202 ずっと忘れない④
「僕は子どもだけど、ちゃんとヨワが好きだよ。大人になっても好きだよ。どうして僕じゃダメなの?」
「ユンデ、私には」
王の命令である世継ぎの問題を話そうとした。しかしそれは建前でしかないと気づいた。ユンデの気持ちに応えられないのはヨワの心が違う人を求めているからだ。
「……他に好きな人がいるの。ずっと竜鱗病の自分を恥ずかしいと思ってたから、こんなこと口にするのもバカらしかった。だけど今やっと素直に受け入れることができた」
「それは誰なの」
問いかけながらユンデは聞きたくないというようにヨワの胸元に額を寄せた。もう何度も波はユンデの足に触れている。ヨワはユンデにも魔法をかけて波たちも届かない暖かな砂浜に降り立った。
その際、想い人の名前を吐息に乗せてそっとユンデの耳に吹き込めた。幼子が母にすがるようにユンデはヨワを抱き締めてしばらく動かなかった。
ヨワは波音に身をゆだね、はじめて自分に愛を告げてくれたこの人のことをずっと覚えていようと目を閉じた。
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