アンティークの墓標
〈親友の未亡人を軟禁してしまった。罪であると言われれば、私は甘んじてそれを受け容れるし、社会的に断罪されないとしても、この罪は墓場まで持って行くと決めた。私はこれを罪と思う。だからもしも世に知れることがあれば、問われるのは罪の有無よりも、理由の是非であってほしい。信じてほしい。私を駆り立てた激しい感情が、性愛や情欲とは明確に異なることを。〉
黙読したセンセーショナルな告白文は、偶然に天堂の元へ辿り着いてしまった、ある人物の手記である。手記だから事実だとは断定できないが、文中に登場する未亡人その人を待っている今、天堂の中でこの手記は刻一刻と、嘘のように実在性を増し続けている。登場人物が生身で現出すれば、この物語は紛れもない現実と言うほかない。しかしいざその時を迎えたとて、天堂は手記の主の真意を捉える自信はない。もう何度も繰り返し読んだ手記に、再び目を落とした。
〈この世界から河嶋が欠けてしまった。それなのにみっちゃんは残されて、どうしてか私はまだ息をして、あまつさえ河嶋の欠片を握りしめてばかりいる。その歪さがどうしようもなく私を苛んだ。〉
そして手記の時間はおよそ半世紀前へ巻き戻る。
【本文サンプル】結び目ほどき 言端 @koppamyginco
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます