第25話 実感する上達


 さーて、チュートリアルは終えた! 目指せ、幼生体のゾウへのリベンジ! ふっふっふ、咆哮と投擲を駆使して頑張っていくぞー!


「それじゃ幼生体の捜索からですねー! あれですよね、明らかに動かないはずの雑草か木が狙い目ですね!」


ミツルギ : おう、頑張れー!

イガイガ : お、地味にこの時点だと良い手段を選んでる。

咲夜 : まぁ一度その種類の敵は見たしな。

ミナト : サクラちゃん、ファイトー!


「はい、頑張ります!」


 雑草とは激戦を繰り広げたし、あの異様な姿は忘れない! だからこそ、見分けがつきやすいのですよ!

 知恵のスキルツリーにあった『識別』で何となく判別できそうな気もしてるけど、全然進化ポイントが足りないからね! 一般生物でも経験値は手に入ってLvは上がるみたいだけど、今欲しいのはスキルツリーを解放するための進化ポイント!


「さーて、まずは下準備ですね!」


 とりあえず地面を掘って、掘って、掘りまくれー! これぞ、私の必勝方法! まだ全然試してないけど、必勝になるのさ!


咲夜 : 捜索をすると言いつつ、いきなり地面を掘り出す件について。

イガイガ : あれじゃね? 投擲用の石の確保。

ミツルギ : 多分そうだろうなー。

チャガ : まぁ攻撃用のスキルはまだ投擲だけだしな。


「ふっふっふ、その通りです! まずは投擲用の石を確保するのですよー!」


 投擲は投げるものがなければ意味がないはず! 戦闘を始めてから石を探すような真似はしないのさ! 

 雑草と戦った時に草原に生い茂った草が邪魔だったしね。こういう下準備はしっかりしておくのです!


金金金 : そこで穴を掘るという選択肢になるのが、サクラちゃんらしい。

神奈月 : これ、アドバイスも禁止?

咲夜 : 見守る以上は、サクラちゃんが聞いてこない限り禁止だろうな。

ミナト : サクラちゃん、ある意味ネタバレでもあるんだけど、アドバイス的なのはどう?


「そこも手探りでやりたいので、アドバイスも私から聞かない限りは出来るだけ無しの方向でお願いします!」


 ネタバレもそうだけど、攻略のアドバイスを皆さんに聞いてやってたら初見プレイとは言い難い何かになっちゃうからね!

 どうしても無理って感じに詰まらない限り、極力聞かないのです! そう決意して、すぐに瓦解して色々聞いた気もするけど、今度こそはそうするのだ! 少なくとも今日の配信中は!


神奈月 : 了解っと。

チャガ : ……これはこれで妙な緊迫感はあるな。

咲夜 : なんか、こう、子供の初めてのお使いを見ているような気分。

ミナト : あー、確かにそれは分かるかも!

真実とは何か : そこに真実はあったのか。

ミツルギ : うん、なんか思いっきり納得。

イガイガ : 口出ししたいけど、口出ししたら駄目な感じがそんな感じだよな。


「皆さん、それは失礼じゃないですかねー!?」


 私の初見プレイのどこが子供の初めてのお使いだー!? 合ってるところは初めてってとこだけですよ! まったく、失礼ですね、皆さん!


「ふー、とりあえず穴を掘るのはこれくらいにしましょうか! 後は土の中から石を選別して……そういえばアイテムってありましたけど、石って入手可能なんですか?」


 毎回こうやって石を確保出来る場所ばかりとも限らないから、出来ればアイテムとして持っていたいんだけどね。

 このモンエボには装備はなかったけど、アイテムの項目はあったからアイテムの概念自体はあるはず。そう考えたら、投擲用の石って多分消耗アイテムだよね? よーし、その辺りを試してみるのさー!


「えいや!」


<『小石』を1個獲得しました>


「おー! 小石のアイテム化が出来ました! ほうほう、これでアイテムとして手に入るんですね!」


 メニューからアイテムの項目を開いてみたらしっかりと小石があるよ! うん、投擲用って表示になってるし、こういう使い方を想定してるんだね!

 あ、でも使うたびにわざわざアイテムとして取り出す必要があるのかー。うーん、そこは使い勝手が悪そうだね。


「それじゃ掘った中にあるだけ、小石を確保していきますねー!」


ミツルギ : なぜ、なぜ、小石を呑み込んだ!?

イガイガ : それは……サクラちゃんだからだろうな。

咲夜 : いやまぁ、ライオンの場合はその方が効率は良いけど……。

神奈月 : 小石を次々と食べていくライオン……。

ミナト : あはは! 確かにそれが効率的なんだけど、そこを一番に引き当てるんだ!

チャガ : ……まるで躊躇がないな。


「あれ? 小石を咥える以外にアイテムとして手に入れる方法ってあるんです?」


 そういえばアイテム絡みに関してはチュートリアルはないのかな? うーん、まぁ特殊なアイテムでもなければ使い方なんて大体なんとなくで分かるし、そこはいいや!

 とりあえず皆さんの話を聞きながら、小石の確保を続けよう! これから私の武器になるんだから、これは大事な作業なのですよ!


ミツルギ : サクラちゃん、アイテムの獲得はキャラが触れていれば選択肢が出るんだよ。そこで獲得するを選べば、インベントリに送られる。

チャガ : ライオンの場合なら、一般的には前脚で触れながらだな。

ミナト : 食べる感じで獲得するのは、ある意味裏技なんだよねー! あっ、でも……あちゃー、これはネタバレになるから言えないやつだ。

イガイガ : あー、あれか。うん、そういやそうか。


「この手段って裏技なんですか!? え、触れるだけでいいんです!?」


 えっと、ライオンで小石に触れながら……あ、本当だ! 小石を獲得しますかって確認が出てきた! ここで獲得するを選べば……。


<『小石』を1個獲得しました>


「おぉ、確かにこれでも獲得出来ましたよ!」


 ふむふむ、本来の取得方法はこういう感じなんだ。食べる感じでやった時には確認は出なかったのに……あ、毎回確認が出ないからこその裏技って事!?

 いぇーい! 自力で裏技を発見なのさー! ふっふっふ、私の無自覚は本当に優秀なのですよ!


「何かネタバレになりそうな部分があるようですけど、そこは聞かずに行きます! とりあえず小石が10個もあれば充分でしょうー! それでは、動く木か雑草を探しに出発です!」


 ふっふっふ、戦う用意は出来たのさ! いざ、進化ポイントを手に入れるた為に草原を駆け出していくのです!


ミツルギ : サクラちゃん、頑張れ!

咲夜 : 進化ポイントの獲得とLv上げの開始!

チャガ : そういや、穴を掘る操作って普通に問題なくやってたな?

イガイガ : あ、そういやそうだな。

神奈月 : 何か明確なイメージでもあったのかね?

金金金 : サクラちゃん、その辺どうなん?


「それなら家で飼ってる犬が穴を掘る時のイメージでやってみました! あれですね、実際の動物の動きをイメージするのって有効なんですね!」


 あの穴掘りについては、我ながら良い動きをしていた気はする! あの雑草の葉っぱを叩き落した時も猫が猫じゃらしにじゃれつくイメージで上手く出来たしね。


ミナト : なんというか、妙なとこで最適解をいきなり引き当ててくることにびっくりだねー!

チャガ : 確かにそれは言える。

咲夜 : 実際の動物の動きを参考に、動作に反映させるって上級者がやってる手段の1つだよな。

ミツルギ : まぁそれは一部の上級者って感じにはなるけどなー。

イガイガ : 普通の動物では出来ない挙動も多いから、それだけに頼る訳にもいかないし。

ミナト : うん、そうなるねー。


「へぇ、そうなんですねー!」


 そっか、そっか! 私が犬や猫の動きをイメージして操作した事は、上級者の人がやるようなことだったんだ!

 ふっふっふ、上級者がやることをサラッとやったり、自力で裏技的なアイテムの獲得方法を見つけたり、私って天才じゃないですかねー! すごいぞ、私―!


金金金 : すごいドヤ顔の狐っ娘アバター、可愛いなぁ。

ミツルギ : そういやサクラちゃん、普通に走りながら喋れてるな。

イガイガ : ちゃんと左右に視点も振ってるから、闇雲に走ってる訳でもなさそうだ。

チャガ : コツを掴んだか?

ミナト : うん、見てる感じではそうみたいだね。


「あっ! そういえば普通に意識せずに走れてました!?」


 本当に今のは言われるまで意識せずに普通に出来てたよ! うわー! わー! これって明確にライオンの動かし方に慣れたって事だよね!


「がおー! この調子で頑張りますよー!」


 ふっふっふ、これが自転車に乗れるようになったような感覚という事! 私、自転車は乗れないけど! でも、疑いの余地もなく完全に上達したのは間違いない!


 こうやって草原を走っていたらシマウマとかゾウとかキリンとか色々見えてるけど、探すべきは動く木か雑草! 他は区別がつかないから今は無視だー!

 よーし、テンションも上がってきたし、幼生体の討伐を頑張るぞー! 

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