第15話 魔法の練習をしよう!
◇◇◇
「ティ、ティアラ!?今のは、いったい・・・!?」
カミールが慌ててティアラに問いただすが、ティアラにはなぜ二人がそんなに驚いているのかがさっぱりわからない。水の魔法を使ってみろと言われたから、一番簡単な魔法を見せただけなのに。さすがに大魔法を見せると驚かれると思ったのだ。
「今の?水の妖精さんのこと?」
「あ、ああ。その、妖精なんだが……」
なんといって良いか分からず口ごもるカミールに対して、アデルは何やら考え込むようにつぶやいている。
「妖精・・・おとぎ話に出てくる、あの妖精なのか……?」
ああ、とティアラは思い出す。今の世界では魔物はいるが、妖精や精霊はおとぎ話にしか出てこない存在として認識されている。妖精や精霊の伝説は、500年前アリシアが使っていた魔法が言い伝えによって残っているのだろう。
「ん~?おとぎ話に出てくる妖精さんも、魔力で生み出した妖精さんだよ。今の妖精さんもそう」
「妖精を、生み出すことができるのか?」
「そうだよ。水の力を与えたから水の妖精さんになったんだよ」
「と言うことは、土の妖精や火の妖精も作れるということか?」
「そう!大正解!妖精さんにお願いすることで色々な魔法を使うことができるんだよ。自分でも出すことができるけど、妖精さんに頼んだほうが魔力が減らないし、なにかと便利なの」
カミールは頭を押さえて考え込んでいたが、ふと思い出したように尋ねてきた。
「ティアラ、妖精を生み出すのはティアラにしかできないことなんだろうか?」
(確かに完ぺきな妖精や精霊を生み出すのは難しいけど……でも、やろうと思えばできないこともないよね)
ティアラは少し考えてから、
「そんなことないよ。アデルお兄様もゴーレムを生み出しているでしょう?」
と答えた。すると、今度はアデルが驚いたような声をあげる。
「ゴーレム?ゴーレムも、妖精の仲間になるのか?」
「そうだよ?知らなかったの?お願いすると動くでしょう?」
キョトンとするティアラ。昔、アリシアが妖精や精霊を生み出すのを見て、子どもたちがまねをして生み出したのがゴーレムだ。アリシアが生み出した妖精や精霊ほどではないが、ある程度術者の命令を聞き、動くことができる。
「じゃあ、俺は妖精を使っていたことになるんだな……。ははっ、知らなかったな!」
「アデルお兄様なら、簡単な命令を与えるだけで、意思を持って動く妖精さんを生み出すことができると思うよ」
(この国の王族は、アリシアが直接自分の力を与えた一族だから……アリシアができたことはある程度できるはずよね。)
「今よりすごいゴーレムが作れるということか。ゴーレムに意思があるなんて考えたこともなかったしな。うん、これは、研究してみる価値があるな」
「な、なあティアラ、僕にもさっきみたいな妖精が生み出せるのかな?」
「もちろん、カミールお兄様もできるはず!やったことないだけだと思うよ?」
「そ、そうか、そうなのか」
「そうだよ!」
カミールとアデルは顔を見合わせて笑い出す。
「そうだな!僕たちは、最初からやってみないで、やれないなんて決めつけていただけかもな」
「ああ、魔法がこんなにも自由なものだなんて、考えてもみなかったな。ある程度決まったものしか使えないものだと思っていたし、それで十分だと思っていた。」
「ティアラは本当にすごいな。発想の天才だ!」
「えへへ」
こうして王宮の庭園にて、突如魔法の訓練が繰り広げられることとなった。
◇◇◇
「カミールお兄様、水を手のひらに集めながら妖精さんの姿になるように想像してみて?」
「う、うーん、妖精、妖精のイメージ……」
カミールの手のひらから現れたのは、しなやかで美しい女性型の精霊だった。背丈もカミールと同じほどある。
「わっ!カミールお兄様凄い!」
「ほ、ほんとにできた……」
「俺はすばやく動けるゴーレムを生み出してみたいな」
そういってアベルが生み出したのはちょうど人型サイズのゴーレムだ。通常のゴーレムと違って、より人間らしい曲線的な形をしている。
「走って見ろ」
アデルが命じると、ゴーレムがしなやかな動きで走り出した。
「これは、すごいな。想像するだけでこんなにも違うのか」
「ああ、魔法の常識がすっかり覆ってしまったな。」
そういいながらもうれしそうな兄達を見て、満足そうに微笑むティアラ。と、そこに、
「姫様!カミール様にアデル様も!何をしておいでですか!」
「あ、アンナ!」
「休憩時間に抜け出したと思ったら、どこに行っていたのです!城のものが心配して探していたのですよ!」
「あ、魔法の訓練に夢中になって忘れてた!ごめんなさいっ」
「カミール様も、アデル様も、お仕事はよろしいのですか!?」
「「すみませんでした!!!」」
すごい魔法が使えても、アンナには勝てない三人だった。
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