Cursed-Sevens-Accessory*

影神

装飾品



彼は彼女を愛していた。




同様に、彼女も彼を愛していた。






彼は彼女の両親の御抱えの装飾師だった。




代々専属で装飾品を作っていた。




他の者からも評判が良く、主人らは誇らしく思った。






"まるで自らが生み出したかのように"






彼等の一族は手先が器用だった。




装飾品。言わばアクセサリーで右に出る者など居なかった。






一人息子の装飾師は主人の一人娘に恋をしていた。




幼き頃から一緒に居て、永き時間を過ごした。




彼女は貴族だった。




許嫁もおり、婚約者も幼いながらに居た。






時代と言うのは皮肉なもので、


恋愛すら自由にすることが出来なかった。






彼と彼女はそれを理解するのにあまり時間はかからなかった。






彼の両親は知っていた。


だが、故に、彼等には現実が重くも、哀しくも押し付けられた。






彼女が許嫁と結婚するにあたり、


彼は最初で最後の装飾品を彼女に渡した。






別れを綴り、残しながら、






『親愛なる、貴女へ




貴女との時間は朝日のように、毎日が耀いていていた。




吹く風は甘く、小鳥の囀ずりは美しかった。




私は貴女とは違う世界に産まれてしまった。




もし叶うのならば、貴女との時間をもう少しだけ、、






貴女様の幸せを心から願っております。




貴女の瞳のように美しい原石を籠めて。






どうか、御体に気を付けて、、』






彼が作った装飾品。




彼女への想いを馳せた美しいネックレスは、


彼の涙を表すかのように悲しく耀いていた。






彼女は婚約者との式に其を身に付け、身籠る前に亡くなった。






彼のネックレスは彼の想いを受け入れると、


付けた者に本当の声を聞かせる代物へとなった。






時代は変わり行き、彼の生涯で作られたアクセサリーは、


声亡き声を聞き、呪いのアクセサリーとして残った。






『彼女が身に付けたネックレスには他者の本心を写すものへと。




彼に彼女の声が届く様に作ったピアスは、


愛する者の声を届かせる力を。




彼女が何処に居ても直ぐに駆け付けられるように、


彼女がモチーフのピンバッチを。




彼が世界に憎しみを込めた指輪には、自らの力を示すものへと。




彼が彼女の癒しを求めた腕輪は、心を癒す為の力を。




彼が彼女との繋がりを最後まで求めたウォレットチェーンには、


感情を繋ぎ止める力を。






そして、彼がまた彼女と出逢えるように、


時間すら変えられる懐中時計を。』






こうして、呪われた装飾品が生まれた。






いや、これらは愛の『血証』とでも言うのだろうか。






彼の真実の愛を侮辱するかの様に、


私欲の為にまた、彼等は集め争う。






呪われた装飾品を手にする為に、、
































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Cursed-Sevens-Accessory* 影神 @kagegami

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