第10章 成熟体への進化です!
第327話 連休初日の土曜日
……あれ? もう朝? えっと、今何時……? うぅ、もう10時だけど……もう少し寝ようっと。昨日の夜は姉さんがプチ同窓会から帰ってきて、ちょっと慌ただしかったし――
「おはようー! 流石にそろそろ起きてるよねー!」
うん、姉さんが私の部屋に突入してきたけど、狸寝入りにしておこうっと。普段寝るつもりの時間から、2時間は姉さんに付き合って起きてたんだから、土曜日なんだし多少の寝坊は問題ないよね。
「寝たふりをしてる子はここかなー?」
「わー!? 姉さん、もうちょっと寝かせて……」
うぅ、姉さんめー! 頭まで被った掛け布団を引っぺがしてきたよ!? 平日の学校がある日ならまだしも、休日の土曜日くらいは寝かせてー!
そもそも姉さんが昨日のうちに帰ってきてたとか、プチ同窓会に行った割に意外と早く帰ってきたとか、その辺で色々調子が狂ってるのに! プチ同窓会は急な集まりだったから、そんなに時間が取れない人が多かったとは聞いたけども!
「美咲ちゃんは見なくて良いの? 俊くん、もうホームサーバーの交換作業を始めてるよ? 見たければ起きてこいって頼まれたけど?」
「そうなの!? それならすぐ起きる!」
わわっ!? 多分見ても何も分からない気はするけど、交換作業は見ておきたいかも! なんだか一気に眠気が吹っ飛んだー!
「ふっふっふ、起きたね! とりあえず着替えて降りておいでー! はい、これ」
「はーい!」
掛け布団を返してもらって……って、あれ? 姉さんだけ先に1階に降りていったけど、今までなら着替え終わるのを待ってるよね? 一体どうしたんだろ? んー、まぁいっか!
あ、そういえば朝ご飯はどうしよ? 土日の朝ご飯はお父さんかお母さんが起きてる時にちゃんと起きてれば用意してくれるけど、そうじゃなければ自分で用意だもんね。食パンなら常備されてるし、簡単な料理なら出来なくもないけど、パンを焼くのでいいかなー? うん、そうしよう!
◇ ◇ ◇
流石に姉さんの旦那さんもいるし、比較的新しめの部屋着に手早く着替えてから、台所へとレッツゴー! おぉ、その前にリビングを通ったけど、ホームサーバーらしきものが2台ある! 片方は見覚えのあるやつだけど、もう片方は見覚えがないからこっちが新品のやつだね!
平たい枕みたいな形状で、サイズ感もそれくらい! 新しいやつの方が、ほんの少しだけど小さい感じかな?
「……こうして比べてみたら、結構痛んでるんだねー」
「ん? あぁ、起きてきたか。まぁなんだかんだで結構年数は経ってるのもあるし……誰かさんが転んで物をぶつけた事も何度かあるからな。その時の傷が――」
「わー!? その件はちゃんと謝ったよー!?」
うぅ、そう言われてしまうと思い当たる事が……何回かな? えーと、流石に2桁ではないけど、片手では足りないくらいには身に覚えがあるような……?
なんだかんだでリビングにみんなの手が届きやすいところにあるから当たるのですよ! ……携帯端末やVR機器経由では駄目な、直接ホームサーバーからでしか出来ない事もあるみたいだから仕方ないけども!
「兄さん、今は何をやってるのー?」
「今は古いやつを取り外したとこだな。これから新しい方のの初期設定と設定移行を済ませて、その後から内部ストレージを物理的に移植だな」
「……移植?」
移植ってなーに? あ、今までの姉さんの作ったあの憩いの桜の木のある和室とか、私の狐っ娘アバターとか、配信用の和室とか、その辺の事かな? 移植って事は何かを移すんだろうし、多分そういう事! うん、そう思っておこう!
「少し設定に時間がかかるから、呼ぶまで朝飯でも食ってろ」
「え、朝ご飯、あるの!? そういえば、お父さんとお母さんはー?」
「姉さんのお土産を現物に交換しに、デカいデパートに遠出している。今日の晩飯にすると言ってたな」
「おぉ、昨日の電子ギフトだよね! わーい!」
昨日の夜に聞いたけど、旦那さん曰く、姉さんに選ばせると量がおかしな事になるのが避けられないって事でギフト券をくれたんだよねー! なんだかんだで姉さんが大金を稼いでいるのをこういう時に実感するよ!
ゴールデンウイークの時は、良いお肉をたくさん買ってきてくれたんだけど……買ってき過ぎて余り過ぎちゃったもんね。5月が誕生日の姉さんが自分の食べたい物を買ってきたってとこでもあったけど、多過ぎる量は勘弁をー!
「美咲ちゃん、こっち、こっち!」
「え、なんで姉さんが台所にいるのー?」
姉さんって料理はさっぱりだったと思うけど……あ、姉さんが帰ってきてるんだし、お母さんがみんなの分を用意してくれてたのかな? うん、その可能性はありそうだよね! それなら食パンじゃなくて、普通の朝ご飯を食べれそうな予感!
あ、鮭の塩焼きがメインの和食の朝ご飯だー! 朝ご飯でお母さんが用意するのって洋食が多いけど、今日は姉さんの好みに合わせて和食なのかな?
「お母さん、準備ありがとう!」
「……それを作ったの、お姉ちゃんなんだけどなー!?」
「……え?」
「その変な物を見たような反応はやめてー!? お姉ちゃんだって、やれば出来るんだよ!」
「……えぇ?」
「あー!? 美咲ちゃんが信じてくれてない目だー!?」
だって、2ヶ月前のゴールデンウイークではそんな様子って欠片も無かったし……家にいた頃だって、姉さんが台所で料理をしてたとこなんて見た事ないもん! 兄さんが料理をする時はたまに見るし、私だって必要な時は作ったりするけど、姉さんはそれはなかったもん!
もし姉さんが最近料理をするようになったとしても、この朝ご飯は立派に出来過ぎている! 少なくとも、姉さんだけで作ったんじゃなくて、誰かの手伝いの元で作った料理!
って、あれ? なんだか車が止まった音がしたけど、そういえば姉さんの旦那さんの姿がないね? あ、来客を伝えるチャイムが聞こえたし、もしかして出かけてた感じかな?
「あ、聡さんが帰ってきたね!」
「姉さん、今の電子ロックはゲスト用のは機能してないから、直接鍵を開けてきてくれ」
「はっ!? そういえばそうなるよね! うん、行ってくる!」
あ、そっか。玄関のカギはホームサーバーと連動してるんだから、新しいホームサーバーへと移行中の今はゲスト用に発行した電子ロックの解除キーじゃ開けられないんだ! だから物理的にある内側の鍵から開けるしかないんだね!
「……朝飯は母さんと聡さんが監督してたとはいえ、作業自体は姉さんが1人で全部やってたからな。その辺は疑ってやるなよ?」
「え、兄さん、そうなの!?」
むぅ、お母さんと旦那さんの監督があったとはいえ、姉さんが自力で作ってくれた朝ご飯かー。それだと、さっきの反応は本当にちょっと悪い事をした気がしてきた……。
「すまないね、葵。あぁ、美咲ちゃんも起きてきたのかい」
「遅めですけど、おはようございます! どこか行ってたんです?」
「ホームサーバーの追加ストレージを買いにね? 本当は昨日ここに来る前に買ってくるべきだったんだけど、気付いたのがついさっきで、慌てて買いに行ってたところだよ」
「俺の方でも、そこは気付いとくべきだったんで、気にしないでください」
「わざわざ済まないね。必要なのはこれで合ってるかい?」
「……はい、同容量のものなので、これで問題ないですよ。もう初期設定は済ませたので、移植する前にコピーをしていき――」
なんだか姉さんの旦那さんの聡さんと兄さんが会話してるけど、内容がさっぱり分からない! というか、兄さんって姉さんの旦那さん相手だと地味に喋り方が変わるよねー!
それにしても、あの買ってきた薄い板みたいなのはなんだろ? あれ? なんか古い方のホームサーバーのカバーを開けて、同じような薄い板が出てきた? あ、それを兄さんが近くにあったよく分からない機械に2枚とも刺して、何か操作してるね。うーん、何をやってるかがさっぱり分からない!
「美咲ちゃん、私の作った朝ご飯は食べられないのかー!?」
「わわっ!? そういう訳じゃないよ!? 姉さん、変に疑ってごめんね! それじゃ、いただきまーす!」
「はーい、召し上がれ!」
なんだか昨日の夜から少し騒がしい状態になってるけど、まぁこれはこれで楽しいよね! とりあえず私は朝ご飯を食べていくのさー! あ、普通に美味しいね、これ!
ホームサーバーの取り換えで午前中はフルダイブは使えないって話だったけど、それが終わるまでは何をしてようかな? 見る前から分からない気はしてたけど、兄さんがやってる作業は相変わらず謎だもんねー。
――――――
連載再開、新章突入です!
再開早々ですけど、来週から更新頻度の変更を行います。
今の月〜金の週5回の更新から、2日に1回の隔日連載に変更します。
詳細は近況ノートをご覧下さい。
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