第208話 大乱戦 後編


 うがー! 最後の最後は戦う事にはなるとは思ってたけど、まさかの樫の木の妨害がこんなにあるとは想定外だったよ!


「なんかさっきの樫の木の根での突き刺し、威力が高くなかったですかねー!?」


 いくらなんでもまだ7割くらいHPが残ってたトカゲが根での串刺しで瀕死になるとは思わなかった! あの威力は凶悪!


ミツルギ : あー、多分あれは第6段階の溜め攻撃。

G : 多分そうだろうなー。

富岳 : 萎縮の効果切れが早い気もするが、もしかすると知恵も高めか?

ミナト : その可能性はありそうだねー。


「え、そうなんです!? あ、雷纏いの効果切れが近いですね! わわっ!」


 枝での叩きつけは回避ー! ん? あれ、植物にも麻痺は効いてたはずだし、回避する必要もなかった気がする?


「とりあえず後で仕留めるので、邪魔しないでください! 『爪撃』!」


 叩きつけてきた枝が元の位置に戻る前に、爪で切り裂く! うん、雷纏いの効果が切れるギリギリで麻痺が入ってくれた! ふー、間に合って良かった! 知恵が高いかもって話が出てたけど、状態異常が効かない絶対的なものではないんだね。


「これだけ邪魔してくるなら、樫の木は今日のMVPから除外です!」


 ふーんだ! 頼りになると思ったら、邪魔にしかなってないんだもん! サムネイルへの採用は見送りです!


ミツルギ : 堅固の樫の木が邪魔になるかー。

咲夜 : 珍しい気がする、このパターン。

ミナト : 攻撃されなきゃ、あんまり攻撃的にはならないはずなんだけどね? サクラちゃん、周りを軽くでいいからグルっと見せてくれない? もしかしたら、何かあるかも。


「あ、はい! 何かって、何があるんですかねー?」


 何か原因があるかもしれないなら、それは把握しておくべき! もう雷纏いは効果が切れちゃったから、ここからは麻痺頼りの戦闘は出来ないもん! えーと、ミナトさん頼りにならないように自分でもしっかりと確認を……。


「あっ!?」


 なんか力なく萎れてるっぽい根が、何本か積み重なった折れた木に潰されてる! これってもしかして、あの樫の木の根だったりするの!?


ミツルギ : あー、そういう事か!

ミナト : あらら、これは獅子咆哮の時の余波で、知らないうちに攻撃しちゃってたみたいだね。

いなり寿司 : 他の攻撃を優先して、今は操作を放棄してる根ってとこか。


「なんか樫の木さん、すみませんでしたー!」


 原因は思いっきり私にあったよ!? 気付いてなかったとはいえ、私が先に攻撃してたのならそりゃ攻撃されるよね! うーん、今からあの積み重なった木を排除すれば攻撃は止めてくれる? ……止めてくれるとは思えないねー。


「えぇい、ならばこれです! 数はそんなにないですけど、とっておき! 『投擲』!」


 植物には出血効果が効かないから、代わりに毒の実をここで使う! ごめんね、樫の木! でももうこうなった以上は、戦うしかないんだよ! その代わり、全力で叩き潰すから!


咲夜 : ここで毒の実を投入かー。

チャガ : まぁ堅固の相手には、継続ダメージは有効だしな。

サツキ : サクラちゃん、いっけー!


 うん、ちゃんと当たって微毒になってくれた。これで継続ダメージが入って弱っていくはず!


「とりあえず樫の木は放置です! まずは他の3体を仕留めていきますよー!」


 堅固のカエルの方は出血効果が入ってるし、攻撃を仕掛けてくる時だけに気を付けて直接は相手にしない方が楽かな? となれば、精彩の蝶とトンボを優先して仕留めよう! どっちも残りHPは3割ほど!


「先に蝶を仕留めます! 『噛みつき』! えいや! えいや!」


 何となく蝶の方が仕留めにくそうな気がするから、麻痺がまだ残ってる間にこっちを優先! それと同時にまだ麻痺してるトンボにも通常攻撃で前脚を叩きつけまくる! 出来るだけ頭を狙って朦朧狙い!


「わっ!? カエルが突っ込んできましたね!?」


 トンボへの攻撃を中断して、即座に飛び退いて回避ー! 堅固だから体当たり系の攻撃なんだね! うん、これならタイミングさえちゃんと掴めば避けられない事はない!


「って、わわっ!? ぐふっ! がはっ! ゴホッ!」


 そんな事を考えてたら、樫の木に枝を連続で叩きつけられた! うがー! 雷纏いの効果が切れたら途端に厳しくなったよ!? こ、これは辛い……! うぅ、ともかくすぐに起き上がって、体勢を立て直し!


サツキ : サクラちゃん、ここからだよ!

イガイガ : ここで踏ん張らないと、咲夜さんの死亡フラグ通りになるぞ!

咲夜 : このタイミングでその話題!?


「それは嫌ですね! 意地でも勝ちますよ!」


 樫の木に攻撃しちゃってて、完全に敵に回ったのは大誤算。だけど、それを言い訳にして負ける気はないのさ! そもそも、攻撃が激しくなるのは元々想定済み! あ、噛みつきの効果が切れた!


「今はとにかく数を減らします! 『放電』『放電』『放電』『放電』!」


 噛みついている蝶が動き出す前に、放電を連発! あ、やった! こっちで麻痺してくれた! これは嬉しいし、残りHPもあと少し!


「これで蝶はトドメです! 『体当たり』!」


 目の前にはまた樫の木が振り下ろしてきてる枝があるけど、口からペッと吐き出した蝶と枝を巻き込む形で体当たりだー!


<未成体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


「これで樫の木を含めて残り3体です! わっ、危ないですね!」


 カエルが突っ込んでくるのが見えたから、真上にジャンプして回避! ふっふっふ、カエルは、樫の木の枝に突っ込んでダメージを与えてくれてありがとう! そしてどっちも微毒と出血でどんどん弱ってくれるね! 堅固だけど、どっちもHPは半分を切ってる!


「次はトンボを仕留めます! 『放電』『放電』『放電』!」


 ちょこまかと飛び始めたトンボには近接攻撃が当てにくいから、ここは樫の木やカエルの攻撃から逃げ回りながら放電で攻撃! いっけー!


ミツルギ : おー、上手く躱しながら攻めてるな!

いなり寿司 : 厄介な系統の敵がいなければ、サクラちゃんは良い感じで戦えてる。

サツキ : 頑張れ、サクラちゃん!


「はい、頑張ります! 『放電』!」


 全く溜めなしの放電じゃ回数が必要だから、少し溜めてからトンボに当てよう! それにしても、あのトンボはHPが多い以外には特になんにも脅威は感じないねー?

 放電で攻撃し始めてから一か所に留まって攻撃らしい攻撃もしてきてないし……って、それは危険な兆候ー!? 咆哮は……再使用時間が丁度過ぎたとこだった!


「放電開始からの『咆哮』!」


 よし、何か溜めてたような気配があったから、それを先に潰せたね! 危ない、危ない! 呑気に逃げまくりながら放電を溜めてる場合じゃなかったよ。でも放電じゃ倒し切るにはまだダメージが足りなかった!


「これでトドメです! 『爪撃』!」


<未成体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


<サクラ【巧みなライオン【雷】】が未成体:Lv6に上がりました>

<基礎ステータスが上昇します>

<進化ポイントを3獲得しました>


 やった、これでLvが6に上がった! あとはカエルと樫の木を仕留めれば……って、どっちも大人しい? え、なんだか嫌な予感!? すぐに倒し切れたさっきのトンボに咆哮を使ったの、失敗だったかも!


G : げっ、マジか!?

ミツルギ : カエルも樫の木も両方が溜め攻撃!?

富岳 : ヤバいな、タイミングを間違えると一気に死にかねんぞ。


「わわっ!? え、2体連続とか、身構えでも危険なするんですけど!?」


 うがー! どっちが先に発動するのかが分からないよ!? えっと、多分カエルは痛い体当たり系の攻撃だよね! それで多分、樫の木は根で串刺しにしてくるやつ! タイミングが分からない溜め攻撃の2連発を回避……? それ、無理じゃない!?


「だったら、片方だけに絞ります!」


 樫の木の裏に回り込んで、カエルと私の間に樫の木を置く! これならカエルの方は単発なら確実に防げるし、場合によっては樫の木を倒してくれる可能性があるはず! この際、樫の木がカエルに倒されても仕方ない!


いなり寿司 : お、それは良い手だな!

イガイガ : ここで樫の木が盾に出来るか!

ミナト : サクラちゃん、樫の木の攻撃は確実に避けるようにね!


「はい! とりあえず今はこれで出来るだけHPを削っておきます! 『連爪』!」


 硬い幹への攻撃にはなるけど、それでもやらないよりはマシ! あ、カエルが動き出した! やった、先に動くのはカエルだった! でも、まだちょっと樫の木のHPが残ってるね。

 でも、この状態なら樫の木の攻撃は躱しやすい! いや、1体分ならHPは半分以上はあるから耐えきれるはず!


「ここまできたら全部倒します! 『身構え』! ぐっ!」


 結構な衝撃だけど真下から樫の木の根が突き刺さされてHPは2割くらいまで減ったけどなんとか耐えれた! ちょっと根が刺さっちゃってるけど、それでもかなりマシ! そして樫の木もカエルの攻撃を受けて、もう瀕死状態だー!


<未成体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


「え、あれ? カエルが死にました?」


 このタイミングでカエルが死ぬとは思わなかったよ!? え、なんで? まだHP結構あった気がするんだけど!?


富岳 : あ、一気に動き過ぎて出血で死んだか。

ミツルギ : 溜め攻撃だと一気に弱るからな、あれ。特に移動を伴う体当たり系の攻撃だとなー。

金金金 : おー、そうなのか。


「あ、そういう事ですか!」


 そっか、そっか! ここで出血効果が凄い役目を果たしてくれたんだね! あ、突き刺してきた根は地面の中に戻ったし、身構えも解けたし、攻撃チャンス! 


「これで終わりです! 『投擲』!」


 狙うは根じゃなくて枝の方! 小石を弾き飛ばして、いっけー!


<未成体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


「全部、撃破完了です!」


 追撃の枝の振り下ろしがきてたけど、その前に倒し切れてよかったー! あー、今の戦闘は疲れたー!


サツキ : サクラちゃん、お疲れ様ー!

いなり寿司 : なんとか死亡フラグは乗り切ったか。

ミナト : なんとか倒せたねー!

ミツルギ : ナイスファイト!

咲夜 : 生き残ったー!


「皆さん、ありがとうございます! HPも結構危ないのでちょっと休憩させてくださいねー」


 という事で、休憩タイム! あ、そういえば結構進化ポイントは手に入ったはずだから、『再生強化Ⅰ』を解放出来るかな? うん、その確認をしていこー!

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