303 お迎え②
「もう私を狙う人なんていないよ」
「そうだな」
外への通路に繋がる扉前で振り返ったヨワに、ススタケは微笑み返した。
その時、扉が勢いよく開いて息を切らしたリンが現れた。
「リン?」
ただごとではない様子に驚きながら近寄ったヨワの腕を、リンは強く掴んだ。痛みを感じるほどだった。ヨワはそのまま扉の中に引きずり込まれた。壁に押しつけるようにして、腕の中に閉じ込められる。
「昨日帰ったらヨワいなかった。クチバが伝言聞いて飛び出していったって言うから、城に戻った。でもヨワいなかった」
ヨワの肩に顔を埋めてリンの腕はいっそう強く締めつける。声はいつもより低くヨワの耳に響いた。
「ごめん、なさい。医務室に行く途中でススタケさんと、会って……庭番にいたの」
ヨワはとっさに嘘をついた。キラボシに昨夜のリンを譲ってしまった自分を認められなかった。
リンはなにも言わず力を弱めた。まっすぐな眼差しでヨワを見つめる。彼の表情は怒ってはいなかった。だが、ほころんでもいない。責めているようにも、なにかを探っているようにも感じる視線に心まで見透かされる。
広間の扉が開いた。ススタケの大きな体がぬっと現れてリンの背後に立った。だがリンは気づいていない。
ススタケが静かに拳を振りかぶった。
「あの、リン」
ヨワが注意しようとした直後、固く握り締められた隕石がリンの脳天に落下した。
「父親の目の前で娘をさらうとはいい度胸だなあ?」
指を鳴らして次は流星群でも降らせそうなススタケを前に、リンは痛みでうずくまり身悶えた。ヨワは血管が浮き出るほど力んでいるススタケの手を押さえて、リンをかばった。
「私が悪いの。書き置きもせずに来ちゃったから。リンは心配してくれたの」
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