40.
「ここが図書館……?」
豊かな森林の抜け目に、木漏れ日を浴びて佇む白亜の建物。ギリシャ様式を思わせながらも、レトロなテイストを感じさせる外観。図書館と呼ぶにはあまりに重厚である。まるで教会だ。
「深見図書館。開設から百年以上が経過している歴史的建造物。私も偶に訪れているの」
サユリは僕の疑問に軽く答えつつ、扉を開けて中へと入っていった。僕とユウトもそれに続く。
乾いた紙の匂い。建物内は荘厳な外側とは打って変わり、温かみのある雰囲気を漂わせていた。板張りの床に真白い壁。天井には西洋建築に見られるような凹みがある。
「さて、早速だけど図書館内をくまなく回って"空間の再現性"を向上させましょう。私とユウトは何度か訪れているから問題ないと思うけど、アノちゃんはここに来るの初めてだよね」
僕は無言で首肯した。
空間の再現。それは以前、月島でサユリが実践して見せた現実世界の観察の事だろう。再現したい場所の視覚情報を徹底させる事で可能になる夢の中への複製。
「……からくりはサユリからもう聞いていると思うが、"例の人物"に会うにはこの図書館を夢の中で再現する必要がある。……最も、そいつはあちら側の住人だ。これ以外に方法は無い」
気怠げにユウトは言う。話をわざわざ要約してくれる辺り、確かに積極的な一面があるようだ。
初対面の時みたく話が途切れてしまう前に、僕はユウトに対して質問をした。
「ユウトは僕の姉さんについて何か知っているの……」
ユウトは少し沈黙した後、何故かサユリの方を向いて言った。
「……知らない」
「ごめんなさい。私達もアノちゃんのお姉さんについては詳しく聞かされていないの。」
サユリは申し訳なさそうに歩み寄る。二人の振る舞いからしてこれは本当の事のようだ。
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