第126話 出てきた敵は
夜目のおかげで良く見えるようになった森の中、草むらに隠れている何かがキノコを狙おうとしている! そして、私はそれを狙う!
「……というか『看破』が今回の件にはあんまり役に立ってない気がします?」
よく考えたら、今のこの隠れた敵って看破は関係ないよねー!? うぅ、折角の看破……。
むしろ良く見えるようになった夜目の方が便利な気がする! でも、看破は看破でこんな変なタイミングで敵が出てこなければ、便利な感じではあったよね。
ミツルギ : まぁほら、看破も万能じゃないって事が分かったし!
いなり寿司 : こういう状況って結構珍しい事なんだけどなぁ……。
咲夜 : この先どこかでこういう状況に遭遇した時に困惑しなくて済むから!
「むぅ、そういう考え方も出来ますか……。あ、出てきましたね!」
ピョンピョンと跳ねながら逃げているキノコに向かって、草むらに隠れていた敵が出てきたー! あっ……。
「……キツネでした」
うぅ、大好きなキツネが出てきちゃった……。なんで、なんでここでキツネさんが出てくるのー!? キツネさんがキノコに噛みついてるね。
私は大好きなキツネをこの手で倒さなくちゃいけないのー!? うぅ、嫌だなぁ。でもそういうゲームだし、ここで躊躇する方がゲームの敵として出てきたキツネに失礼な気がする。
サツキ : あ、ほんとにキツネが出ちゃった!
金金金 : 狐っ娘アバター、とんでもなく複雑そうな心境が顔に出てる!?
ミツルギ : サクラちゃん、キツネ好きっぽいもんな。
咲夜 : ここまで躊躇するサクラちゃん、初めて見たな。
G : 好きだからこそ、攻撃が出来ないか……。
ミナト : ……これは別の意味で教えない方が良かった? えっと、サクラちゃん? そこまで躊躇するなら、無理に戦わなくてもいいんだよ?
「……確かにそれも選択肢の1つですよね」
苦手な生物や不利な相手とは戦わないという選択肢も選べるなら、好きな動物とは戦わないという選択肢も確かにある。
うん、とりあえず初めてのキツネさんとの遭遇という事で、スクショは取っておこう! スクショを撮るぞー! ……よし、撮れた!
うーん、獅子咆哮の溜めは終わってるけど、もういっそのこと不発にして戦闘しないで眺めてようかな? 無理に戦わなくても……いいよね?
富岳 : まぁそれも1つの選択か。
チャガ : 無理強いする事でもないしな。
いなり寿司 : でも、これだとキツネがエリアボスになった時が大変そうだな。まぁ絶対に倒さないといけないものじゃないけど……。
ミツルギ : 一度倒さないと、エリアボスは他の種族には切り替わらないもんな。
サツキ : サクラちゃん! そこまで躊躇するなら苦手生物フィルタにキツネを登録だー! そうすれば敵として出てこなくなるからねー!
ミナト : あ、逆転の発想だね。
富岳 : 確かにその手段はありだな。
「……え? あ、そういう使い方もありなんですね……」
そっか、エリアボスがキツネになる可能性もあるんだよね。うん、確かにそれは支障が出そうだし、見えなく出来るのならそういう手段はありかもしれない。
でも、好きな動物を苦手生物として登録するのは絶対に嫌! そして、私の個人的な好みを優先し過ぎて、過剰に避けるような真似は実況プレイとしても良くないよね。……よし、決めた!
「ごめんなさい、キツネさん! 私はこっちを選びます! 獅子咆哮、発射!」
私は好きなキツネさんを苦手生物フィルタに登録してキツネさんが出てこなくなるのを選ぶより、倒して糧とするのを選ぶ!
正直に言えば戦いたくはないけど、好きなものを嫌いなものとして選ぶよりもこっちがいい! いっけー!
<成長体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
「……あれ?」
ちょっと待って、キツネさんを吹っ飛ばしたけどなんだか進化ポイントが入ってきたよ? 今、何を倒したの?
キツネさん、獅子咆哮で吹っ飛ばして近くの木に叩きつけた形にはなったけどまだ普通に生きてるよ? ……うん、今ので何本か木が折れてるけど、それはいいや。
「あ、そういえばキノコがいたんでしたっけ!」
うん、なんか途中からキノコの事はどうでも良くなってたから、忘れてた! キノコには何も躊躇する事はないもんね!
咲夜 : 何がどうしてそうなった!?
ミツルギ : サクラちゃん、なんか吹っ切れた?
G : 俺には分かる! 好きな生物を苦手生物フィルタに入れるのが嫌だったんだ!
神奈月 : あー、好きだからこそ、絶対にしたくない事か。
ミナト : サツキさん、その辺を吹っ切れるように配慮をしたのかな?
サツキ : ……あれー? あ、うん! これでサクラちゃんは戦えるよね!
富岳 : 絶対に考えてなかったな。
ミナト : ……みたいだねー。
サツキ : そ、そんなことはないよー!?
「きっかけにはなったので、サツキさん、ありがとうございます!」
まぁ今の反応的に絶対に何も考えてなかったとは思うけど、ここは姉さんにお礼を言っておかないとね! そうじゃなければ、ただひたすらに好きなキツネさんとの戦闘は避けるだけの状況になってたと思うから!
「……あれ? キツネさんのHPの下に『朦朧』って表示が出てますね? あ、これが『解析略化』の効果ですか!」
ふむふむ、こうやって状態異常が分かるようになるんだ。朦朧になったかどうかは敵の様子を見てたら何となく分かってたけど、こうやってはっきり分かるのは良いね!
ミツルギ : 『解析略化』の効果が明確に出たな。
真実とは何か : 真実の状態を示す効果である!
いなり寿司 : ちなみにエリアボスの場合は、そこにエリアボスという表記も出る。
「あ、そうなんですね! それは了解です!」
うん、エリアボスは交戦状態になれば一目でエリアボスと分かるようになったんだね。『看破』の有用性って、そこまでのスキルツリーの解放の過程で手に入るスキルの効果も含まれてる気がするよ。
さてと、色々と考えるのはここまで! 今、朦朧の文字が消えたのがはっきりと見えたし、ここからは大好きなキツネさんを倒していくのです! もうその覚悟は決めた!
「起き上がってきましたね、キツネさん! 倒すと決めたからには全力です! 『雷纏い』!」
キツネさん1体相手に使うのは勿体ないと思うけど、これは私の決意の証! これからは他のキツネさんと遭遇したとしても、好きだからという理由で戦うのを躊躇しない! だから、ここは私の全力で倒すのみ!
「『体当たり』! わっ!?」
キツネさんも私に向かって体当たりを仕掛けてきたけど、それに合わせるように私も体当たり! 少し力負けしたみたいだけど、麻痺が入ったから問題なし!
「続けていきます! 『振り回し』からの『爪撃』!」
麻痺が入って、身動きが取れないキツネさんのHPはどんどん削れていく! ……うん、これでいい! ゲームなんだから、変な躊躇をしちゃ駄目!
サツキ : サクラちゃん、いっけー!
いなり寿司 : ……さっき黙ってるって言ってなかったっけ?
イガイガ : そこは触れない方がいいやつ。
そういやなんか普通に姉さんが会話に戻ってきてるけど、今はそれはいいや! 雷纏いの効果時間はそう長くないし、素早く狐さんを仕留める! もうHPは残り3割くらいまで削れてるしね!
「『連爪』!」
爪での3連撃をしてから……少し削り切れなかったね。でも、もう後1撃だー! いっけー!
「これでトドメです! 『噛みつき』!」
キツネさんの首筋に噛みついて、残っているHPを全て削り切る!
<成長体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
……うん、倒せたよ。経験値と進化ポイントをありがとう、キツネさん。これから先への糧にさせてもらいます。
「……ふぅ、なんとか倒せそうですね!」
ゲームはゲーム、データはデータ。本物のキツネを殺した訳じゃない……けど、やっぱり好きなものは躊躇いはあった。
でも、そこは正しく認識しておかないと変な難癖をつける人達と同じになっちゃうもんね。それにモンエボのここまでのプレイで他の動物を倒してきたの、にキツネだけは特別扱いっていうのも変な話だもん。
「さてと、地味に看破の再使用時間が過ぎてるので、このまま次の敵を探していきますね! 『看破』!」
まだ雷纏いの効果も続いてるし、効果中にもう1体くらい倒しておきたいよね! えーと、看破を使いながらちょっと走ってみよう!
「どこか、倒しやすそうな敵はいませんかねー?」
パッと見では虫や木の成長体はいるけど、色々とスキルを使った後だから、ある程度の大きさがある敵が良いよね。ちょっと走りながら手早く探すぞー!
ミツルギ : サクラちゃん、お疲れさん。だけど、無理だけはするなよ?
咲夜 : そうだぞー!
金金金 : ゲームは楽しくだ!
「はい! それは分かってます!」
ゲームは楽しくは大前提! 決意なんて大げさな考え方はしたけど、今までやってきたゲームでキツネをモチーフにした敵が出てこなかった訳じゃないしね!
モンエボの仕様がちょっと特殊だっただけ! ゲームなんだから、その辺は意識を切り替えて楽しくやっていこー!
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