64 下山①

 それからヨワたちはダゲンから留守中のことを聞いた。

 伝書ハトの知らせを受けてコリコ国から五人の騎士が来たそうだ。彼らはふたりの見張りを山小屋に置いて、周辺を見回りした。しかし怪しい人影も痕跡も見つからなかった。

 騎士はカカペト山中と、ふもとの町の警備を強化するとダゲンに伝え、ヨワたちが捕らえた盗賊たちを連れて下山していったそうだ。


「あたしたちは明日下山しちゃうけど、ダゲンさんはどうするんですか」


 ユカシイは心配そうにダゲンを見つめた。


「今ここに留まるのは得策じゃないだろうなあ。いったん山を下りることにするよ」


 それを聞いてユカシイは弾んだ声を上げた。


「じゃあ明日いっしょに下りましょうよ」

「実はそのつもりで準備していた」


 ダゲンといつもより長くいられることに喜び、振り返ったユカシイとヨワはハイタッチした。そこへ突然、ロハ先生が大声を上げてイスから立ち上がった。


「あそこには貴重なクリスタルの実があるって王様に伝えなくちゃ。ダゲン、ちょっと伝書ハト貸して!」


 ロハ先生はダゲンの返事を聞く前に、ハト小屋がある二階へ駆け上っていった。その姿を見送ったダゲンは、神妙な面持ちであごに手をやった。しばし考えたあと、リンに目を向けて口を開く。


「貴重なクリスタルがあると知ったら、王はあの洞窟に騎士を配備するよな」

「おそらく。それがなにか」

「そしたらこの山小屋は詰所にぴったりだ」


 ヨワはふとダゲンの言わんとしていることに気づいた。


「もしかしてダゲンさん、騎士といっしょに山小屋に残るつもりです?」


 山小屋の主はにやりと笑った。とたんユカシイが不満の声を上げる。


「なんだ。きみもクリスタルに興味を持っていたのか」


 バナードが意外そうに言った。ダゲンは後頭部を掻き、あいまいに笑みをもらす。

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