第66話 魚との戦い


 急げ、急げ、急げー! 幸いな事に水を飛ばしてきているのは一番最初に戦ってた魚だけ! だったら陸地まで逃げれば、後はひたすら走れば逃げ切れる!


ミツルギ : おー、まさかこんな展開になるとは。

ミナト : あはは、外した投擲がまさか川の中の魚に当たるとはねー。

金金金 : サクラちゃん、ファイト!

いなり寿司 : さて、また死にそうな予感もするけど……。


「さっきの今で死んでたまりますかー!?」


 確かに死にそうだというとこは否定できないけど、かなり危ない水準までHPが減ってきているのも事実だけど! 意地でもここは生き残る!


「よし! なんとか陸地まで退避しました……って、陸地にまで突っ込んで来ないでくださいよー!?」


 うぅ、噛みつきを発動して魚を咥えたままだから、回避以外の手段が取れない! というか、そもそも後ろが見えないから、回避すらまともに出来ないー!?


「がふっ! うぐぐ、でも咥えた魚は逃がしません!」


 思いっきり陸地に飛び出してきた魚の体当たりを受けて転んだけど、まだ死んではいないのですよ! それに、陸地に上がった魚は自殺したようなもの!

 ふっふっふ、今の時点で2匹は地面に上がってきてるから、ここでもし私が死んだとしても、その経験値と進化ポイントは既に私のものなのだー!


「わっ! 咥えた魚が普通に戻りました! って、至近距離から水を飛ばそうとするんじゃなーい!」


 魚を咥えてる向き的に口から噴き出してくる水は届かないからいいけど、頭から咥えてたら口の中に攻撃されてたね! ふー、危ない、危ない!

 さて、川から水が飛んでくる様子も無くなってきたし、射程圏外まで逃げ切ったかな? とりあえず、振りむいてみようっと。


「って、魚が陸地から跳ねて体当たりは無しだよねー!? わー!?」


 ふ、振りむいてて良かったー! 今のタイミングで振り向いてなかったら、陸地にまで飛んできてた魚の再度の体当たりが直撃するとこだったー!

 なんとかギリギリのタイミングだけど、気付いて回避出来たからセーフ! とりあえず咥えて暴れてる魚は……おぉ、丁度いい所に岩があるね! せーのっ!


「ふぅ、一か八かでしたけど、運よく朦朧が入りましたね!」


 咥えたまま、頭突きの要領で岩に魚の頭を叩きつけるのに成功! ふっふっふ、朦朧は確率だと聞いたけど、ここで引き当てた私は運が良い!


「とりあえず確実に1体ずつ仕留めます! 『爪撃』!」


 朦朧になってぐったりとしている魚を地面に置いて、爪を振り下ろす! まずは水での遠距離攻撃を持っているこの魚から倒すのです! よし、見事に爪が当たって、HPが半分を切った!


 そういえば、この魚ってなんだろ? んー、多分だけどコイ? 突撃してきた方の魚もコイかな? 水を飛ばしてきたのは口周りに、突撃してきたのは全身に白い模様があるねー。


チャガ : 思いっきり綱渡りな戦闘だな。

ミツルギ : 相当ギリギリだけど、サクラちゃんが有利な場所に移れたから、油断さえしなければ勝てるはず。

咲夜 : サクラちゃん、そいつを倒したら一旦更に距離を取るといいぞ!

富岳 : いや、それは駄目だ! 無理に倒さずに、まずは距離を取って回復だ。

ミナト : こらこら、違ったアドバイスはサクラちゃんを混乱させて逆効果だよ。


「申し訳ないですけど、少し集中させてください!」


 ミナトさんの言うように、今の状況で複数の違うアドバイスを聞き分けている余裕はないのですよ!

 とりあえずミナトさん、ありがとうございます! 咲夜さんも富岳さんもアドバイスをしようとしてくれた事には感謝! だけど、私に逃げるという選択肢もなーい!


「まずは数を減らします! 『連爪』!」


 既にこの水を飛ばしてきたコイのHPは半分以上減ってるから、朦朧が切れる前に一気に倒してしまう! よーし、これでこの魚は残りHPは2割! あ、ピチピチと動き出しちゃった。

 そこならこれだー! 前はタイミングを見誤って自分も朦朧になっちゃたけど、今回は失敗しないぞー! 尻尾側から咥えて、岩に連続叩きつけだー!


イガイガ : お、出たな、岩への叩きつけ。

神奈月 : これで朦朧がもう一度入ればいいんだけど……。

チャガ : そこは運頼りだからな。


 ガン、ガン、ガンと叩きつけて……むぅ、今回はなかなか朦朧にならないね。チャガさんの言う通り、ここは運頼りだから仕方ないかー。

 それでも、もう残りHPは少ないから魚が暴れながらでも仕留め切れるはず! くったばれー!


「わっ!? だから、陸の上で飛び跳ねて突撃してこないでくださいよー!?」


 うー! 陸でピチピチ跳ねてた魚に体当たりをされて、ちょっとバランスを崩しちゃったじゃん! あー! しまった、咥えてた魚も放しちゃった!

 って、その状況から水を飛ばしてくるなー!? 陸地に打ち上げられた魚なのに、攻撃性が高くないですかねー!? 体当たりしてくる魚の方も、HPが目に見えて減ってるんだけど、その状況で攻撃してくるの!?


「……というか、大真面目にHPが危ないですね」


 私のライオンの残りHPがもう1割も残ってないんだけど、魚の動きに注意さえしてればなんとかいける? うーん、どういうタイミングでどう跳ねて突撃してくるか分からない魚が2匹と、私のライオンと同じくらいまでHPを減らした水を飛ばしてくる魚……。

 うん、これは逃げるが勝ちかな? 放っておいてもあっという間に死にそうだし、ここで変に突っ込んでいくには私自身のHPが危険すぎる。

 

「んー、近くに回復用の果物でもあればいいんですけどねー」


 とりあえず少しだけ距離を取って、周囲の観察だー! 慌てて今の場所まで来たから、周辺に何があるのか、全く把握できていないしね!

 ここで回復アイテムになる果物があれば、全消費してから3匹の魚を仕留めるのも悪くはない! そういう展開になれば、今日の配信の〆としてもばっちりだよね!


「おぉ、丁度いい所に赤い実を発見です! これで、全回復して魚を倒していきますよー!」


 小さな赤い実がズラッと生っている植物だね! ふっふっふ、運は私の味方をしたー! ガブリとね!


「ぎゃー!? どんどんHPが減っていくんですけどー!? え、なんでー!?」


 回復アイテムを食べたつもりが、逆にHPが減るってどういう事!? ……あ、通知に『毒のあるアイテムについて』って出たよ! この赤い実、毒なの!?


チャガ : それは食うな!?

ミナト : あー!? サクラちゃん、それは駄目ー!?

富岳 : ……既に遅いか。

金金金 : え、何事?

ミツルギ : 今の、ドクウツギって言ってな? 猛毒の実だ……。

金金金 : 名前からして毒だな……。

ミツルギ : 出てきたときに説明しようと思ってたのに、なんでこのタイミングで……。


「これ、毒なんですね!?」


 どうしよう、どうしよう、どうしよう!? まさか毒の実がその辺に普通に生ってるとか想定してなかったよ!? 毒ってどうしたらいいの!? 放っておいたら自然治癒するの!?


ミナト : この状態になったら流石に口出しは仕方ないね。サクラちゃん、ともかくそこから離れよっか。アイテムでの毒はHP1で止まるようにはなってるよ。

ミツルギ : 時間悔過で毒は抜けるから、それまで退避だ。


「あ、そうなんですね! それじゃ――」


<サクラ【器用なライオン】が死亡しました>

<死亡した為、ランダムリスポーンとなります>


 あー!? 急に毒になって慌ててたから、水が飛んできてたのと回避しそびれたー!? ……うぅ、折角勝てると思ったのに、まさか毒状態になって、またランダムリスポーン!


「うがー! あの魚達は、絶対に倒すー!」


神奈月 : なんというか、サクラちゃん、ドンマイ。

チャガ : 今のは……まぁ運が悪かったな。

いなり寿司 : 流石に悔しい状況だろうなー。


<成長体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


<サクラ【器用なライオン】が成長体:Lv3に上がりました>

<基礎ステータスが上昇します>

<進化ポイントを2獲得しました>


「え、あ、もしかしてさっきの魚が死にました!? リベンジ出来ないんじゃないですか!?」


 ちょっと待って! そうなると、私の敵討ちが出来ないんだけど!? 今ので勝っても嬉しくないんだけど! そこはリベンジをさせてー!?


金金金 : サクラちゃん、ドンマイ!

咲夜 : こればっかはどうしようもないよなぁ……。

イガイガ : 同じ進化をした同じ種族なら出るけど、同じ個体はいないからなぁ……。


<成長体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


<成長体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


「って、他の魚2匹も死んだっぽいですね!? うがー! 全然勝った気がしなーい!」


 今回ので一気に進化ポイントが5も手に入って、元々が2あったから合計で進化ポイントは7になった。うん、そこは結果だけとしては良い! だけど、その過程が納得いかないんだけど!?


 あー!? でももうそろそろ配信を終わりにしなきゃいけない時間だー!? うぐぐ、今回の配信の〆が今の戦闘なのは嫌ー!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る