47.
「……決心はついたか。この世界は物騒だ。お前の姉さんを探すにしても一筋縄ではいかない」
ユウトは話始める、「命懸けになるぞ」と最後に付け加えて。
「今は違うよ」
不意に出たのはそんな言葉。どういう意味か自分でも分からない。
「トライアドさん。僕に戦う方法を教えて下さい。お願いします」
僕はトライアドに歩み寄ると、頭を下げた。この世界で戦う事は避けられない。どんな理由があろうと、それは無慈悲に現実を突きつけてくる。今の僕は弱過ぎる。それでも、せめて姉さんの痕跡に一歩でも近づけたなら……僕はもうそれで満足してしまうかもしれない。
「いよー。そんかわり、覚悟決めよー」
相変わらずトライアドは呆けた声を上げる。
ユウトはそこに分け入って僕に向き直ると、言った。
「適当言うな。アノ、本当にいいんだな。もう日常とやらには二度と帰れないぞ」
「……うん。正直、今はこっちにいる方が生きた心地がするんだ」
僕がそう答えると、ユウトは何故か驚いた表情をした。その顔には恐怖とも怒りともとれない感情が混ざり込んでいる。
「アノちゃんには私がついているから大丈夫だよ。ほら、ユウトもそんな怖い顔しないで。協力しましょ」
「いいの……?見返りなんてないのに……」
僕をここまで連れてきてくれたのはサユリのお陰だ。僕が生きてここまで辿り着けたのはユウトのお陰だ。でもここからは僕の個人的な動機によって行動する事になる。命懸けになるというのなら──尚更だ。
「……やっぱり駄目だ。ここからは僕一人で行く。サユリにもユウトにも感謝しきれないぐらい感謝してる。命の恩人だ。でもここからは僕だけで……」
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