366の雫

@kokoronohana

11月Ⅰ

11月19日 ルジェアプリコットオレンジ

「変わっているね」


 昔から遥は周囲からそう言われてきた。年頃の女の子になっても、お洒落には無頓着だし、流行りものは追わない。人気のアイドルを追わなければ、好きなのは誰も知らないようなコアなアーティスト。


 天邪鬼と言われれば、そう捉える人も中にはいるだろう。だが着飾らない遥の性格が誰にもそうは言わせなかった。


 遥は自分の趣味と他人の好みを比較する質ではなかったからだ。彼女の口癖はこうだ。


「私はあまり興味はないけれど、あなたが言うのだからそれはとても素敵なものなのね」


 人と自分の好みを同じ土俵に立たせること自体がナンセンスだ──人の数だけ感性も違う。分かっていながらも、それを認めることが出来ない人の方が圧倒的に多いだろう。それを認められるのが遥だった。


 遥の言葉は一見冷たく聞こえるが、その真意は誰よりも暖かい思いが込められていた。


 差別や偏見のある世界の中で、自分の世界を大切にしていながら、相手の思いや好み、趣味を肯定する言葉だからだ。一切の否定がなく、その心にも淀んだ気持ちはなかった。


 ただ純真に、愚直に。


 自分の感性とは合わないけれど、あなたの趣味はあなたの感性にシンクロする。


 遥の世界は独りにして、誰とも繋がりを持つ世界。受け入れはしないが、受け止める世界。


 彼女はそんな独特な世界のセンスを持っている。




酒言葉『独特の世界のセンスの持ち主』

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