32 大農園家バナード・ロード②
すでに学者仲間と何度も訪れたことのあるカカペト山への行き方も、仲間について歩いていただけのロハ先生はおぼろげにしか辿ることができなかった。
その時ロハ先生が声をかけた農家というのが、バナード・ロードだった。
頭頂部が薄くなった白茶の髪、黄色い目、くっきりとタンクトップ焼けした肌に、あご先の筆のようなひげが印象的な農夫だった。最初、ひとりでぽつんと草むしりをしていた彼を、バナードだとは誰も気づかなかった。
バナードは親切に道を教えてくれた。だが、こんな田舎道でも不安そうなロハ先生に心配になったのか、山道はだいじょうぶだろうなと聞いた。
先生はなにも言えなかった。するとバナードはなんと、すぐにも支度して、八合目までの案内を買って出てくれた。以来、バナードの希望もあって、山登りには毎回同行するようになった。
ヨワとユカシイとしても、バナードの心遣いは大変ありがたかった。
「やあ先生。日づけを間違えたかとヒヤヒヤして待っていたところだよ」
ロード農園と書かれた大きなアーチの下で待っていたバナードは、そう言ってロハ先生をにらみつけた。先生が慌てて謝ると、大農園の主はパッと表情をゆるめて「冗談だよ」と快活に笑う。
「ヨワ、ユカシイ、久しぶりだな。元気そうでなにより。そちらの男性ははじましてだったかな」
そう言って自己紹介しようとしたバナードを、リンはやんわりと遮った。
「あなたのことは存じています、ロードさん。いつも城に、新鮮でおいしい野菜を届けてくださりありがとうございます」
「おや、きみは城で働いているのかね」
「騎士です。あなたの野菜は騎士たちの間でもとても評判です。トマト嫌いな王も、あなたの農園でとれたものなら食べると聞きました」
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