第193話 再会

 突然現れたラグーネに二人の疑問はひとつだった。


「「何でまだここにいるんですか!」」


 最初に出会い、薬の作り方を教えて送り出した時、竜人族の村があるというアンタス山脈がある北ではなく、南に走って行ったので方向音痴を疑ったのだが、まだ、ここにいるという事は……。


 ラグーネさん、本当に極度の方向音痴!?


 あの日別れてから一か月近くが経過してる。

 ラグーネが言う竜人族の村くらいまで行けるくらいの日数だ。


 その間、道に迷い、そしてまたここに辿り着いたとしたら重症だ。


 というか竜人族の村の流行り病でどうなったかの方が心配だった。


「うん?私は薬のお礼をする為に戻ってきたのだ。お陰で村は救われたからな、ありがとう!」


 ラグーネは、深々と頭を下げた。


「え?村が救われた?もしかして……、村には戻れたんですか?」


「ああ、もちろんだ。村に戻って君から受け取った薬草で、教えて貰った薬を作り、流行り病を治せたのだ。族長に、『代表してお礼をしてこい』と、言われたから私が改めてやってきたのだ」


 という事は、一か月かかる道のりを最低でも半月以下で踏破し、村で薬を作り、治療し、治るのを見届けて、また、ここに来た事になる。


 まさか…、竜人族は空が飛べる?


 タウロがその答えに行きつくのも当然だろう。

 それ以外には考えられない。


「うん?あ、そうか。君は私の背中に翼があるか疑ってるのか?」


 タウロがラグーネの背中を見ようと、ラグーネの後ろに回り、覗き込もうとしたので察した様だ。


 ラグーネは後ろを向いて背中を見せると、


「私に翼は無いぞ。言っただろ、人族とあんまり変わらないって。竜人族だから鱗はあるが、それ以外での違いはほとんどないぞ。ははは!」


 と、説明すると笑って見せた。


「じゃあ、本当に走って村まで帰ったんですか!?」


 それが本当なら、とんでもない脚力だ、それの方が信じられない。


「恩人と言えど、詳しくは言えないが、私の能力で村まではすぐに帰れるのだ。だから、本当は村でかなりゆっくりしてからお礼に来た、すまない。族長からは金品から、一通りの武具、貴重な魔道具や、レアな素材など、君が望む物を渡す様預かってきている。君は何が望みだい?」


 ラグーネはマジック収納から何でも出す態勢をとった。


 タウロはエアリスと視線を合わせると、頷いた。


「お礼は特にいらないのですが……、それよりもラグーネさん。良かったら僕らのチームに入ってくれませんか?」


「え?」


 ラグーネは気の抜けた声を出した。


 意味が理解できない。

 こちらは竜人族秘蔵のお宝を片っ端から持ってきて望む物を渡すつもりでいたのだ。

 それくらい、竜人族は命の恩人に感謝している。

 族長にも、少年が望む限りのお礼をする様に念を押されていたのだが……。


「そうよ。私達、仲間が訳あって抜けたから、チームの前衛がいなくて困ってるの。ラグーネさんが代わりに仲間になってくれたら嬉しいわ」


 エアリスも頷いて懇願する。


「……竜人族秘蔵のお宝は、世界の誰もが喉から手が出る程欲しがる国宝級の物も沢山あるんだが?」


「それより、ラグーネさんみたいな仲間が欲しい」


 タウロも再度懇願した。


「……ちょ、ちょっと、待って欲しい。私ひとりでは判断できないから、族長に聞いてくる……!」


 余程慌てたのだろう、タウロとエアリスに秘密にしていた能力をその場で使って思わず村へと戻ってしまった。


 とは言っても、タウロとエアリスの視界からは、突然ラグーネが消えたようにしか見えなかった。


「「え!?」」


 二人は素直に驚いた。


「これが、ラグーネさんの能力!?」


「みたいね、転移系魔法かしら!?」


「……羨ましい……。僕の空間転移と交換して欲しい……」


 タウロがため息をつく。


「え?タウロ、いつの間に空間転移なんて覚えたの?」


「いや、ほら、あの時──」


 タウロがエアリスに聞かれたので説明を始め、どんなものなのか見せる事になった。


「距離は短いけど凄いじゃない!」


 エアリスがタウロの空間転移に驚いていると丁度、ラグーネが戻ってきた。


 ラグーネは戻ってきた目の前で、タウロが一瞬消えて移動したのでギョッとした。


「それは、もしかして空間転移!?」


 何か知ってるらしいラグーネは驚いた。


「あ、お帰りなさい。それで、結論は出ましたか?」


 タウロが魔力回復ポーションを飲みながらラグーネに答えを確認した。


 エアリスもラグーネの答えに注目した。


 ラグーネとしては、今、目の前で行われた空間転移?が、気になっていたのだが、二人の興味が自分にある様なのでそれに答える事にするのだった。

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