈夫です。私が子を作る間もきちんと今まで通りに動いてくれるはずです。問題なのは私の眷属としての働きです」
「そっちか。……それは皆に伝えておくとして、二人同時はやっぱりまずいと思うから交互にやってもらうしかないかな?」
「それくらいでしたら問題ありません。――シルクは?」
「わたくしも問題ありませんわ」
「そう。だったらその方向で進めることにしようか」
一応の方向性が決まったことで、シルクとクインの顔が明るくなっていた。
――のだが、ここで今まで黙って話を聞いていたラックが話に入ってきた。
「ピ。ピピピッピ。(主。折角今後の話になったので、ついでに話して起きたいことがあるですが)」
「ラックが? 何?」
「ピピ。ピッピ。(主は先々のことを考えて偵察部隊を提案されましたが、それに合わせてこの島を管理する部隊も作られた方がよろしいかと思います)」
「どういうこと?」
「ピピピ。ピッピピピ。(私やファイは、たとえ番を持ったとしても広い領域を管理できるような数にはならないでしょう。ですので、シルクとクイン、それに今度も増えるであろうルフの子眷属を中心に考えた方がよろしいということです)」
「……本当にそれでいいの?」
「ピピ。ピッピ。(私は問題ありません。一応ファイには確認したほうがいいでしょうが)」
「そうだね。……うん。そのことについては、また改めて場を設けてきちんと話すことにしようか。どうせこの島を領域化するにはまだまだ時間がかかるだろうしね」
俺がそう宣言すると、話を提案したラックはもとよりシルクやクインも立ち上がって頭を下げてきた。
これで大体の話が終わったことを察したのだろう。
あとは各々の仕事をするべくそれぞれの場所へと向かって行った。
それを見送った俺は、眷属たちもそれぞれで色々なことを考えているのだと思った。
そして、それをとても好ましく感じているのであった。
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