第71話 他の喜納達と貴志のお別れ会
あえて他の喜納一族には触れていなかった。
正直喜納貴志の姿が思っていたよりマシだったからだ。
「あっちのあーとかうーとか言ってるのは?」
「あぁ、薬を作ったり売ったり無理やり使ったりした奴らね。」
淡々と田宮さんは説明をしてくれる。
「自分らの間抜けさを理解させるためのコトをしたら大人しくなったのは良いんだけど、色々放棄しちゃったみたいです。」
「話が出来たあのクズ男の方がマシかも知れませんね。」
どうやらポーション部門の喜納貴文関連と、それと繋がってた反社の一部らしい。
従姉妹の彼氏という奴らもいるようだ。
これだけの人間が表から消えても問題になっていないのは……
田宮さん怖いという事で納得しようと思う。
「強〇する奴は自分が強〇される覚悟のある者だけだ、と誰かが言ってませんでしたかね。」
同性愛者やおもちゃをつけてよがらせる女性も部下やグループ傘下に存在するため、その人達の捌け口にも使われているらしい。
色々尊厳を奪うために。
最初の見せしめは喜納貴文だったようだ。
執刀は田宮さん自身。
麻酔なしだそうだ。
その時点でも既に、裁判では全て認めるから止めてくれと懇願した者は多くいたらしい。
こいつも喜納貴志と同じようなクズだというのが調べでわかっていたようなので、見せしめとしてはこれ以上ない存在だったと。
泣き叫ぶその姿は滑稽だったと語る。
見せしめの貴文は両方共だった。
片方はホルマリンにつけて会議室に飾ってあると……どうやらいつか聞いた噂は本当のようだった。
もう片方は……聞かない方が良かった。ちょっと後悔している。
他の者達は麻酔アリだったようだけれど、切り裂かれ摘出される様子が撮影され、目を強制的に開けさせられ、その様子を自身で見るように強要されていたという。
これほど嫌なライブ中継はなかっただろう。
そりゃ心も折れるわ。
裁判については少しは目途が立ったのではないかと思う。
「裁判については決まったら別途連絡をいれますね。」
そういえば従姉妹の方を聞きそびれた。
選ばせるとは聞いたけれどどうなったのかまではわからない。
本当に先程語ったどちらかを決行したのかどうか。
直接絡みがない相手であるため、そこまでの事は考えていない。
被害者がいる以上、結果的に罰は受けなければならないけど。
「思っていたような末路ではないかも知れませんが、この国は罪と罰のバランスが取れていませんからね。これでバカな真似をする人が減れば良いのですが。」
「彼らの心にはここでの事が脳裏に焼き付いているでしょうし、そう簡単に再犯したりはしないでしょうけど。
田宮さんの中では判決が出て搾り取ったら普通に刑務所に放り込む考えのようである。
ただし、そこの刑務所も自分の息の掛かったところらしいけれど。
「黄葉様はクソ女の裁判に備えて他はお任せで良いと思います。心の癒しを求めるならば協力は惜しみませんし。」
色々材料を提供してもらったので相互関係を築けたという事で田宮さんは良いらしい。
部下たちの発散、技術経験、人脈拡大等。
ともえの出産まであと1ヶ月と少し。通常通りであれば6月中頃。
その後はあいつの裁判となる。本来こんなにスムーズはいかないのだろう。
田宮さんの影響というのは半端ない。
この辺のご都合主義は正直ありがたい。
俺は帰宅すると一日の疲れを癒すために風呂に入って髪も乾ききる前に寝てしまった。
※ここからはまだ3号だった小澤茜の少し前の話になります。
たっくんと神音と会った日。
その翌日に未美様に懇願した。
先日他の喜納一族に行った事、貴志に対しては自分にやらせて欲しいと。
未美様は1枚のディスクを手渡し、これを何度も勉強しておきなさいと言った。
何度も何度も見てイメージトレーニングをした。
模擬盤を使って練習もさせてもらった。
当日は怒り等で関係ない事をしないよう未美様には注意を受けた。
それをしたら、他の恨みを持つ者達に対して失礼に当たると思うので、そのような事はしない……はず。
ベッドに固定された喜納貴志が喚いている。
あの時、何度も貫いたモノは何だか滑稽に見えた。
「準備は出来てる?」
3号は……茜は喜納に問いかけた。
「くそがっ。お前ぇ……」
「黙れクズ男。お前のせいで私達は苦しんだんだ。お前には報いを受けてもらう。黄葉君の言うように、お前達は法律だけで裁くのには納得がいかない。」
「良いのか?お前……資格もないのに。」
「お前も最初はこうだっただろう?バレなければ良いと。バレたら父親に泣き付けば良いと。」
「動いたら不必要なところまで切れて大変だよ。お前は私の処女を奪う時身体を洗わせてくれなかった。せめてもの情けすらくれなかったお前には麻酔はしない。」
「くそがっふざけんなよっ」
ビシィッと頬を打つ音が響く。
茜が喜納にビンタをした音。
「散々ふざけてきたお前がそれを言うか。」
右手にメスを持っていたために左手でビンタをしていた。
その手は既にニトリルがはめられている。
「じゃぁ、お別れの挨拶はいらないね。」
「まて、や、やめろ……それだけは……」
「お前はやめてと言った女の子に対してやめてあげた事があった?」
それから長い間喜納貴志の叫び声が部屋内に木霊した。
広いこの部屋にいる住人達はその様子を強制的に見せられていた。
喜納貴文の時と同じく麻酔無しのその様子はただの地獄絵図だった。
「とりあえず片方だけで今日は終わらせてあげる。今後素直に認めるモノは認めて謝罪すべき時には謝罪するならば片方は残るかもね?」
終了後、今更のように痛み止めを飲ませる。直ぐに効くわけでもないし気休めにしかならないけど、部屋内にずっと声が響いても煩いだけなので止むなき処置だった。
「茜……今から貴女は3号から自分の名前を名乗る事を赦します。他の社員と同じように働きなさい。嬢を続けたいならそれはそれで構わないけど。」
こうして小澤茜は田宮未美の部下となった。
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