8.

 学校は臨時休校になった。


 集団接種に紛れ、不正薬物が投与されるという前代未聞の事件が起きたからだ。


 悪魔のカードを引いたのは僕達のクラスだけ。日本に留まらず世界でも大きく報道されている。


 現在、僕が通う晴海高校は事件を受け、保護者や報道者に厳しく説明を求められた。


 発表によると、委託した医療機関での工作などは確認されておらず、衛生管理にも問題はなかったという。明らかに"第三者"つまりはテロリストによる犯行とみられている。


 幸い死者は出ていないものの、投与されたほぼ全員に幻覚症状が見られ、余談を許さない【昏睡状態】が続いていた。


 どういう訳か、僕はあの病院のベッドで目覚め、怪物に襲われる少女を見た。その後、手を引かれるまま謎の少年に連れ出され、事の惨状を知った。


 多くの生徒が目覚めない中、何故か僕だけが助かった。精密検査の結果は"異常無し"。これだけの被害に見舞われたのに、自宅で安静にしていろ、というのだからおかしな話だ。


 一連の出来事はいったい何だったのか。なぜ僕だけが意識を回復させたのかはわからない。


 だけど一つだけ理解したことがある。


 これは夢であり、幻覚なのだと。


 謎の少年から受け取った【外套】はいつの間にか身体から消え去っていた。


 不思議な出来事はそれだけじゃない。


 僕は毎晩、”おかしな夢”見るようになっていたんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る