第35話 冒険者ギルド③

僕とクリファスさんが包丁の販売などを話している間にマチルダさんが戻ってきた。


「なにやら興味深いお話をしていますね、私達冒険者ギルドとしてはアカリさんの作る武具には興味があります」


「そうなんですか? まあ、僕の剣は簡易的な手法で作っているのでハンターからしたら微妙かもしれないですよ?」


通常の武器はちゃんとした鍛冶場で正しい工程で作るものだけど、僕の場合はスキルで簡易的に作ってしまう武器だから耐久性や不都合などの検証をしてからの販売になるかもしれない。


「簡易的な鍛冶とは? すいません、冒険者ギルドのギルド長なのに簡易的な鍛冶の意味が分かりません……」


「えっ、それは鍛冶スキルで簡易的に作る事ですよ?」


「スキルで鍛冶……? クリファスさん、どういうことでしょうか?」

 

マチルダさんは僕ではなく、今度はクリファスさんに聞きだした。


あれ?


僕と説明がへたすぎたのかな……


「マチルダさん、そのままの意味ですよ。アカリさんはスキルでものを作ることが出来るのですよ。そして、アカリさんはそのスキルで作成した武器を簡易的なものと表現しているのです。ちなみに、その簡易的な武器は、私の使う武器よりも遙かに素晴らしい仕上がりに思います」


「えっ、鍛冶をスキルで作成……? しかもクリファスさんの使う武器より良い…?」 


「僕の武器なんてまだまだですよ」


まだゲーム内のクオリティの100分の1位しか仕上がっていないから、僕の武器をそんなに高評価されると逆にやりにくくなってしまう。


「それでしたら、試しにマチルダさんへ武器を1本渡してみては如何ですか?」


「それもそうですね。ハリッサ、赤晶石の大剣をマチルダさんに渡してもらっても良いかな?」


「うん、いいよ!」


アイテムボックスには大量の赤晶石の剣が眠っているけど、いきなりアイテムボックスからはバレるから出せないので、ハリッサが常に持っている剣を見せることにした。


「えっ、これって全てが赤晶石ですか?」


赤晶石の大剣を受け取ったマチルダさんは、びっくりした表情で聞いてくるのだが、質問の意図がよく分からなかった。


「……それはそうです」


「そんな……晶石だけで武器を作るだなんて……そんな事が可能なの? アカリさん、これは実用レベルの強度がある剣なの?」


ん?


マチルダさんは何を言っているんだ?


それは赤晶石の大剣なのだから、晶石だけで造るのは当たり前だし、武器とは実用レベルじゃなければ使い物にならないではないか……


「えっと、マチルダさんの質問がよく分からないんですが」


「アカリさん、私も最初にみた時はびっくりしたけど、普通の鍛冶師は晶石だけで実用レベルの武器を造るなんて不可能なんだよ。造れても工芸品レベルの強度しかない武器になるんだよ」


「ああ、なるほど。この町では鍛冶場が無いから作れないってことですね」


確かに僕の鍛冶スキルみたいなものがなければ、晶石を加工するには鍛冶場は必須だろう。


「いや、そうではなくて……鍛冶場を持っている世界中のどの鍛冶師に聞いても、アカリさんみたいな赤晶石の剣を造ることは不可能なんだよ」


「えっ、何故ですか?」


「晶石は衝撃に弱いから、造るなら研磨しかないだろう?」


「イヤイヤ、晶石は確かに衝撃に弱いけど、圧力には強いので、大きな晶石を超高圧力で一旦硬い板状にすれば鍛冶作業の衝撃に耐えられるレベルの強度になりますよね」


クリファスさんの話を聞いて、今度はこっちがびっくりしてしまう。


まさか、クリファスさんとマチルダさんに晶石加工の基本的知識を知らないとは……


確かに晶石をいきなり金属みたいにぶっ叩けば、衝撃により粉々になってしまうのは初心者鍛冶師でも知っている常識だ。


「えっ、超高圧力で……板状に?」


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