第323話 専門家の活躍
流れが悪くなっていたゴブリン軍団討伐戦は、救援に来たタウロ達王都の冒険者一行の攻勢で流れが変わりつつあった。
一流を証明するB-ランクのチーム『銀の小鬼狩り』がその流れの中心であり、そのサポートとしてCランクチーム、タウロ達を含むDランク帯チームが続く。
だが、ダントン子爵領の領兵やその支部の冒険者達はそう単純に続くわけにはいかなかった。
連日のゴブリン軍団との睨み合い、そして一度敗戦を喫していたので疲労困憊であったのだ。
「味方が思った以上に疲れていて動けないみたいだね」
タウロは『銀の小鬼狩り』に続く一団の最後尾で味方を支援していたので、後方から続いてこないダントン子爵勢を冷静に見極めた。
「この数を相手に数日粘っただけでも十分だ」
タウロ、エアリスの右に展開するアンクが、横から襲ってくるゴブリンを、大魔剣の風魔法を宿した飛ぶ斬撃で一度に数体切り捨てながら答える。
「私達だけでゴブリン将軍を討てば後は雑魚ばかり、大丈夫さ!」
左に展開しているラグーネが、土魔法を宿した魔槍でゴブリンを薙ぎ払うと、その後に続いて地面から伸びた岩の槍が一帯のゴブリンを襲う。
「じゃあ、私はゴブリン将軍が居そうな場所のホブゴブリンの集団に、手加減無しの魔法を叩き込むわね」
エアリスはそう答えて、黒檀の杖を天に掲げる。
そして、雷魔法を詠唱すると特大の雷撃が一帯のゴブリン達を襲った。
「みんな本気出し過ぎだよ」
タウロは苦笑いすると、自身もこの数か月の間に編み出した技を披露する事にした。
タウロはアルテミスの弓を、矢を番えずに引き絞るとそこに光の矢が現れる。
それをゴブリン達の上空に向かって放つと、頭上でその光の矢が弾けて、無数の小さい矢となって地上に降り注ぐのだ。
それがゴブリン達を襲う。
この『黒金の翼』の後方支援は、敵味方両方から大いに驚かれた。
敵であるゴブリン達はこの助っ人冒険者達の驚異的な攻撃に逃げ惑い、後方のダントン子爵勢からは歓声が上がる。
王都組の味方も、面目躍如中の『銀の小鬼狩り』以外も勢いに乗り、奮戦した。
ゴブリン軍団に突撃した王都組は、勢いそのままにゴブリン将軍が居ると思われる中央付近に辿り着く。
「はぁはぁ。──よし、居たぞ!俺達、『銀の小鬼狩り』の真の見せ場だ!」
『銀の小鬼狩り』のリーダー・ハルクは最初から飛ばし過ぎて息が上がっていたが、呼吸を整えると仲間と一緒にゴブリン将軍との戦闘に突入した。
なので、決着が着くまでの間、取り巻きのホブゴブリンや、ゴブリンの邪魔が入らない様にタウロ達サポート組が周囲を牽制し、時には一掃する。
序盤から飛ばし過ぎた『銀の小鬼狩り』はまたすぐに息が上がり、ゴブリン将軍と接戦であったが、タウロ達サポート組のおかげで、邪魔に入られる事無く、ついにゴブリン将軍を討伐するのであった。
「……はぁはぁ。よし!……ゴブリン将軍を討ち取ったぞー!」
息も絶え絶えのハルクがゴブリン将軍の首級を掲げると、ここぞとばかりに勝利宣言をする。
だが、肝心のゴブリン達に逃げ出す気配がない。
有象無象のゴブリン達が、指導者を失って怯まないわけがないのだが……。
「どうなってやがる!?」
「ゴブリンどもの攻勢が止まらないぞ!?」
「うちの魔法使い、もう魔力が底尽きちまうぞ!」
王都組の面々が、動揺して声を上げる。
タウロは、はっとすると、ゴブリン軍団の後方に『気配察知』を研ぎ澄まして向けた。
沢山の気配があってほとんど役に立たなくなっていたが、その沢山の気配の中にあって、ひと際強い気配を感じる事ができた。
「後方に何かいるよ!」
タウロが、エアリス達に警告した。
その言葉に、息切れの『銀の小鬼狩り』をはじめとする王都組が視線を送る。
するとあちらも自分の存在に気付かれたと感じたのか、ホブゴブリン達をかき分けて一匹のホブゴブリンよりも頭一つ大きなゴブリンが現れた。
「ゴ、ゴブリンキング!?」
荒い息を吐きながら、『銀の小鬼狩り』のリーダー・ハルクの口からBランク帯討伐対象である魔物の名前が飛び出した。
「ゴブリンキングか……!で、でも、こっちにはB-ランクの『銀の小鬼狩り』がいるから大丈夫だよな?」
味方の一人が、楽観的な言葉を口にした。
「はぁはぁ、馬鹿野郎……!俺達はゴブリン将軍戦で力を出し切って限界なんだよ!まして、俺達はまだ、B-ランクには成り立てで、ゴブリンキングなんて相手にした事無いんだ……!」
リーダー・ハルクが顔を青ざめさせて、絶望的な事を口にした。
「……エアリス、アンク、ラグーネ!僕達が前に出るよ!」
そのハルクの絶望的な発言を打ち消すかの様にタウロが大きな声でみんなに声をかけると前に出る。
味方は敵中にあって、ハルクの言葉に呆然としていたが、Dランクであるタウロ達『黒金の翼』が前に出たので、我に返ってゴブリン達に対した。
その間にタウロは、ゴブリンキングに対して、光の矢を放った。
光の矢は猛然とゴブリン王に真っ直ぐ飛んでいく。
その間にホブゴブリンが居たが、矢はそれを貫通してその先に居たゴブリン王の左肩に突き刺さった。
「グオオオオオオオオオオ!」
痛みを感じたのかそれとも、タウロの攻撃が届いた事への怒りなのか、それとも味方への叱咤なのかゴブリン王は咆哮を上げた。
すると止まっていたゴブリン達が一斉にタウロ達、王都組に向かってきた。
どうやらゴブリンキングは王都組のタウロ達を仕留めれば勝ちと判断した様であった。
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