裏話Part4
「おまえ的には、そーいうのはアリなのか?」
「そういうのっていうと?」
「その計画の責任者を、非人道的だとか思わねーのかって話」
「知ってる? 海外にあるバンジージャンプとかの危険なアクティビティ、あれって事前にこんな契約書にサインさせられるそうだよ。『万が一死んでも責任は追求しません。自己責任です』みたいな。非人道的って言えばそうかもしれないけど、遠い惑星にまで行こうって計画、百パーセントの安全が保証されてるわけがない。そんな公的で大きな計画、事前に危険があることは通知されてるはずなんだから、それでも参加しようっていうのは自己責任だと思うよ。参加を決めた人間は、死んでもいいってくらい夢に賭けてたって事。まぁ、事故に遭って死んじゃった人たちには未練があるかもしれないけど、何もせずにいたよりは後悔は少なかったんじゃないかな」
「ふうん、そういうもんかね」
「あれ? ミコト君ならわかると思うんだけどな。あそこまで那由ちゃんに手を貸した君なら」
「…………」
どこかに心当たりでもあるのか、
代わりといっては閑話休題とばかりに、話を戻す。
「で、そういうのが根本にあってこんなテーマで話を書いたと」
「いや、書き始めた時は自覚なかったけどね。書いてる途中でそんなことを思い出したってだけ。ただ、まぁ、プラネテスは僕が思春期の頃に見たアニメだったし、それで感銘か何かを受けたのが心のどこかに残っててこの話を書いたのかもね」
「なるほどな」
と、ミコトは聞いているのかいないのか判然としない相槌を返してアイスティーを一口啜り、フリップを取り替えた。
「じゃあ次は、そんな行動原理を持つ日和沢の姉、
「え? ここからまだ続くの? こんな話をした後でこれと同等以上に濃い話ができるとは思えないんだけど!」
「当たり前だろ。読者が疑問に思っていそーなことはまだまだある。アマが書いた問題だらけの話なんだからよ。つーかおれが訊きたい」
「自分の実力不足がここに来て裏目に!」
「とはいえ、全部に触れる気はないけどな。さすがにそれはムリだ。つーか実力不足が裏目に出ないことはない」
「ごもっともです!」
「まぁ、テーマに関する話は自然と濃くなるもんだろ。その後になってでもおれは問いたい。この女、作中、何回かおれと電話で会話してるけど、ぶっちゃけ必要なくね? と」
「昔馴染みになんて言い草だ……」
自身と通話を交わしたシーンが記載されたフリップを注視しながら身も蓋もなく切り出した少年MCに、
「そうは言ってもな、ここしばらく会ってなかったわけだし、久々に連絡来たらアレだしよ」
「またまたぁ。そんなのほとんど毎回のことでしょ。それでも何だかんだでちゃんと電話に出るんだから。ミコト君ってばツンデレさん♪」
「(ギロッ)」
「ウソ! ゴメン! 冗談だから! 落ち着いて! ……ちょっと何でピコハンを素振りし始めてるの!? すんごい全力じゃん! ステイ! ほら座って! 身体に障るから!」
立ち上がって何やら不穏な行動をし始めた主人公を、作者は全力で
「ったく」
作者の狼狽ぶりに何とか矛を納め、MCミコトは改めて座り直す。しかし腕を組んで貧乏揺すりをする様は未だ怒り冷めやらぬといった様子。
鎮火しかけている火に油を注ぐのも得策ではないかと、
「で、でもまぁ、そこが文字数減らせる要素の一つかな、とは思ってる。ぶっちゃけ要らないと思うし、確か初稿の段階では電話のシーンはなかった」
「なぜ組み込んだ」
「面白くなるかなって」
「まぁ多少彩りは増すかもしれねーけど。真っ白いキャンバスに黒い絵の具を一滴垂らしたくれーには」
「モノクロだなぁ。それ、モノクロなんだよなぁ……」
「組み込むなら組み込むで描写不足だと思うが、いつどこで知り合ったとかは考えてんのか」
「まぁ一応は考えてるけど、それ知りたい人いる?」
「いるかもしれねーだろ。で、いつどこで知り合ったんだよ」
「うーん……十年前、とだけ言っておこうかな」
「なぜ中途半端に伏せる」
「念のためだよ、念のため」
「…………」
「…………」
多くを語ろうとしない
MCなのに。トークコーナーの意義とは一体……。
「んじゃまぁ、作品が長いこともあるし、要不要の話になったからついでに訊くけど、他に文字数減らせるようなトコってどっかあんの?」
「君のピコハン設定はボツにしてもいいかなって思ってる」
「んなっ!? なんて非人道的なこと考えやがる!? おれからコレを取ったら何が残るっていうんだ!?」
「想定外の執着心! まさか、君がそんなにソレにご執心だったなんて……」
ピコピコピコピコとテーブルを連打する音がけたたましく鳴り響く。
反抗の意志を主張するその行為は苛烈で、トントン相撲のように机上のカップの位置が微妙にずれ動いていく。
「おれのキャラを立たせてる唯一の要素じゃねーか! マジ鬼畜なことしやがって!」
「他にも色々あるだろ!? 口の悪さとか幼い顔立ちとか身長の低さとか!」
「全部短所じゃねーか! そんな設定を考えること自体が鬼畜だよ! おれの個性をボツるくれーなら日和沢姉の存在を抹消しろ!」
「鬼畜はどっちだ! あの子の存在は話を広げられる可能性があるけど、君のソレは限りなく広がらないんだよ!」
「そんなことやってみなきゃ……」
と、ピコハンの連打で位置を変え続けていたカップがテーブルの端にたどり着いたのを視界の片隅が捉え、二人揃って慌ててそれに手を伸ばした。あわや大惨事というところで、憂き目に遭いかけていたカップを救出することに成功する。
難を逃れてほっと安堵したその拍子に口論も一段落を見せた。
我に返ったように
「ま、まぁ実際にイジるつもりはないから……。どの道、自分が望む分量にまで減らせるとは思えないし」
「そ、そーか。そりゃひと安心だよ……」
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