223 特訓した秘技②

 シオサイが叫んだ。ヨワはつい怖がった自分に気づいた。スピードを落とすのはかえって遠心力に負けて振り飛ばされる危険を高める。ヨワはいっそうスピードを増して、シオサイが調整する微細な傾きを感じながら重心の強さを変化させていった。

 なんとかカーブを曲がりきった時スオウ王とススドイ大臣との距離は縮んでいた。いける! 確信を得たヨワはシオサイに低く構えるよう言って自分も腰を落とし思いきり魔力を練り上げた。

 その時どこからか子どものような歓声が聞こえた気がした。

 水しぶきを上げて加速する。この瞬間は何度でも興奮した。ヨワとシオサイは帆役のスオウ王の後ろにぴたりと張りついた。


「こら! 王であるわしを風よけにするとはけしからんぞ!」


 スピードを上げたスオウ王にヨワは負けじとついていく。そこへうなり上げてリンとススタケが追い上げてきた。


「おらおらー! 俺の魔力なめんなよ!」

「げ。あの魔力バカ」


 ススドイ大臣の悪態が聞こえてヨワは思わず笑った。そういえば兄弟の中で一番魔力が高いのは自分だとススタケは言っていた。となると、単純に考えればススタケはスオウ王を抜かすことができる計算だ。ヨワは前方のゾオを捉えた。

 彼とはまだボード五枚分ほどの距離がある。ここで牽制し合っているとゾオが難なく一位を勝ち取るだろう。ヨワの中でにわかにこっそり練習してきた秘技でプロレーサーを驚かせたい気持ちが湧き上がった。

 ヨワは北側から南へ二回目のカーブが近づいてきたタイミングでさらに一段階魔力を高めた。さすがに息が上がった。ボードが不安定になり少しでも気をゆるめたら転倒しそうだった。この速度は長く保てない。だがカーブまでもてばいい。

 ゾオがカーブに入った。その瞬間ヨワは彼の後ろに迫った。

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