27 お昼ごはん①
コリコの樹の根っこの隙間を埋めるように、小さな家がごちゃごちゃと連なる城下町とは打って異なり、野外区は遠目から見ても立派だとわかる家がぽつりぽつりと建っている。
そのおだやかさは、人々の人柄にもよく表れていた。
途中、道端でキャベツの余分な葉っぱを取り除いていた農家の男性は、ロハ先生に向かって気さくにあいさつした。その農家と会うのはまだ二回目だったはずだが、彼は一行が鉱物観察のためにカカペト山へ行くことを覚えていた。
先生が驚くと農家の男性は、
「ひと月毎に来る時期をみんな覚えているから、その日が近づいてくると話題になるんだ」
と話した。
少し照れくさかったが、ヨワは胸が温かくなるのを感じた。
「そうそう。パン屋のケビンが首を長くして待っているよ」
別れ際にそう教えてもらった通り、ケビンズベーカリーの店主ケビンは、ヨワたちが昼頃店に着くと熱烈に歓迎してきた。ロハ先生とヨワには軽く握手をし、ユカシイの手は両手でしっかりと握り締めてなかなか離そうとしなかった。
ケビンのパン屋がある場所は、ちょうど城下町とカカペト山のまんなかに位置している。登山者が多く立ち寄る、野外区で一番大きな町だった。
ケビンは毎回頼んでもいないのに、ヨワたちを店に誘って新鮮な野菜が自慢のオリジナルサンドをごちそうしてくれた。それもこれも、お気に入りのユカシイ目当てだった。
ユカシイが引きつった笑みを浮かべながらも、ケビンのまるい手を振り払わないのは、ここのオリジナルサンドが本当においしいからだ。
たっぷり挟んだチキンに、にんじんのソースが最高によく合う。お金を出したらひとつ四五〇ヒラン。愛想よくしているだけでタダになるならやらない手はないでしょ、と言ったのはユカシイ本人だ。
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