第37話 喜納は敵しか作っていなかった模様
最初に尋ねたのは弁護士事務所で働く田中秀太。
有名弁護士事務所で働く彼に自分がやろうとしている事の正当性、若しくは違法性を問うために。
「久しぶりだな。といっても成人式で会ってはいるけど。」
田中は都内で働くため、住居も移している。
天城のように簡単に会える存在ではなかった。
どうしても法律関係で話したいことがあると言い、どうにか土曜である今日ならと時間を割いてくれた。
「俺、ともえとまだ籍は入れてないけど婚約はしてる。だけど俺、托卵された。そして数年後俺を悪者に仕立てて慰謝料と養育費を霞め取られるみたい。」
「まぁ落ち着け、言いたい事何となくわかるが、分かり難い。」
田中は俺が落ち着くのを待って、もう一度説明をする。
紅茶は既に空になっていた。そりゃ落ち着くためにがぶ飲みすればな。
「その話が本当だとして、何をどうして欲しいんだ?」
「証拠はある。探偵雇って調べてもらった。」
そして俺は写真と音声を田中に見て聞いてもらった。
「まぁ厳密には盗撮・盗聴になるから何とも言い難いけど。これは酷いな、お前ら高校時代はあんなにラブラブだったのに。」
「会社が忙しくなる6月まではラブラブだったさ。ほら、俺の勤めてる会社、ニュースにも出たけど存続の危機だったからさ。」
「毎日が激務だったんだよ、ストレスで勃起不全にもなるし。確かにあの頃ともえとHしてなかったけど。」
「それだけでこんな事考えるのか?異常だなこの二人。」
新たに注いだ紅茶を口につける。
「まぁ俺の友人達も何人か彼女が喜納の餌食になってるからな。何とかしてやりたい気がないわけではないけど。」
田中は少し渋った顔をするが、内心では俺寄りのようだった。
「お前まで犯罪に手を染めるのは本意ではないんだよ。こんな奴らのせいでお前が捕まるのは見たくない。」
それは田中の本心だった。それだけ、俺を気にかけているということだ。
「あぁ、別に刺したり殴ったりするわけじゃねぇ。こいつらの悪行を、絶対もっとやってるだろう証拠を集めて……」
「偽りの結婚式で盛大にバラしてやろうと思うんだけど。どうだろうか。」
「それ、普通に結婚式に来てくれる人に失礼じゃないか?」
田中の言う事はもっともだ。結婚式は本来祝いの場だ、呪いの場ではない。
「だから呼ぶ人間は喜納に恨みを持つものに集中しようと思う。恐らくだけど、喜納が勤める会社内にも被害にあった人はいるんじゃないかと思う。」
「高校時代、処女100人制覇とか言っていた奴だ。それが達成されれば次の目標を立てて実行していても不思議はない。」
「確かにな。で、黄葉。お前の会社の人間はどうするよ。お前の会社の人間の中に被害にあってる人いると思うか?」
「ゼロではないだろうけど限りなくゼロだろうな。だから限られた人数しか呼ばない。場合によっては事情を先に説明する。」
「普通の結婚式だと思ってるのはともえと喜納と俺達の家族だけってのが理想だ。会場側も出来れば味方で埋めたい。」
流石にそこまでホームになるとは思えないけれど、一人でも多く味方で埋めておきたいのは本音だ。
「喜納達が何をでっちあげようとしているかはわからないけど、喜納達がやってる事は普通に訴訟を起こせばお前達が勝つぞ。」
「……そういう問題でも次元でもないんだ。クズ男の喜納はまぁそのままむかつくが。ともえは違う。」
「俺とともえは生まれた時から……新生児室からの幼馴染なんだ。それをこうも簡単になかった事にするなんて……」
「神や悪魔が赦しても、俺は赦さない。業務用巨大シュレッダーに突っ込まれて死んだ方がマシだと思える程の苦痛と恐怖を味わってもらいたい。」
「だけど、それでお前が犯罪者になったら意味はないぞ。」
「だから結婚式で暴露するんだよ。俺は今仲間を集めてる。喜納に恨みを持つ仲間を。」
まだ雛形しか思いついていない結婚式と披露宴で行う暴露話を田中に話した。
田中はまた小難しそうな顔をして、紅茶を煽った。
「はー。まぁやること自体はスレスレだな。会場を結婚式・披露宴という名前だけ同じなイベントとして捉えるなら可能か。」
「数人の関係のない人には申し訳ないが……アイツらの悪行を暴露して絶縁状を叩きつける。」
特に参加する家族の子供なんかには本当に申し訳ない。
ともえの両親や悠子ちゃんにも申し訳ないけど……涙を呑んでもらう。
「法律家として俺は参加出来ないだろう。薦める事も出来ない。グレーではあるが、犯罪に手を染めないようにしろよ。」
「あぁ。グレーであれば良い。それにあんな奴らのために犯罪に手を染めるのは俺も御免被る。今日は色々聞いてくれてありがとうよ。」
田中との再会を後にして俺は帰路に就く。
そのまま非番だった山本の元に向かった。
「おー、直接会うのは久しぶりぶりだなー。どうだー元気にヤってるかー?」
この明るくて下品なのがかの山本である。
「あ、元気はあまりないし、ヤってもねーよ。」
そこで突然山本が真面目な顔になる。
山本には数日前に一度電話で事のあらましを話してあった。
「田中に話を聞いてもらってきた。グレーゾーンだってな。それ以前に訴訟起こせば完全勝利するとまで言われたけどな。」
「そうか。でもなーうーん。電話だといまいち掴めなかったけど、こうして直接会うと本当なんだなって思ってしまうわ。」
「そんなに顔に出てるか?」
「ババ抜きで
山本は別に関西の人間ではない。元戦闘民族足立区民ではあるが。
「田中とは別の視点で法の穴というか、警察の目から見て俺がやろうとしている事は逮捕案件か?」
「現状はセーフだろ。損得もないし。やり過ぎて逆に侮辱罪だとか喚かれない限りはセーフだろ。あぁ当日殴ったり蹴ったり張っ倒したりしなければな。」
「あぁ、暴力はしないさ。追い詰めるのに言葉の暴力は使うだろうけど。」
俺は当日の一部始終を録画する予定でいる。
後日いちゃもんをつけられた時用の保険みたいなものだけど。
「一応さ、山本にも田中にも招待状は送る。いざという時のストッパー的な意味も含めて、お前達には見守っていてもらいたい。」
山本は分かった、考えとくと行って帰っていった。
その翌日は高橋と会い、同じように説明をする。
最初は信じられないと言っていたが、写真と音声を聞かせると協力的になってくれた。
高橋もまた、当時付き合い始めの彼女を喜納に喰われている。
付き合い初めたばかりなのに他の男に股を開く女とは付き合えないと、そのまま普通に別れているけど。
それでも面白いわけがない。喜納に捨てられた元彼女に壮絶な拒否を示した。
ある意味ではざまぁをしていた。
噂では卒業後夜の街で働いているそうだけれど。
「あいつの話はするなよ。俺達はアレ以来赤の他人だ。ある意味では俺はお前の先輩だぞ。幼馴染ざまぁ先輩。」
高橋と元彼女小澤茜。
幼少の頃からの幼馴染で、高2の時にようやく恋人としてスタートするものの1週間で喜納の餌食になる。
それ以来高橋は小澤を股ゆるビッチと思う事になり、小澤が喜納に捨てられた後に謝罪にきたものの一刀両断。
二度と付きまとうなと絶縁状を叩きつけた。
それでも食い下がる小澤を鬱陶しく感じ、小澤の両親に全てを打ち明け見事ざまぁを果たす。
そんな過去のある高橋がこの話に乗らないはずかない。
そして味方に引き入れる事が出来たならば、演劇部で培った演技力で見事司会を務めてもらいたい。
「いいよ。大筋だけ決めて、後はアドリブでやらせてくれるなら。」
ちょろいヒーロー、略してチョロロー?
簡単に3人が味方についた。
後は会場関係での味方が欲しい。
帰宅すると、携帯にメールが届いていた事に気付いた。
「何人かの連絡先……というか所在を掴みました。名前と所在を送信します。」
という大次郎さんからのメールだった。
〇〇ホテル勤務、〇〇プランナー勤務、〇〇音響機器勤務……
その中には件の小澤の名前も記載されていた。
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後書きです。
ざっくり新キャラ盛り込み味方を取り入れていきます。
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