第7話 回復魔法はチートです!


◇◇◇

 

「姫様!」


「ティアラ姫様!」


 くたりと気を失ったティアラの元に慌てて騎士たちも駆けつける。


「お姉ちゃん、どうしたの?眠っちゃったの?」


 獣人の子供たちも心配そうに見つめている。アデルは横だきにした状態でティアラの頬に手をやると、ほっと息を吐いた。


「大丈夫、ただの魔力切れだ。少し休めばすぐに回復するだろう。ティアラは、今まで魔力を使うことがほとんど無かったからな。限界まで使って疲れただけだ」


「姫様のお体が無事で何よりです」


「姫様の魔力には驚きましたな!あのような美しい魔力を感じたのは初めてです」


「しかし、姫様はことのほかお疲れだ。お守りすると請け負ったのに、アンナ殿になんといわれるか」


「確かに」


 苦笑しつつお互いに顔を見合わせた瞬間、騎士の一人が仲間の騎士のある変化に気付く。


「おい、お前、その顔……」


 その騎士はかつて、魔物との闘いにより顔に大きな傷を負ってきたのだが、いまや、傷など無かったかのように跡形もなく消えていた。また別の騎士が自分の腕をまくってみると、そこにあったはずの火傷の跡も消えている。


「まさか……信じられん……。俺達の傷も癒えている」


「あ、ああ、回復魔法ってのは古傷さえも癒せるものなのか。ここまでいくと凄まじいな……」


「なんだか体調も良くなっている気がします」


 騎士たちが口々に体調の変化を口にする。


「実は最近おかしな胸の痛みがあったのですが、すっかり良くなりました」


「私は腰痛と肩こりが消えました!」


 シスターたちも体の変化に戸惑いを隠せない。


「このような、このような奇跡が我が身におきようとは……!」


 遂には年配のシスターが膝をつき祈りだしてしまった。


 一方で、傷が癒えたばかりの子供たちは必死に目を開いて起きようとしているが、頭がユラユラと揺れており、今にも眠りに落ちそうだ。


「シスターたち、まずは子供たちをベッドへ。回復魔法によって傷が癒えた影響で眠りが必要なようだ。ゆっくりと休ませてやってほしい」


 子供たちの様子を目にしたシスターたちがハッとしたように慌てて姿勢を正すと、アデルとティアラに向かって一礼する。


「は、はいっ!お心遣いありがとうございます。姫様のお慈悲に心からの感謝を。さぁ、子供たち、お部屋に戻りましょう。カール、あなたもいらっしゃい」


 カールと呼ばれた狼獣人の男の子もそっと手を離し後に続こうとしたが、気を失ってしまったティアラを心配そうに何度も振り返っている。


「大丈夫。またすぐに会いに来るよ」


 アデルの言葉にこくりと頷き、走り去っていく。


(しかしこれは......大騒ぎになりそうだな)


 アデルは小さく溜め息を付いた。

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