十四章 「あなたは誰?」
「あなたは一体何者なの?」
私は自分の部屋で、幽霊にできるだけ自然に感じるように聞いた。
いつもあっけらかんとしているけど、幽霊はいつも大事なこと言ってくれない。
太陽の光が窓から入り込んでくる。
照らされた幽霊は一瞬、聖母のように見えた。
「えっ、幽霊だけど」
幽霊は、前に聞いたときと同じように答える。
「そうじゃなくて、なぜ私が自殺する呪いにかかってることを知っていたの?しかも、どうしてその呪いの解き方も知っていたの?」
「それはー、」
幽霊が目線をそらして、笑った。
この幽霊は都合が悪くなると、笑ってなかったことにしようとするところがある。
「誤魔化さないで。幽霊だからって何でも知ってる訳じゃないわよね?しっかり説明して」
私は少し怖くなってきたのかもしれない。
仲良くしていた幽霊のことを、私は何も知らないのだから。
本当はすごく悪いやつかもしれない。
何かの自分の目的のために私を利用しているだけかもしれない。
だから、はっきりさせておきたかったのだと思う。
「僕は自殺して幽霊になったと言ったよね」
幽霊は私に近づいてきた。
胸の鼓動が早くなる。
「僕も君と同じで、智子さんの生まれ変わりなんだ。一人目の生まれ変わり。自殺するまでその事を知らなかった。でもたまたま幽霊の仕事をしているときに、あの村に行ったんだ。そして、智子さんの遺体を見た」
私は幽霊のことを少しでも疑ったことをすぐに謝った。この時点で幽霊が私を利用していたのではないと直感でわかったから。
謝っている私を見て、幽霊はいつものように笑った。
そして、幽霊は話を続けた。
「その時、突然呪いのことが頭に入ってきた。それから、呪いについて調べた。そして、生まれ変わりを助けようと決心した」
そこで、幽霊は涙を流した。
私はまた、いつの間にか自分も泣いていることの気づいた。
どうしてこんな気持ちになるのだろう。
生きるってこんなに重たいものなんだろうか。
「でも、その時は方法がまだわからなくて、全然うまくいかなかった。僕が何をしても、智子さんの生まれ変わりの人は次々に自殺していった。僕の目の前で自殺していった。君が15人ぐらいかな」
「もう大丈夫だよ」
私は、幽霊を包み込むように抱き締めた。
そうしたいと思った。
幽霊が、私の自殺を必死で止めていた理由がわかった。
私は何て愚かなことをしていたのだろう。
そして、この幽霊は今まで何度も何度も自殺することを止められず、自分を責めたに違いないから。
同じ生まれ変わりの私なら、この幽霊の気持ちはわかる。
性格も結構似ているから。
辛かったと思う。普通に考えても誰かの死に直面することだけで胸が痛くなるものだ。
それなのに、この幽霊は苦しむ人の姿を300年近くずっと見てきた。
理由がわかっているのに助けることができない自分が情けなかったと思う。
幽霊はゆっくりと抱き締め返してきたのだった。
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