第6話 case3 誘惑の牙1

土曜日の昼下がり、街中を一人でうろつく男の姿があった。


金髪にTシャツ、ジーパン姿の大学生、ヨウジである。


普段は同じ大学の仲間達と一緒に遊んでいるヨウジだが、今日は約束がないため一人で街中をブラブラしていたのだった。



「あ~休日だってのに、なんかおもしれ―ことねーかなー」



先程映画館を覗いてみたヨウジだったが、今は興味を引くものはやっていなかった。


恋愛映画は見るといつも途中で寝てしまうし、アクション映画は面白いが配役が気に食わなくて見る気がしない。


ミステリアスな推理ものの映画も恋愛映画と同様に見ていると眠くなる。


あとは子供向けのアニメ映画くらいだが、対象年齢が自分よりも一回りも下の映画を一人で見る度胸は彼には無かった。


アニメ自体は好きなのだが、残念ながら他に見られる映画はなかった。


彼が大好きなホラー映画・・・それもスプラッター表現の強い映画は、今は上映されていなかった。



「ゲーセンにでも行ってみっか」



歩きながらそう口にした彼に、後ろから女性の声が聞こえた。



「そこの金髪のお兄さん。暇なら私と遊ばない?」



ヨウジが振り返ると、そこには美女が立っていた。


まず目に入ったのは、目線の少し下にある豊かな谷間だ。


服装も胸元をドン!と強調したものになっており、見てくださいと言わんばかりだった。


胸元ばかりに目がいってしまうが、ウエストはキュッと細く、ショートパンツから出ている足はスラっとしている。


そして最も気になるその顔は、アイメイクのパッチリ目に、すっと高く通った鼻筋、艶々とした唇。


それらが白く透明感のある肌の、シャープな輪郭の顔の上にバランスよく乗っかっていた。


文句なしの美人だった。



「お、お姉さんすっげー美人だね。どうしたの?彼氏に約束すっぽかされたとか?」


「すごーい!君よくわかったね。そーなの!あいつ私との約束すっぽかしやがったんだよ!」



ヨウジの言葉に気をよくした美女は、恋人に無下にされたことを思い出したのか、その表情を曇らせる。



「それはひでーな!そういうことなら俺が1日おねーさんに付き合ってやるよ!」


「ありがとう!そうこなくっちゃね!」



(こんな美人と遊べるなんてラッキー!俺にもついに春が来たか・・・!)


期待に胸を膨らませたヨウジは、頬を緩ませながらその美女と一緒に歩くのだった。




・・・




「へ~、ヨージ君って〇〇の曲好きなんだ~」


「うんうん。ガキの頃から大ファンなんだよ!ユリちゃんは誰の曲好きなの?」



あたりが暗くなってきた夜の7時、午後をまるまる一緒に遊んだ2人はすっかり仲良くなっていた。


美女の名前はユリというらしく、ヨウジの2歳年上の女子大生だという。


綺麗で明るい性格のユリを、ヨウジはすっかり好きになっていた。


(あ~ユリちゃん可愛いなぁ。彼女になってくれないかなぁ。でも彼氏持ちだから無理か)


そんなことを考えて諦めるヨウジ、だが


(せめて!あわよくばワンナイトを・・・!)


などと下心全開であった。ちなみにヨウジは童貞である。



そんなヨウジの考えが天に通じたのか、ユリの口からこんな声が発せられた。



「もうすっかり暗くなってきちゃったね~・・・ヨージ君、私の家この近くなんだけど・・・来る?」


「・・・!」



一瞬耳を疑うヨウジ。


自分に都合の良い幻聴かと思ったが・・・自分を見つめるユリの瞳は何かを期待しているようだった。


少しの沈黙の後、ヨウジは正気に戻った。



「え・・・か、彼氏いるのに俺を家に上げてもいいの?」


「約束すっぽかすような奴なんて彼氏じゃないよ!・・・だからさ、私の家でもう少しおしゃべりしない?」


「行くイク!」



そしてヨウジは、突如やってきた春に歓喜した。









俺は今、とんでもない状況だ。


なにがとんでもないのかって言うと、ユリちゃんがとんでもないんだ。


今俺は、ユリちゃんの部屋のベッドに座っている・・・上半身裸で。


そしてユリちゃんは・・・・。



「ふふふ。ヨージ君、Tシャツの上からでもわかってたけど、すっごいかっこいい身体だね。腹筋もすごい」


「あ、ああ。筋トレとかして鍛えてるからな・・・。あっ!」



ユリちゃんは今、下着姿で俺の胸や腹をペタペタ触っている。



・・・あれから俺はユリちゃんの家にお邪魔したんだ。


ユリちゃんの家は歩いて10分くらいのところにあった。


1人暮らしのワンルームアパートだった。俺はユリちゃんの後ろでガッツポーズしたね。


で、家に中にあがってワンルームのベッドの前に立ってた俺を・・・ユリちゃんが突然押し倒してきたんだ。


ガチャンって、家の鍵をかけたと思ったら、すぐだった。


びっくりした俺はユリちゃんの目を見たよ。


その目は妖しく光ってた・・・完全に欲情してる感じだったんだ。


ユリちゃんは俺のTシャツをゆっくりと脱がしてきて、自分の服も脱ぎだした。


シャツを脱いだ時のあの豊かな胸の弾みを、俺はこの先も一生忘れないだろう。


そして今の状況な訳だ。



怒涛の急展開に、俺もびっくりだわ。


完全に発情した獣になったユリちゃんは俺の腹を舌で舐めだした。


その両手は、俺の乳首をいじっている。



「あっ!ユ、ユリちゃん、エロすぎるよ・・・」


「ふふふ、ヨージ君の声、かわいい。・・・ヨージ君初めてでしょ?」


「うっ・・・そ、そんなことないよ・・・」


「嘘。その反応見たらチェリー君だってすぐわかるよ。大丈夫、お姉さんに任せて。忘れられない初めてにしてあげるから」



一瞬で俺が童貞だとバレてしまった。


恥ずかしいが、ここは激エロ美女・ユリちゃんに身を任せよう。


俺の腹を舐めていたユリちゃんの舌は徐々にあがってきた。


ごくり。


俺は期待に唾を飲む。


ユリちゃんは俺の首まで舌を這わすと、そこで俺の首にキスをした。



「ああっ!」



初めての快感に声をあげてしまう。











ヨウジの声を聞いて、首元から唇を離してにやりと笑うユリ。


その口には、先ほどまでは無かった2つの牙があった。


しかし、快感に喘ぐヨウジに、ソレは見えなかった。


ユリは目を妖しく光らせると、口を大きく開けて2つの牙をヨウジの首元へゆっくりと運んでいく・・・。



自らの身に危険が迫っていることに気づかないヨウジは、これから訪れるであろう素敵な夜に、胸と股間を膨らませるのだった。

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