48.

 サユリは僕に向き直ると、中腰になって僕の両肩に優しく手を乗せた。


「そんな悲しい事言わないで。私達は友達……以前に家族じゃない。現実は何も本意で起こる出来事だけじゃない。突然、訳も分からず陥る事もあるの。私達だって助けて貰ったから、今こうしてこの世界で生きている。だから、私も次は助ける側に回るの。ただそれだけの事じゃない」

「命を賭ける必要は……」

「アノちゃんが強くなったら、誰かを助ければいい。それだけの事だと私は思うな」

「サユリさん……」


 小百合さんは本当に良い人だった。


「ほらユウト。ぶすっとしてないでアノちゃんの方向いてあげて」


 サユリは背を向けたユウトを注意した。

 ユウトはため息を一つすると、横顔を見せて言った。


「……最初から協力するつもりだった。このチビ緑がどんな隠し事をしてるか知りたいからな。それに丁度、この街で生活する事にうんざりしてたんだ」

「素直じゃないけど、意外ね。貴方、命懸けられるの?」


 サユリはさも突然のように、物騒な言葉を口にする。


「……これまでだって賭けてきた」


 ユウトは再び背を向けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る