第64話ダンジョンコア5
倉庫に入ってきていた窓からの光がなくなってきたので俺は動き出す。
さあ、ダンジョンコアを探しに行こう。
俺は索敵を発動する。
周辺には多くの警備兵が巡回している気配がある、昼間に襲撃があったのだから当然だろう。
結局あの襲撃もどうなったのか知りたいし、ダンジョンコアがどうなったのか・・・。
俺は気配を殺し倉庫から出ると、警備兵の巡回の隙間を縫うように建物の陰や木に隠れて大雑把に気配を探っていく。
城の周りを一通り探った結果、城の上の方に一つダンジョンコアの気配を感知できた。
たぶんこれが古城迷宮のダンジョンコアだろう、だとするともう一つの古い方のダンジョンコアは俺が感知できる範囲外にあるのかもしれない。
城の周りを一周して倉庫に戻ってくると、近くにある裏口の扉が開き料理人と思われる男が荷物を抱えて出ていくのが見えた、あそこから入ろう。
男が荷物をゴミ捨て場だろうか?に向かっていったのを確認し、少し開けっぱなしになっている扉から誰もいないのを確認して忍び込む。
ここが何をする場所なのかはわからないが、ただの裏口へつながっている部屋といったところだろうか、ほとんど何もない。
俺はいくつか置いてある木箱の陰に隠れ、帰ってきた男が立ち去っていくのを待つ。
時間的には夕飯が終わったころだろうか、城の中には多くの気配がせわしなく動いているのがわかる。
もうちょっとここで待機するか、ここならそれほど人も来ないだろう。
それに・・・大きい気配が四つほど動いているのがわかる・・・。
俺の索敵もユニークスキルの影響を受けてなのか若干精度が増している、範囲が少し広くなったのと、気配の強弱がある程度わかるようになったのだ。
この城の中で上から数えて大きい順に四つを考えると、自由の翼以外に考えられない。
昼間も王に続いてきたことから、この城に滞在していると考えるのが普通だろう、昼間の襲撃の件もあるからダンジョンコアをどうにかするまでは護衛につくはずだ。
その中でも気をつけなければいけないのは猫獣人のポレルだ。
獣人の特徴として身体能力が高く、嗅覚、聴覚などの索敵系の能力がデフォルトで高いことが上げられる、そして野生の感というのだろうか、感も鋭い。
その中でも種属にもよるが獣人の男は力が強い傾向があり女は動きが速い傾向がある、一度追跡されたら今の俺では振りきれないかもしれない、慎重に行こう。
焦らずに、周りの気配が落ち着くのを待つ、もう城の中に入っているのだから急ぐ必要はない。
気配が落ち着いた所で俺は動き出す、まずは城の上のほうにあるダンジョンコアを目指してみるか。
気配を探りながら慎重に城の中を歩いていく、警備やメイドさんと合わないように隠れながら進んでいく。
なんでこう城っていうのは一つのところに階段がないんだろうな、侵入者を迷わせるためなのかわからないが、階段を探すのにも一苦労だ。
壁をよじ登って上から侵入した方が早かったかもしれない。
と、城の中心ぐらいにきた時に、普段とは違う気配を一瞬感知する。
これはまさかリースフィア王国に繁栄をもたらした方のダンジョンコアか!?
俺は感知した場所に立ち止まると意識を集中する・・・あった、城の中心部分から下に進んだ所、わかりやすく言うと地下だ。
地下にダンジョンコアらしき気配がある、昼間ダンジョンコアの気配を感じていなければ見落としていたかもしれない。
上に上がっていっても近くに気配が多くいるし、近づけないかもしれない。
地下にあるダンジョンコアの近くに気配はないし、地下に行ってみるか。
まあただどうやっていっていいのかはわからない、今まで歴史に出てこなかったということは簡単には場所がわからないようになっているはずだ。
まずは城の中心部分にある中庭に出てみる。
中庭は中央に噴水があり、花壇があり、綺麗に整えられている。
夜なので人の気配はないが、ところどころ明かりがついているので誰かが窓から見下ろしたりしようものなら簡単に見つかりそうだ。
俺はなるべく明かりのないところを辿って噴水に近づいていく。
隠し階段といったら噴水ってのは定番だよな、何かのスイッチを押すと周りの水が排水されて階段が出てくる的な。
俺は噴水に近づくと周囲を調べ始める・・・何もない。
水の中も澄んでいて見えることは見えるが、何かあるようには思えない。
俺の索敵は気配を感知するだけで、空洞とかがわかるわけじゃないから何とか入り口は自力で探さないといけない。
いやでもよく考えると、何年前かは知らないが大昔のことだからな、もっと年季の入っている外見のところや、もう入り口自体が建物で埋められているなんてこともあるんじゃないのか?
旧リースフィア王の手に渡ってから、それ以降誰も見ていないダンジョンコア。
地下にあることはわかったが、旧リースフィア王は何かしらの理由で地下に設置して、入り口をふさいだ可能性がある。
入り口がないのなら正直どうすることもできない、俺は一度噴水から離れると人が来るのを察知して建物の陰に隠れる。
そっと覗いてみると・・・リースフィア王?もう夜中と言ってもいい時間帯だぞ?
なんで王が城の一階にいるんだ?
リースフィア王はお供を誰もつけず、一階の廊下を歩いて行く。
俺は中庭から中に入ると、離れてリースフィア王の後をついていく、こんな夜中に王が一人で場内を歩きまわるなんて何かあるだろう。
王は王城の中でも人があまり来ない北の方へ向かっていく。
物置だろうか、王城には似つかわしくない木の扉があるところで止まると、周囲を確認してその中に入っていく。
扉が閉まっているので俺は中に入れず、扉の外で中の気配だけを追っていく・・・緩やかだが、下に向かっている?
まさかここに地下への入り口があるのか?
一瞬どうしようか迷ったが、俺は木の扉に近づきそっと押してみる。
音を立てずに扉は開き、中に入るとそこは倉庫になっている。
俺は王の気配が下に向かいだした辺りに行ってみると床に扉があった、ここだろうか?
慎重に木の扉をあけてみるとそこには地下へ通じる緩やかな階段がついている。
どうしようか迷っていると、王が戻ってくる気配があるので俺は床の扉が見えるところに移動して身を隠す。
案の定、王が床にある扉から出てくると、そのまま倉庫を出て行った。
王がある程度離れたのを確認すると俺は床の扉を開けて、中に入っていく。
ここなら明かりをつけても大丈夫だろう。
「ライティング」
何だここは?
明かりが照らし出すのは上下左右とも石で囲われた通路、狭くはあるがダンジョンみたいだ。
これは当たりかな。
期待に胸を膨らませながら通路を進んでいく、若干下へと傾斜しているものの脇道がなく一本道だ。
すぐに行き止まりに着くと、そこには二メートルほどの豪華な両開きの扉があり、扉の向こうには・・・ダンジョンコアの気配がハッキリとある。
まさかこんな簡単に辿り着けるとは思わなかった。
俺は扉に近づき、開けようとするが開かない。
いや微妙に扉に触れることができないのだ、一センチ程度離れた所で手が前に進まない。
これか・・・誰もダンジョンコアを見ることができなかったのはこの結界のせいか・・・。
俺は結界に魔力を通してみる、これはかなり強力な結界だ。
だが俺にはユニークスキルがある!
俺は両手を結界に触れると魔力をコントロールしてみる。
簡単にはいかないな。
一部の制御を奪うことはできるが、そこから離れると元に戻ってしまう。
俺の熟練度が足りないのか、中のダンジョンコアが制御してるのかは判断できないが、中々結界を解除することができない。
解除するのではなく、結界に合わせてみるのはどうだ?
俺は魔力を全身に巡らせると、結界と同じような質に変えていく。
ゆっくりと俺の手は扉に近づいていき、触れることができた。
いい感じだ、この状態を維持しながら俺は力を入れて扉を開いていく。
扉を開きながら前に進むと、プツッという感覚と同時に結界を突破することに成功した。
扉を潜った先には、真っ白い拳大の丸い球が台座に設置されて置かれていた。
ダンジョンコアだ、これでダンジョンコアに接触するという意味のわからないお使いがはたせる。
何ならこのまま持って帰っちゃってもいいぐらいだ、完全に盗賊だけどな。
俺はダンジョンコアに近づくと手を触れてみる。
「・・・?」
特に何もないぞ、まあだと思ったけど。
どうするかな、何もなさすぎて接触した証拠もないし、魔王様もわからないって言ってたし、とりあえずこれで終了か?
念のためちょっと魔力を通してみるかな、出来ることといったら魔力通すか、破壊するか・・・持って帰るぐらい?
魔力を通した瞬間、何かが繋がった気がして慌てて手を離す。
何だ今のは、すっごい変な感じがした・・・
「お前は何者だ?」
俺の頭に声が響いてきたのはその時だった。
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