第256話 いらない能力
タウロは途中の適当な広いスペースで立ち止まって貰うと、実験する事にした。
「闇の精霊魔法とはまた、珍しいですね」
リーダーが周囲の安全を確認しながら、タウロに感心する。
「そうですか?竜人族の方々なら沢山いそうですが」
「いない事はないですが、全体的に精霊魔法系、それも闇系を使える者は少ないです。それに加えて才能の有無もありますからね。精鋭であるダンジョン攻略組の今期メンバーに闇の精霊魔法使いはいなかったと思います」
「僕はそんなレベルではないですよ」
タウロは自分か過大評価されてるのかもしれないと謙虚に答えた。
「あ、すみません。ダンジョン攻略組は自分達にとっても雲の上の存在なので比べるものではないですね」
リーダーは恐縮するとタウロにお詫びした。
「でも、驚きました。闇系がそんなに貴重だと思いませんでした」
「竜人族には精霊魔法使い自体珍しいですから。そして、闇系よりは光系に適性がある者が多いのが竜人族なんですよ」
「そうなんですね。あ、それじゃあ、実験しますね」
「ああ、そうでした。どうぞ」
タウロは頷くと闇の精霊魔法、精神錯乱を唱える。
それだといつものままだが、今回はそこに『魔力操作』(極)で精神の一部を明確に操り動かす事が出来るか試そうと思ったのだ。
いきなり人に使うには危険な実験だと思えたし、普通の魔物では反撃にあう可能性もある。
集中して使うなら動きが遅く無害なスライム系が良いかもしれないとここに来て思いついたのだ。
闇系魔法の使用には普段タウロも気を遣うところだったので、最近では使用を控えていたが、竜人族はラグーネを含めてあるゆるスキルに精通している人が多いので実験してアドバイスも貰えそうだと思った。
だが、今聞いたところでは、闇系が竜人族内でも珍しいというのは予想外ではあったが…。
タウロは集中するとスライムを操ろうと集中する。
タウロが動けと念じると、対象のスライムの表面がブルンと波打った。
その瞬間であった。
「特殊スキル【&%$#】の発動条件の1つ<無害な魔物を操りし者>を確認。[スライム使い]を取得しました」
『世界の声』が脳裏に響く。
「…スライムを操るのには成功しました…。が、それと同時に、スライム使いというのを覚えたのですが、わかりますか?」
「実験成功おめでとうございます。…スライム使いですか。それは、魔物使いの一種ですが、私が習い聞いた限りですと…、最も役に立たない能力の1つと言われています。竜人族が子供時代に時折覚えるもので、スライムもテイムできるのは1匹と限定されてる上に、スライム自体最弱の魔物ですから子供の一時的な暇潰しになる程度の能力ですね。沢山操れればまだ使い道はあるのでしょうが、それも出来ない上に、初めて操ったスライムの種類に限定してしまうので、もし今ここのどれかを選んでテイムするとずっとその種類しか操れなくなります。やるなら少しでも役に立ちそうなスライムを選ぶ事をお勧めしますよ」
リーダーは拓けたその場所にいる多くの種類のスライムを見渡しながらタウロにアドバイスした。
「スライムが1匹だけテイムできる能力…。確かに役に立ちそうにないですね…。帰りまでにスライムの種類について教えて下さい。幸いここにはいろんな種類がいるみたいですし」
「ええ、わかりました。お勧めは治癒スライムですかね。治癒と言っても本当に微妙な回復しかしませんが、ポーションと併用すると外傷に少しは効果的です。帰りに見つけたらお教えしますよ」
リーダーは頷くと約束した。
一行は、タウロの実験を済ませると、1階層側の『転移室』を目指してまた、歩き始めた。
歩きながらタウロは、新たな能力のショボさに内心がっかりしたが、精神操作系魔法が『魔力操作』(極)で魔物を操れる事がわかっただけでも、十分成果があったと思う事にした。
それにこれだけスライムに種類があるのだ、何か役に立つ種類がいてもおかしくないはず。
帰りは、みんなに悪いがじっくり選ばせて貰おうと思うタウロであった。
そんな事を考えて進んでいると、また、開けた場所に出た。
「到着ですね。あの左側の通路の先に下へ進む階段があります。右側の通路の先が『転移室』、通称・休憩室があります」
リーダーが指さして教えてくれた。
「なぜ休憩室なんですか?」
タウロが疑問を口にした。
「休憩室は、魔物が寄りつけない様になっていて、休憩には持って来いなんです。私達はこの休憩室にいろんな備品や保存の利く食糧、予備のアイテムなどを保管してダンジョン攻略の要にしています。ダンジョン攻略のサポートをするメンバーがそれらを補充する役目を担っていますが、深い層ではそれも大変ですけどね。あ、1階層は何も置いていないので広々としていますよ」
リーダーはそういうと『転移室』通称・休憩室にタウロを案内するのであった。
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