第3話 王女様覚醒する!?
◇◇◇
―――話は1ヶ月前に遡る。
8才の誕生日を迎えたその日、ティアラは突然前世の記憶を取り戻した。夢の中で走馬燈のように前世の記憶が駆け巡り、それが自分自身の体験であることをストンと受け入れることができたのだ。
「そっか……。前世、死ぬ前に自分自身の魂に記憶を刻みつけたんだ。ある程度の年齢になるまで記憶を封印して……」
我ながらチートな魔法を使っていたなと思う。なんといっても前世の自分は『全属性の賢者アリシア』だったのだから。
「それにしても500年かぁ……」
正直生まれ変わるまでにこれほどの月日を要するとは思っていなかった。
「フィリップ、怒ってるだろうなぁ……」
ティアラはかつて共に歩んだ優しいパートナーを思い出す。涙に揺れる金の瞳に誓ったのだ、きっと生まれ変わって探しに行くと。そのとき、体に流れる魔力量を感じてがく然とする。
「え、なにこれ、すっごく弱くなってる!?」
体に流れる魔力は、かつて『全属性の賢者』と詠われたときの100分の1もない。かろうじて全属性の適応はあるものの、発現しているのは聖属性のみで僅かな回復魔法が使える程度だ。
「うーん?記憶を取り戻すまでは聖属性しか使えないって思ってたし、前世一番得意だった回復魔法が最も早く覚醒したってことかな」
どの属性を持って生まれるかによって使える魔法は決まっており、ほとんどの場合一つの属性しか使えない人が多い。実際優れた魔法の使い手であるカミールやアデルでも一属性しか使えない。
全属性を使える人間はこの500年ひとりも現れなかったのだから。
「器がほとんど空っぽの状態だね。魔法使うことなんて今までなかったしなぁー」
たまに王城近くの森や湖などに出かけることはあるものの、基本城の中で過ごしてきたティアラは回復魔法が使えるようになってからも実際に使う機会に恵まれることはほとんどなかった。
「取りあえず約束通りフィリップを探しにいかなきゃ!まずは外に出られるようにしないとね!」
忙しくなりそう、と呟いた後もう一度ベッドに横たわる。
「でも良かった。この国は今すごく平和だよ。500年前からは信じられないくらい!フィリップ、頑張ったね。待ってて、すぐに会いに行くから」
ティアラはそっとつぶやいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます