File.14 その輝きだけは消さないで(女子大生探偵誘拐殺人事件)
Ep.0 十年前の悲劇
寒いよ。
暗いよ。
誰もいないの?
誰も助けに来てくれないの?
真っ暗な小屋の中でワタシは独り閉じ込められている。しかし、それはほんの少し救いにも感じていた。
あの居心地の悪い世界から救い出してくれた人は悪魔なの? それとも、白馬の騎士なの?
白馬の騎士はワタシを悪の手先から見つからないように隠してくれた。先程も暖かい食事をくれたし、「騒がないように」と紙を見せられただけ。一応、使えないけれど毛布もくれていた。このゴツゴツした床は非常に寝心地が悪いけれど、そこを除けば問題はない。
その相手が誰か。ワタシの憧れている俳優なんか、だといいな。
妄想しているうちに眠くなる。外でしんしんと降っている雨が眠気を誘い、ワタシは大きな欠伸をした。
明日はきっと笑顔の眩しい騎士様がワタシに笑顔を見せてくれる。違いない、違いないと笑いつつ、寝ようとしていた時だった。
妄想が崩れ去り、眠気が吹き飛んだ。
「い、いやぁああああああああ!」
突然、小屋の照明が付いたかと思うと、人が倒れている姿が目に映る。口から血を垂らし、痣だらけの顔に虫が密集している。死肉として、奴等に食べられているのだろう。姿はあまりにも恐ろしく、寒気がした。気色の悪さに食べていたものが込み上げる。必死に口を抑えるも無駄だった。
体の中のものが全て飛び出した。
そんな気がした途端、視界が横転。
微かに意識のあったワタシは手遅れとなった大事な人の名を呼んだ。
「早苗……お姉ちゃん……何で……早苗……おね」
自分の
あれから十年の時が経つ。今でもワタシは虫を見るとこの光景を思い出し、心の底から苦しくなる。
嫌と言っているのに人生は残酷で、またあの悲劇が蘇る。
きっかけはちょっとしたことだった。
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