第116話 みんなで夕食作り

 購入してきた品物を前にあれこれと話しているうちに夕方近くとなった。本格的に夕方になれば夕飯を作らねばならないので、その前にポニーとロバの放牧地を作ってしまおうとなった。全バラックは壁が付き床となる板なども敷かれてはいたが、いずれ家を建てたらこのバラック群は撤去する予定なのでバラックと森の間にその場所を作ることになった。

 力のある男たちが地面に杭を打ち、器用な者たちがその杭と杭の間に板を貼り付けて行く。勝手の分からない私は近くで見学をしていたけれど、こういう時の為にと購入していた蝶番なども使いポニーたちの出入り口も数ヶ所作っている。驚くべきことにこの出入り口は重りを使った原始的な自動ドアで二重にし、中からは動物には開けられず逃げられない構造になっている。何かに使うだろうと滑車も購入しておいて助かった。


 小さな牧場スペースが出来上がるとみんなでブチブチとクローバーを抜き、露出した地面に牧草の種を蒔く。クローバーを抜いたことにより驚いたが、あの砂地だった地面は薄くではあるが土になっている。植物たちも目に見えない場所でしっかりと仕事をしていたのだ。

 牧草が生えて来るまではポニーとロバは物置小屋に繋ぎ、いくらか乾燥させた牧草も購入してきたがニンジンことキャロッチやリンゴことアポーの実を与えることにした。ヒヨコたちも念の為ここの気候に慣れさせるよう物置小屋の側に簡易の鳥小屋を作って中に入れた。


「カレーン!夕飯を作りましょう!」


 お母様に呼ばれ、作業は他の民たちに任せウキウキと広場へと向かう。なぜなら念願の味噌汁が飲めるからだ。これは気合いを入れなければならない。


「さぁ作りましょうか!ミィソの汁物は具は何でも良いのよ」


 とは言っても味噌汁に合いそうな野菜はポゥティトゥ・キャロッチ・キャベッチ・オーニーオーンくらいだろうか。パンキプンの味噌汁は私は好きだが、かなり好みが分かれるだろう。なら美樹の家では普通に作られていたじゃがいもとニンジンの葉っぱを使った彩りある味噌汁にしよう。普通は食べないどころか見かけないであろうニンジンの葉っぱだが普通に食べることが出来る。美樹の家では近くの農家さんからいただいていたのだ。そうと決まれば細かく切ったポゥティトゥを水に入れ茹で始める。

 キャロッチ・キャベッチ・オーニーオーン・緑のペパーのピーマン型の方をみんなで大量に切っていく。手の空いている人に森へ『モリノイモ』を採取しに行ってもらい、オックラーを茹でる為に別の鍋で湯を沸かす。


 今更気付いたがハコベさんとナズナさんも料理に参加していたので、ハコベさんにはオックラーを茹でてもらい、ナズナさんには貴重だと言われ購入してきた油で切ったばかりのキャロッチ・キャベッチ・オーニーオーン・緑のペパーを油炒めにしてもらう。量が多いので木べらの大きいような物で混ぜてもらったが、まるで給食センターの職員のようだなとボンヤリと思ったのは内緒だ。


「カレン、こっちも良い感じになってきたわ」


 味噌汁用の鍋は沸々としてきておりミィソを投入することにする。こし器がないので深めのざるにミィソを入れ、ざるを湯に浸しながらミィソを溶かす。時折味見をしながらミィソを足し入れ、沸騰する前に火を消してもらった。味見の段階でかなり好みの味のミィソに感激した。クジャ、本当にありがとう。


「ミィソの汁物はね、沸騰させると味が落ちるの」


 そして火を消した味噌汁の鍋に食べやすく切ったキャロッチの葉を入れると色鮮やかな緑色に変わった。見るからに美味しそうである。

 ハコベさんを見ると茹で上がったオックラーを水に入れて冷ましている。ちょうどモリノイモが届いたので、これをさいの目切りにしていく。この作業を終えるとオックラーを小口切りにして二つを混ぜ合わせる。美樹の家ではお金に余裕がある時はこれに食用菊を入れて彩りを良くしていた。


「これは食べるときにセウユをかけましょう。ネバネバは体に良いのよ」


 本音を言えば白米にかけて食べたいが、無いものは仕方がない。そこは素直に諦めることにした。


「カレン、そろそろモクレンたちが戻ってくる時間よ。すぐに食べられるように盛り付けてしまいましょう」


 お父様たちは石切り場よりも広場側に近い場所で作業をしているらしく、間もなく作業を終えて帰って来るようだ。肉体労働をしている人たちは汗をかくので塩分は大事である。セウユもミィソもその塩分を補ってくれるので、早く食べてもらいたいわ。そして初めて食べる調味料にみんなはどんな反応を示すのか楽しみだわ。

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