第75話 四天王VSサキ、ユナ(決着)

──サキとユナは、


炸裂弾を使ってプーレの身体を

内側から爆発させる


……という作戦を確認し、身構える。

サキは両手に炸裂弾と短剣を持ち、

ユナの魔法を待つ。


「ふぅ、作戦会議は終わったか?

全く、戦闘中に長々と話などしおって。

……待ちくたびれたわ」


「プーりん、

待っててくれた事には感謝するよ。

ありがとうね!」


「ふん! 戦闘中に敵へ謝意など、

全く不可解な人間だ。

だが、奥の手を隠したまま

やられるのも不敏だろう。


心置きなく諦められるよう、全力を尽くせ。

そしてその先にある

絶望と死を味わうが良い」


「プーレ! お前はさっき、

『並の人間が放つ外側からの攻撃』では

効かないって言ったな!


今から……人間の身体能力だけじゃない、

知恵と技術の力を見せてやる!」


「ほざけ! 知恵や技術と言っても、

せいぜい矢を飛ばす程度の

浅はかなモノだろうが!」


「プーりん!

この攻撃を受けてみれば分かるよ!


理論で威力が増す魔法の力と!

街の人達が一生懸命研究して

作った炸裂弾の力!


私とサキちゃんだけの力じゃない!

皆の知恵と力を合わせて……、

プーりん! あなたを倒す!!」


(……エルレさんっ!

急激な温度変化による物質破壊の応用攻撃!

この大事な局面でも、

理論の力が私を助けてくれそうです!!)


ユナはプーレの右腕に狙いを定め、

魔法を撃つ。


「ブリザード!」


……ゴゴォー!


プーレの右腕が凍りつく……。


「ふん! 何かと思えば、

ただの基本魔法ではないか!?

そんな攻撃は無意味だと

まだ分からぬのかっ!?」


「まだまだ!……ファイア!」


ブリザードで冷えきったプーレの右腕に、

次はファイアを撃ち込む。

プーレの右腕は低温から高温に

急激な温度変化をして

赤茶けた焦げ色になり、脆い状態となった。


(……腕の状態が変わった!? 今だ!)


「サキちゃん! スピード!」


「うおぉー!!」


スピードの効果で素早さが増したサキは

プーレの右腕に短剣を深く突き刺し、

素早く炸裂弾を腕の中に埋め込んだ。


(……ぐぬっ! 腕の感覚が無い!?

何だ!? 何故、再生が遅れるのだ!?)


急激な温度変化によって

激しく破壊されたプーレの右腕の細胞が、

通常よりも遅い速度で再生を始める。


そして、その傷口が

完全に塞がるタイミングを見計らって

ユナが最後の魔法を唱える。


「ファイア!」


ユナの魔法で発生した炎が、

プーレの腕の中に埋め込まれた

炸裂弾に引火する……。


……ドーンッ!!


「ぐはっ!! ば、馬鹿なっ!?」


プーレの右腕の中で爆発した炸裂弾は、

プーレの右腕を吹き飛ばした。

それを見たサキとユナは

喜びながらハイタッチをする。


「やったね! サキちゃん!」


「おう! ユナ! ……上手くいったな!」


(……おのれ!? 何をした!?

俺の腕の中に何かを埋め込んだのか?

身体の内側から爆発したぞ!?


……しかも、

腕の感覚がなくなる魔法攻撃!?

何故だ!?基本魔法を受けただけなのに、

何故、いつもの様に再生しなかった!?)


プーレは腕が吹き飛んだ痛みと

出血で床に膝を付き、苦しみながら言う。


「くっ……。

何をしたのか分からんが、見事だな。

だが、腕の一本失った程度では

俺は倒れぬぞ!


ぐぬぬぬっ……ふんっ!!」


……ズボッ!!


プーレは力を込めると、

失われた右腕が新しく生えて再生した。

……しかし、

肩を動かして呼吸するプーレの様子は

ダメージを受けているのが明らかだ。


「ふぅ……、ふぅ……」


「ええっ!?

無くなった腕まで再生した!?」


「くそっ!

腕まで再生できるのかよっ!?

でも、ユナよく見るんだ」


「うん? どうしたの? サキちゃん?」


「あの様子だと、

プーレは明らかにダメージを負ってる。

ならあとは……、強化型炸裂弾を使って

プーレの両手両足、身体全部を

一気に吹き飛ばすぞ!」


「そっか!

ちょっと可愛そうだけど、

全身吹き飛ばしちゃえば

再生出来ずに終わりだよね!

なら次は、上級魔法でいくよ!


……あれ? でもサキちゃん?

ところで、その強化型炸裂弾って

どれくらいの威力なの?」


「……あ、そういえば詳しく聞いてないな。

8個しか貰わなかったから

試しに使う事もしてないし。


でも『強化型』って言うくらいだ。

きっと普通の炸裂弾より強力だぞ!」


「うん! 分かったよ。

最後の仕上げ! やろう! サキちゃん!」


意を決して構えたサキとユナに

プーレが反撃の猛攻をしかける。


「うおぉぉーー!!

兄貴! 俺に力を貸してくれ!!」


……バチーンッ!!


巨大な槍による攻撃、

翼から羽を飛ばす攻撃、

突進からの格闘による攻撃、


……ババババッ!!


サキとユナはプーレの攻撃を

防御、回避しながら

反撃のタイミングを伺う……。


そして、サキとユナは

プーレの攻撃が止まった瞬間を

見逃さなかった。


ユナはすかさず魔法を唱える。


「これで最後だよ!

マクスブリザード!!」


……ピキーンッ!!


強烈な冷気の上級魔法で

プーレの全身が凍りつく。


「次! マクスファイア!!」


……ゴゴゴゴゴッ!!


超低温に冷えたプーレの身体は、

強烈な炎の上級魔法で焼き尽くされ、

全身がただれたように焼け焦げた。


急激な温度変化を受けたプーレの身体は、

簡単には再生しない。


「グガァーー!!」


強烈な魔法のダメージに

プーレが声をあげて苦しむ……。


「よし! これならいけるね!

サキちゃん! マクススピード!!」


ユナの魔法の効果で

サキの身体は黄金色に輝く。


サキは目にも止まらぬ速さで

プーレの全身に短剣の斬撃を叩き込み、

サキはその深い傷口に

強化型炸裂弾を埋め込んだ。


両手、両足、腹部、

それぞれに合計5個……。


そしてサキはジャンプして

プーレの首にまたがった。


「おい、プーレ!

これは……、スペシャルデザートだ!」


サキはそう言いながら、

声をあげて苦しむプーレの口の中に

強化型炸裂弾を1個放り込み、

ジャンプしてユナの隣に戻ってきた。


強化型炸裂弾を埋め込まれた傷口が

完全に塞がるタイミングを見計らって

ユナが最後の魔法を唱える。


「プーりん、痛くしてごめんね!

あっちでダンちゃんと仲良くしてね!!


……マクスファイア!!」


「ぐぬぬっ!

おのれ! おのれ! 人間どもっ!!」


ユナの上級魔法で発生した炎が

苦しむプーレの全身を覆い、

プーレに埋め込まれた炸裂弾に

引火しようとする……。


……ピカーン!


プーレの身体から複数の閃光が発生し、

次第にプーレの全身が

眩しい光の塊に変わってゆく……。

その全身は少しずつ

膨らんでいく様に見えた。


今にも激しい大爆発を

起こしそうなその様子に、

ユナがサキに不安げに言葉をかける……。


「ね、ねぇ、サキちゃん?

私ね……、今、とっても嫌な予感が

するんだけど……、気のせいかなぁ?」


「あ、ああ……、奇遇だな、ユナ。

アタシも……、嫌な予感しかしてないぞ」


不安な顔を浮かべるサキとユナの前で

プーレの身体は強化型炸裂弾の

同時大爆発を抑え込もうとするが、

サキとユナはヒシヒシと伝わる

身の危険と嫌な予感を感じていた。


「……ちょっ!

ど、どうしようっ!? サキちゃん!?

これってまずいんじゃないの!?」


「……あ、ああ!

やっぱりそうだよなっ!?

逃げろ!……いや、どこかに隠れるんだ!」


「……えぇ!? 何処に!?

この闘技場に逃げる場所や

隠れる場所なんてないよっ!?」


……ゴゴゴゴゴッ


今にも大爆発が起きようとしてる……。


「い、いやぁーーーっ!!」


「どわーーっ! た、助けてくれーーー!

つか、テルアキのバカヤローッ!

どんだけ危険なアイテムを

渡してくれてるんだよっ!!」


「そうだ! サキちゃん!

防御魔法だよ!!」


「それだ! ユナッ!! 早く頼む!!」


「オールプロテクトウォール!!」


涙目のユナが慌てて防御魔法を

唱えるのとほぼ同時に、

プーレの全身に埋め込まれた

強化型炸裂弾は大爆発を起こし、

闘技場を爆風で包んだ。


……ドーーーーーンッ!!


「い、いやぁーーーっ!!」


「ひぃーーーーーーっ!!」


……そして、

ユナとサキを巻き込んだ大爆発と共に、

プーレの身体は消滅し、

その跡には□の柄が付いた鍵が転がった。


「げほっ、げほっ……。

だ、大丈夫サキちゃん?」


「がはっ……。

あ、ああ、何とかな……」


──こうしてユナとサキは、

ススホコリまみれになりながら

□の鍵を手に入れたのであった。


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