第385話 この場の抜け出し方


 真後ろから攻撃的っぽい敵が接近中! 獅哮衝波が2段階目まで溜まった状態だけど、その敵には当てられないのが辛いよ! でも、ここで奇襲を受ける訳にもいかないのさー!


「ここは仕方ないです! 獅哮衝波、発射で!」


 凝縮率60%ほどの状態で、前方に向けてぶっ放すのです! この先が沼地疑惑もあるから、地面が見えるように少し下を狙いつつ発射! 1体は敵を巻き込めそうだね!


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


 1体のつもりだったけど、他にも2体巻き込めたっぽい! 索敵の範囲外に結構いたんだねー! 凝縮した威力も凄い!


「触れた葉っぱが木っ端みじんになるって凄いですけど……やっぱり沼地じゃないですか!?」


 ぎゃー!? 地面が見えたけど、獅哮衝波が当たった部分の泥が飛び散ったー! ……あ、根元側から草むらを吹っ飛ばしたけど、途中で威力があり過ぎて上の方の葉っぱは千切れて逆に無事なんだ?

 パラパラと、沼の泥の上に千切れた葉っぱが落ちていってるし、草むらが途切れた部分も見えた! 何かが倒れたような音もしたけど、それは気にしない!


水無月 : 沼地だったよ、サクラちゃん!? 嵌らないように要注意だよ!

いなり寿司 : もう、いっそ後ろに迫ってきている敵に倒してもらうって手段もあるけどな。この場合から離れる方法。


「それで殺されるのはなんか嫌ですね!? まだ沼に嵌った訳でもないので、敵がいなくても死ぬ事が出来るなら却下です!」


 まだ死ななきゃ脱出出来ない状況になった訳じゃないんだから、わざわざ敵に殺されてやる必要もないのですよ!

 とりあえず今は後ろに迫ってきている敵の排除が先だー! という事で、後ろへ振り向いて敵の確認!


「ともかく、今襲ってきてる敵はなんですかねー? なるほど、Lv10の『聡明なヘビ』ですか!?」


 これは、近付いて戦ったらダメなやつ! とにかく距離を取って、後ろに飛び退いて……って、あー!?


「なんで私、この状況で後ろに飛び退いてるんですかね!? わわっ! 後ろ脚が沼に嵌りました!?」


 ぎゃー! 嵌らないようにしなきゃいけなかったのに、それが分かってたはずなのに、なんでそこに見えない方向から突っ込んでいったの!?

 嵌ったのは片脚だけだけど、もう片方の脚も地面が柔らかいよ! あれ? でも、ちょっと感触が違うような?


サツキ : サクラちゃん!?

ミツルギ : あー、やらかしたか。

G : まぁこの場所でなければ、距離を取る行為自体は順当な対応だしなぁ……。

こんにゃく : 場所が悪かったとしか言いようがない……。

いなり寿司 : 飛び退くスペースが、そもそも他の方向には無いからなー。

富岳 : アドバイスとしては、放電は沼地では伝わりにくいぞ。水気はあるが、水中みたいな伝導性は発揮しないようになってるからな。


「あ、そうなんですか! だったら、これです! 『放電』! あ、全然流れていかない訳じゃないですけど、大半は大丈夫ですね!」


 うふふ、これならば反撃が出来る……って、近付いてくるのを防げてる訳じゃないよ!? ぎゃー!? 明らかに毒を持ってそうな真っ赤なヘビがどんどん近付いてくるー!


「『放電』『放電』『放電』『放電』! ダメージ自体は結構入りますけど、私が動けないと意味ないですよね、これ!」


 距離を取れる状態ならどんどん下がりながらでも攻撃は出来るけど、後ろ脚が片脚が埋まってる状態じゃ身動きが!? やっぱり、このまま仕留められるのを待つ方が早い……?


サツキ : サクラちゃん、ファイト!

水無月 : 脱出、頑張って!

ミナト : 少しアドバイス、埋まってる脚と埋まってない脚の違いを比べてみるといいよー。


「え? それってどういう……あ、埋まってない方の脚は葉っぱを踏みつけてるんですか! これ、もしかして葉っぱの上なら沈みにくいっぽいです!?」


 もしそうなら、獅哮衝波で吹っ飛ばしたおかげで沼地っぽい場所の上には大量の草むらの残骸が降り注いでる! この葉っぱが、唯一の活路になるのかも!


「一か八かです! 『放電』『放電』『放電』! よし、これで目の前にも葉っぱの足場が出来ました!」


 まずは既に嵌ってる後ろ脚を引き抜かないと意味がないもんね! お願いだから、上手くいってください!


「ここから『疾走』です! あ、やった! 抜け出ました!」


 明らかに、沈み方が全然違う! ついでにもう目の前まで来て毒を滴らせたヘビの頭を踏みつけて脱出! ちょっと不安だけど、その辺のまだ無事な草むらを強引に駆け分けて……うがー! 脚は沈まないけど、走りにくいよ!


ミツルギ : おっ、上手く抜け出たな。

金金金 : あー、なるほどなー。そういや、どっかのイベントで湖にゴザを浮かべて、その上を走るってのもあったな。

ミナト : うん、あるある。そういうのと理屈は一緒だし、他に例を挙げるなら忍者の道具の水蜘蛛とかかなー。

いなり寿司 : まぁ接地面を広げて、重さを分散させて、沈みにくくする手段だな。


「理屈はよく分かんないですけど、物自体はなんとなく見た覚えがあるので大丈夫です! 要は、思いっきり葉っぱの上を駆け抜けたらいいわけですね!」


 何かの動画で見た事あるもん、そのゴザの上を走るやつ! 忍者になるゲームで、土蜘蛛を使って沼の上を移動したのもやった事ある! バランス崩して、何度も沈んだ覚えの方があるけど!


 ともかく、脱出手段は分かったし、獅哮衝波で作った道を駆け抜けろー! というか、皆さんが教えてくれなかったのはこの辺も含めてですかねー!?

 単純に私が沼に嵌るのを期待してた人と、その状況になる前に私自身が気付いたらアドバイスをくれるつもりでいた人に分かれる気がする! って、そんな事を考えてる場合じゃなーい!


 えっと、吹っ飛ばした草むらは……ヘビの位置的にあっちのはず! うがー! この草むら、周囲が見えにくいにも程があるよ! でも、この辺の地面は沼地じゃないみたい! ……切り替わる部分が分かんないよ!


「あ、元の位置に戻りましたね! ともかく、今はこの葉っぱの上を駆け抜けます!」


 目の前にヘビもいたけど、飛びかかってきたのを踏みつけていくのです! ……なんか、牙にさえ気を付ければ、意外とヘビは対処可能? うーん、まぁいいや! ともかく一か八か脱出に賭ける為に、駆けるのですよ!


「わっ!? わわっ!? 少しはマシですけど、それでも沈みそうです!? 一気に駆け抜けた方が良さそうなので、急加速で!」


 水の上を走る理屈は、脚が沈む前に次の脚を進める事! 疾走の効果時間が尽きる前に、一気に沼の部分を通り抜けるのさー!


サツキ : おー! 本当に駆け抜けられてる! こんな事も出来たんだねー!

富岳 : 割りと出来る条件は限られるんだが、サクラちゃんが獅哮衝波を持ってたから出来た事だ。

こんにゃく : 大型種族だと、基本的には草むらで見えずに脚が嵌まって身動きが取れなくなる事が大半だしなー。

ミナト : そう? 周囲の草花を目の前に倒しながら、それを足場にしていけば抜けられるけど?

咲夜 : それ、正確な操作を素早さと絶妙な力加減が必須なやつ!

いなり寿司 : 相変わらずミナトさんは、高難易度な事をあっさりと……。


「サラッと出てきましたけど、高難易度の脱出手段ってあるんですね!?」


 うぅ、やっぱり私が沼に嵌るのを期待されてた気がする! まぁ実際に後ろ脚の片脚だけだけど、嵌っちゃったけど! 片脚だけだったから、何とか抜け出せたのかも?


ミツルギ : あ、サクラちゃん、勘違いをしてるぞ。あくまで、嵌らない為の手段であって、嵌った後はガチで抜け出せないからな?

咲夜 : ここでミナトさんに、抜け出せるか聞いてみましょう!

ミナト : え、私なの? んー、さっきのサクラちゃんみたいに後ろ脚の片脚だけみたいな状況なら、まぁなんとか踏ん張れる場所さえ用意出来れば抜け出す事は出来るよ? でも、完全に全部の脚が嵌まったら……無理だねー。

水無月 : ミナトさんでも無理って言い切るんだ!?

ミナト : 足掻けば足掻くほどに、どんどん沈んでいくからねー。基本的に自発的には死ねないモンエボだけど、その中で自発的に死ねる部分だし?

富岳 : モンエボは、リアルでも本気で危ないとこは冗談抜きで死ぬようになってたりするからな。

チャガ : リアルでのレジャーとしての扱いのあるものは意外と緩めなんだがな。バンジージャンプ、スカイダイビング、川下り……まぁこの辺は緩めだ。

こんにゃく : 溺れての窒息とか、沼に嵌っての脱出不可とか、そういう所は容赦がないんだよな。

真実とは何か : リアルでの危険性を伝えるというのが真実なのである!


「その辺って確かにリアルでやったら命にかかわって危ないですもんね。よーし、ともかく草むらは脱出です! って、正面から近付いてきてる木がいるんですけど!? Lv9の『頑強な樫』って、知恵系統の敵に挟まれました!?」


 でも樫の木は瀕死だから、獅哮衝波が当たってギリギリ生き残ってただけ? それなら先に樫の木を倒して、ヘビも撃破していくのです! ……ヘビは、多分あの沼地は平然と進んできそうだしね!

 とりあえず疾走を止めて、ズサッと停止! さーて、ここなら足場もしっかりしてる平地みたいだし、本格的に戦闘開始だよ!

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