第7話 行き倒れと出会う
僕は町を目指すことなく木の実採集をしていた。
木の実と言っても全て魔法の秘薬に使えるものだけど。
火の実、水の実と立て続けに秘薬を発見した僕は、他にも秘薬はないかな?と思い、周辺を探索していたら風の実、土の実のなる木もいくつか発見できたのだ。
残念ながら光と闇の秘薬は無かったが、火、水、土、風の4種類の秘薬は各500個以上拾う事が出来た。
そして、この木の実シリーズ?は魔法スキルのレベル1でしか使えない事も分かった。
例えば、火のレベル2にはファンタジーの定番である火の球を飛ばすファイアボール、触れた相手を火傷状態にするヒートショックあるのだが、使おうとすると【秘薬が足りません】とアナウンスされてしまったのだ。
だから、現状で僕の使える魔法スキルはレベル1のみという事になる。
まあ、魔法スキルが使えるだけ有り難いが、レベル1の魔法スキルでは大型動物は倒せないんだよな……
せめてツルハシやスコップを振り回せるほどの力と体力があればな……
そう言えば、アイテムボックスの中身を取り出して気が付いたのだけど、女神が初期にアイテムボックス内に入れてくれていたアイテムは魔力を込めるとアイテム内の数量が回復するというバグみたいな仕様だと言うことが分かった。
魔力10消費で全アイテムが1回復する仕様だった。
これにより、栄養面や飽きを考えなければ食料問題とは無縁な異世界生活が送れるのは嬉しい誤算だ。
しかし……現状は八方塞がりなんだよな。
僕はそれから一週間ほど木の実シリーズを採集しながら探索範囲を広げていったのだが……そこで、なんと倒れている女の子を発見したのだ。
「おい! 大丈夫!」
女の子はボロボロの薄汚れたローブみたいなのを着たガリガリの金髪少女だった。
そして、両手首には女の子の細腕には似合わない巨大な金属製の拘束具が付いていた。
この女の子は犯罪者なのか?
いや、こんな女の子が犯罪者な訳がないと思いたい。
それにしても見た感じ外傷は無いけど……何で倒れているんだ?
何か病気だったりしたら僕には助けられないな。
せめて光魔法スキルのレベル3、キュアが使えれば簡単な病気なら治せるんだけど……
「ぁぅ……ぁ…」
「ん? 何だ?」
女の子はガラガラの声で何かを言いたそうだった。
「お腹空いた……」
「……え?」
お腹空いた?
もしかして、空腹で倒れていたのか?
ぐうぅぅ……
あっ、本当にお腹空いているのか。
僕はアイテムボックス内から栄養ゼリーを何個か取り出して食べさせる。
空腹で倒れている位だから、いきなりおにぎりなどは食べさせると胃には悪いだろうと思って栄養ゼリーにした。
この栄養ゼリーはチューブタイプのゼリーで、作業しながら手軽に食べられて、意外と便利な携帯食だったりする。
「ほら、ゆっくり食べな……」
女の子は栄養ゼリーをゆっくりだが、どんどん飲んでいき、あっと言う間に栄養ゼリー1個を完食していた。
「う、う……」
「う? どうした?」
「旨い! もっと欲しい!」
「あ、ああ。いっぱいあるから、好きなだけ食べな……」
それから女の子は栄養ゼリーを40個ほど完食してしまった。
好きなだけ食べなとは言ったけど、40個は食い過ぎじゃないか?
いや、僕的には栄養ゼリーは魔力を注げば復活する無限アイテムみたいなものだから、好きなだけ食べて貰っても良いのだが、栄養ゼリーは1個200mlはあるので、最低でも8000mlの栄養ゼリーを女の子は食べたことになるのだ。
身体に良いゼリーだとしても8000mlは食い過ぎで胃が破壊されないか心配したのだが、女の子はケロッとしていた。
「美味しかった!」
相変わらず髪などはボサボサで汚れてはいるが、ガリガリの女の子はいつの間にか健康的な肌艶になっており、笑顔は美少女と言っても過言ではない女の子だった。
栄養ゼリーって回復能力もあるのか?
「それは良かった。それで君は何でこんな森の中で倒れていたの?」
「ん~~、分からない?」
「え? 分からない?」
「うん、何でここにいるか分からない」
「名前は分かる? どこに住んでいたとか、家族とかは?」
「名前はハリッサ・バレンティスかな? 住んでいた場所は分からない……家族は……分からない」
「これは記憶喪失とかいうやつか? 他にハリッサちゃんが覚えていることは?」
もしくは、名前以外は話したくない事情があるかだな。
「ハリッサは8歳! あとは……バレンティス剣術が得意!」
「バレンティス剣術? それってハリッサちゃんの名前の剣術だよね?」
ハリッサちゃんの親は剣術道場でもやっていたのか?
あれ?
バレンティス剣術ってなんか聞いたことがあるな……なにで聞いたのかな?
「あなたは?」
「ん? 僕はアカリ。年齢は10歳位かな」
本当は1歳だけど、ハリッサちゃんより少しだけ背が高い感じなので10歳という事にした。
「じゃあ、アカリお姉ちゃんだね!」
「いや、アカリお兄さんだよ」
「えっ、お姉ちゃんなのにお兄ちゃん?? あれ??」
「ああ、ごめん、ごめん。アカリお姉ちゃんで良いよ」
「うん! アカリお姉ちゃん!」
鏡が無いから見た目は分からないが、ステータスにも女ってあるから、仕方ないか……
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