第55話 【俺達をコケにしたクソ野郎どもに天誅を!】
俺は再び前に出る。
階段を昇り壇上へ上がると皆々様の方を向いて一礼する。
「本日は私めの決別式、暴露宴へ忙しい中足を運んでいただきありがとうございました。」
再度深く礼をする。
軽食で歓談していた招待客が壇上へと注目してくれる。
「ちょっとした事で線がずれて、気が付けば二度と重なる事が出来ない程向きも距離も変わってしまいましたが……」
「皆様におかれましては私の二の舞にならないよう、相手の人を大切にしてください。」
「言い合う事やぶつかる事は悪い事ではありません。交わらず、会話がない方が拗れる要因です。」
「良い所も悪い所も見せ合ってこその夫婦だとは言いますけれど、悪が過ぎるとこうなります。」
「きっと裁判を含めて数度はあると思いますけど、今後私とともえが会う事はありません。」
そこでともえの家族が少し悲痛そうな顔をしたのを見逃さない。
「私は最初にお金は要らないと言った前言を撤回し、貰えるものは貰おうと思います。新車が買えるくらいは戻ってこないと、この先の長い人生の蓄えが足りませんからね。」
「それで裁判ですけれど、皆様も参加されたり傍聴されたりする方もいるでしょう。何せ殆どの人が喜納貴志の被害者ですから。」
「喜納貴志がこれから負うべき負債も不幸も、皆様から巻き上げたお金や幸福が元です。これからが戦いの本番だという方もいるでしょう。」
「そんなに長引かせるつもりはありません。とっとと罪に問い、とっとと罰を。」
「殺してくれと懇願してきた時こそ、真のざまぁだと思います。男のくっころには萌えませんがね。」
「我々の倖せを見せつける事こそ、真のざまぁだと思います。」
「喜納グループの皆様はこれから会社が大変だと思います。序盤で自ら降格を決意した兄貴喜氏は立派だと思います。」
「喜納貴志のしてきた事は到底赦されるものではありませんが、貴喜氏には社員の皆様を路頭に迷わせないようお願いします。」
「本来、この後三次会とかあるのでしょうけれど、惨事会になりそうなので私は辞退致します。個人的に話したい事がございましたら招待状に記載の連絡先までお願いします。」
「今回、この式と宴を開くにあたって協力していただいた多くの友人達と新たな友人達と出逢えた事は財産です。」
「ともえも喜納も赦せませんが、友人達との繋がりが出来た事は、強固になったことは救いだと思っております。」
「もう退場したあいつらに直接言う機会はまた別にあるので……今日は最後にこの言葉を言って締めたいと思います。」
【俺達をコケにしたクソ野郎どもに天誅を!】
左手を二の腕に叩きつけ、勢いよく中指をおっ立てた。
見よう見まねで続いて会場の参加者達も中指をおっ立てていた。
両家の親族以外は……
そして右手の親指を下に出し、首の左側から右側へ引いた。
静寂を破ったのはあのお方、田宮さんだった。
あっははははと大きな声で笑うと、会場中から笑い声が響いた。
「あいつらの地獄の本番は……これからだ。」
マイクのスイッチをオフにして俺は呟いた。
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