第307話 黒金の翼復活
ラグーネの『次元回廊』と、タウロの『空間転移』を使った移動で、チーム全員が竜人族の村のドラゴ、ラグーネの兄妹邸を訪れるのは久し振りの事であった。
そんな久し振りの感慨にふける間もなく、早速、外からの複数の侵入者にまた守備隊が反応して、ドラゴ、ラグーネの兄妹邸に駆けつけていた。
「タウロ殿かとは思いましたが、一応複数の反応があったので確認に来ました。タウロ殿の連れのみなさん、村への再来、歓迎します」
隊長はそう言うと、守備隊を率いて仕事に戻って行った。
「それじゃあ、僕に付いてくれている護衛チームと合流してからダンジョンに向かおうか」
タウロは、慣れたもので、みんなを先導する。
「ダンジョンか……。国の騎士団や、一流冒険者でも入れるのはごく一部と聞くから、これは楽しみだ」
アンクが思った以上に珍しくウキウキしているのがわかった。
「もしかしてアンク。ダンジョンに潜りたくて付いてくるって言ったの?」
タウロが来る前の挙動を思い出してアンクを問い詰める。
「……ダンジョンと言ったら、ガキでも知ってる伝説やお伽話の宝庫だからな。傭兵をずっとやっていた俺でも色んな意味で行ってみたいと思っていたよ。こんな経験滅多に出来ないからリーダーに付いていくしかないだろう!」
アンクは開き直る様に簡単に自供した。
「意外に子供っぽいところあったんだね」
タウロはアンクに呆れたが、まあ、スライム層と『休憩室』の移動だけでも、十分、初体験には刺激的だろうと、考えると冒険者ギルドに向かうのであった。
冒険者ギルド竜人族の村支部前──
そこにはどこから聞きつけたのか護衛チーム隊長のツグムを含むメンバーが集合していた。
「お帰りなさいタウロ殿。守備隊から聞いて駆け付けました。早速、サラマンさんとサラーンを迎えに行くんですね?そして、お仲間のみなさんも一緒という事でしょうか?」
隊長ツグムが察しよく聞く。
「すみません。みんながダンジョンに付いて来たいというので連れてきました。あはは……」
タウロも護衛して貰っている手前、申し訳なくなった。
「今日は送迎だけでしょう?それなら問題無いかと。緊急事態も我々が付いてますし。何よりみなさん、それなりに腕には自信がありそうだ。ラグーネも見ない内に腕を上げてそうですね」
ツグムはラグーネを知っているのか笑顔で答えた。
「それではギルドで手続きを済ませたら、すぐ、向かいましょう」
タウロはすんなりOKが出たのでほっとするとギルドで早速手続きを済ませて、ダンジョンに向かうのであった。
行く道中、護衛チームのメンバーとラグーネはタウロから貰った盾の自慢話をしていた。
「ラグーネ!その盾、もしかして『竜騎士武具屋』製の一点物である『鏡面魔亀製長方盾』か!」
「ふふふ。これはうちのタウロがさらにそれを改造してくれた一品なのだ!」
ラグーネがまだダンジョンでもないのに、わざわざマジック収納から盾を取り出して背負ったので不思議に思っていたのだが、同族のみんなに自慢したかったのが、ようやくわかるタウロであった。
「くそー。道理でお店に行ったら無くなってたわけだ!」
「羨ましいなぁ!攻略組のサポート組入りしたら、自分にご褒美で買おうと貯金してたのに!」
「使い勝手はどうなのだ、ラグーネ。やはり、いいのか?」
護衛チームの面々は歩きながらラグーネの盾に集まって来ていた。
「もちろん、軽くて丈夫で最高なのだ。それにタウロの改造で特殊な能力もあるから、これでタウロ達を守れるのだ!」
ラグーネは、嬉しそうに護衛チームに自慢した。
試しにラグーネが、その特殊能力を歩きながら、護衛チームに見せる。
「『範囲防御』!」
ラグーネがそう言って、盾に魔力を込めると一面に半透明の盾が大きく展開される。
「「「おお!」」」
護衛チームは、それに驚く。
「これは、上位職である聖盾騎士の能力に似ているな!」
「あれほど範囲は広くないが、1チームを守るには丁度いい大きさだぞ。凄い盾だな!」
「ラグーネのレベルでこれを使えるとはかなり羨ましいぞ!」
護衛チームは素直にラグーネの自慢する盾を褒めるのだった。
ラグーネもタウロから貰った盾が褒められてかなり嬉しそうだ。
「そうだろう、タウロは凄いのだ!だからまたこうして一緒にチームを組めて嬉しいのだ」
ラグーネは満面の笑みで答える。
そばを歩くアンクもその言葉に頷く。
エアリスは何か考えに耽っている様子であったが、ラグーネの言葉に反応して頷いた。
「今日はタウロの付き添いだけど、チーム『黒金の翼』復活ね」
エアリスはそう言ってみんなを盛り上げた。
タウロはエアリスが無理している様に見えたので体調が悪いのかもしれないと気にしたが、顔色自体は悪くないので早々に任務を済ませて戻ろうと思うのであった。
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