315 俺はきみの騎士①

「わかる。玄孫ってひ孫の子どもだろ。当主ほんと何歳だよ」

「そうじゃなくて! いや、そっちも驚きだけど。キラボシさんってレッドベア本家の令嬢? まさか正当な跡取り?」

「実力的にその可能性は大だな。こんな場であいさつするくらいだし。言ってなかったっけ?」


 ヨワは勢いよく首を横に振って、すっかり萎縮した目で壇上のキラボシを見ている。リンからすれば、なにビビってるんだか、である。あっちが名家の跡取り令嬢ならこっちは王族の姫君だ。

 その事実はこれからも隠され、陽の目を見ることはないのだろうけれど、ヨワはもう少し威張ってもいい。なにせ肩書きを抜きにしても、ヨワは救世の魔法使いだ。飛び立とうと思えばどこまでも高い空へ昇れる。

 リンは唐突に、隣の存在を確かめたくなってヨワの手を握った。


「失われたものは多く、けして戻りません」


 脚光を浴びるキラボシは足元の濃い紫から白へグラデーションに染まるスパンコールドレス姿だ。彼女が小さく体を揺らすだけで、流れ星のようにきらきら輝く。


「だけど私たちの手を待っている人々が未だ多くいます。立ち止まっている時間はありません。ひとつでも多くの命を救うのです。影ながら支えてくれた庭番の方々が繋いでくれた命を、私たちが未来へ。目の前のこと、ひとつひとつを乗り越えていきましょう。そうすればこの未曾有の傷も、きっと癒すことができます」


 会場からわっと拍手が起こった。ていねいにお辞儀をしたキラボシが裾に下がるまで、リンもヨワも拍手をやめなかった。庭番の活躍に触れてくれたことがうれしかった。思えば庭番にはレッドベア家の者が数人関わっていたのだから当然かもしれないが、リンはヨワの功績が認められた気持ちになって誇らしかった。

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