44.

「ぜいん、そろろたなー」

 緑の幼女は杖を突きながら僕の真横を通ると、ソファに座った。三人の視線に施され、同じく僕も席へと座った。

 一時の沈黙。口火を切ったのは緑の幼女である。

「ます!……よくやるた。サユー」

 先程よりも語彙が悪化していてよく聞き取れなかったが、どうやらサユリを誉めているようだ。

「はいッ!ちゃんと連れてきましたよ、"トライアド"さん」

 サユリは溌剌とした応答を返す。トライアド?なんだか奇妙な名前だ。

「ユウろもー」

 幼女はユウトにも賛辞を送ったようだが、彼は視線を逸らしたまま、「……ふん」と相槌ともつかない吐息を漏らすばかりで返答しなかった。

 サユリはその様子を見て苦笑いした。どうやら、いつもの事のようである。

「それでトライアドさん。今日、久しくお会い出来たのは"三人集まった"からなんですよね」

 幼女は視線をそのままに、小さく首肯した。

「おい……チビ緑。さっさと、本題を切り出せ」

 ユウトは口悪く幼女を催促させた。ここは幼女を庇う必要がある場面だと思うのだけれど、先程の受けた行為もあり、僕は冷汗をかきながら静観する事にした。……二人とも怖いし。

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