52.

「そうね〜、技能的なものはまだ難しいだろうから、筋トレとか?まずは基礎からかなぁ」


 サユリさんは首元の汗をタオルで拭いながら言った。見やれば右手には先程の棒が握られている。その風貌を見て一つ合点がいった。


「サユリさんが槍使いの理由って、まさか……」

「ご名答〜、正確には棒高跳びが得意で槍を使い始めたんだけどね。あっちの世界ではイメージが最優先事項になるから、形状や動作が似ているものほど武器の扱いに繋げやすいの」


 サユリは以前、長槍を使って僕を助けてくれた。あの跳躍力と俊敏性、現実ではあり得ない武器の軌道はここからきていたのか。


「なるほど……じゃあユウトは……」


 自然、視線はユウトへと注がれる。


「何でもいいだろ。ボウガンなんて割箸でも作れる」

「そういえばなにで練習してるか聞いた事なかったわ。ハンガーに輪ゴムでも引っ掛けているのかと……」


 サユリは顎に手をやってとぼけたように言う。


「んなわけあるか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

バーチャル・ハルミネイション ARuTo/あると @IIARuToII

現在ギフトを贈ることはできません

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画