第15話 冒険譚


それからも、いつものように薬草採取を続けながら、湖で水魔法訓練を続けるサラ。


毎日ではないがときどきハリーとリリーの兄妹と湖畔で一緒になることもあり、それぞれ仕事や訓練をしながら交友を深めるようになった。サラの発言もほんの少しずつ増えて行った。兄妹の圧倒的な勢いに押されながらではあるが。


兄妹の話題の多くは、実家の宿に泊まった冒険者から聞いた活動内容や、昔の英雄の冒険譚であり、いかに早く冒険者として成長、成功をしたいかという話であった。


ドラゴンなど大型魔物を退治したり、古代遺跡を発見し中に巣食う魔物を退治しながら宝物を得たりする英雄の話。彼ら彼女らは強大な力を持ち、巨大な岩山を剣で切り裂いたり、何百もの魔物を一人で撃退したり、嵐を呼び竜巻や雷で敵を攻撃する魔法を使えたり、空を自由に飛べたり、どこまで本当にあった話か分からないぐらいワクワクさせられる物語である。

古代遺跡から魔導書を入手して強力な魔法が使えるようになる、召喚魔法で強力な精霊や悪魔を駆使するなど、魔法に関する夢も膨らむ。


一方、宿に泊まった冒険者の話も、見習い冒険者の三人にしてみたら夢のような話である。魔の森での魔物退治、商隊の護衛での魔物や盗賊の撃退などの話、領都よりもっと大きなお城があり広く賑わっている王都に訪れたときの話、外国の変わった習慣の話などなど。

サラが非常に興味を示して聞くため、ハリーとリリーも自分たちが聞いてきた話を嬉々として伝える。サラは、師匠も冒険者だったのにその頃の話はあまり聞けていないため、興味津々であった。


これらの話により、サラも漠然としていた魔女へのあこがれが、冒険者としての魔女への希望度合いが高められていくことになった。


自然と魔法訓練にも熱が入り、最初は移動させようとするとすぐに集中が途切れて落ちてしまった水が、ゆっくりではあるが5mほど離れたところまで届かせられるようになった。また生成できる量が親指1本ぐらいから指3本ぐらいまで増えた。

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