218 かわいい鎧②
「ユカシイ、わたし……がんばるから見ててね」
「ヨワー!」
幼い声に呼ばれて振り返るとユンデがぴょこぴょこと跳ねていた。母親のウララがその手をしっかり繋ぎ会釈する。後ろにはオシャマとスサビ、リンの姿もあった。ここに来るまでにみんな合流したようだ。通路に出たところでユンデが飛びついてきた。
「ヨワ、レース出るんでしょ。僕応援するからね。一位になってね」
「ありがとうユンデ。お母さんと見に来てくれたんだね」
「うん。本当はパパも来るって言ってたんだけど夏バテなんだって」
ユンデの家の前で一度だけ会ったジャノメの細い体つきを思い出して、ヨワは確かに彼は夏が苦手そうだと苦笑を浮かべた。
「私たちもヨワちゃんとリンを応援するわ。見て! パッチワークで旗を作ったの」
「うちわもありまーす」
オシャマは大きなトートバッグから取り出した布を広げた。それはクリーム色の布に色とりどりの柄が入った生地で“必勝! リン・ヨワ”と文字が描かれていた。スサビが両手に持ったうちわにはひとつに一文字ずつ“リン”と書かれ、裏返すと“ヨワ”になる手の込みようだ。
から笑いを上げながら礼を言ったヨワの目があるものを見つけてぎょっとした。旗の“リン・ヨワ”の“・”がハート形になっているではないか。
「それじゃそろそろ橋に行くか、ヨワ」
レース参加者ははじめに橋の上で紹介される。うながそうと近づいてきたリンから旗の文字が見えないようにヨワは体で隠した。これは恥ずかし過ぎる。かと言ってオシャマの厚意にケチをつけるまねはしたくない。知らぬが仏だ。ヨワも見なかったことにした。
「お。今日のヨワなんだかかっこいいじゃん」
そう言うリンも黒のタンクトップに白のハーフパンツと、普段の騎士の装備から解放されてとても身軽そうだった。それでも鍛えられた二の腕やふくらはぎがかえって目立ち、けして貧相には見えない。
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