208 親子で力を合わせて①

 汗で湿疹が悪化したらまた薬をぬればいい。かゆみと視覚から受ける苦痛をてんびんにかけてもやりたいと思ったのはこれがはじめてだった。




 一般参加者向けの練習が毎週末おこなわれるというので、ヨワはリンといっしょに集合場所である南門の橋のたもとに通うことになった。

 話せばユカシイはまた不満がると思ったが、観戦はともかく選手としてレースに出場することには興味ないと言った。どうも日焼けするのが嫌らしい。応援ならはりきってやるわ、と送り出されたヨワは苦笑った。リンも出場するのだからオシャマが大人しくしているわけがないと思ったのだ。竜鱗病のことばかり気にしていたがなかなかに大胆で恥ずかしい決断をしたかもしれない。

 練習には元プロのボードレーサーでコリコ国の代表にもなったことがある男性がコーチとしてついた。彼はまずエキシビションマッチ専用のルール説明からはじめた。

 エキシビションマッチは湖一周のタイムを競う。コースは百メートルまでセパレートでそのあとオープンレーンとなる。その境界に引かれたブレイクラインを越えるとライバルへの妨害が認められる。魔法も使用可能だ。しかし安全を考慮して魔法の発動は一度につき二秒、ひとレース二回までの制限が設けられる。魔法以外の妨害は原則道具を使うことは禁止だ。

 といっても勝敗よりも楽しむことを目的としているエキシビションマッチでは、毎年なにが起こるかわからない。十分気をつけること。

 そう言ってルール説明を締めくくったコーチにヨワは感心の声をもらした。


「水上ボードレースってそんな競技だったんだ」

「お前そんなことも知らないで参加決めたのかよ」

「いやあ。俺も初耳だったわ」

「ススタケさんはなんとなくそうだろうと思ってましたよ」

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