第186話 続・女性戦士
女性戦士は名前をラグーネと名乗った。
エアリスが指摘した蜥蜴人族ではないらしい。
「私は蜥蜴人族ではなく、竜人族だ」
「えー!?竜人族って、とても珍しくて希少な
エアリスは改めて驚いた。
「蜥蜴人族に間違われるのは、不本意だが、よく間違われるのは確かだ」
ラグーネはエアリスに理解を示した。
「じゃあ、この辺りの人ではないんですね。なぜここに?」
タウロが当然の疑問をラグーネにした。
「ここには、珍しく上質な薬草が多く自生していて良い薬になると噂を聞いてな。私の村では今、流行り病が起きていてその特効薬になるものはないかと探しにきていたのだ」
「そうでしたか。では、どういった効能の薬草を探しているのか教えてくれれば、探しますよ?」
タウロの能力には『植物の知識』と、それにリンクした『真眼』がある。
この辺りにあれば、すぐみつける事ができるのだ。
「そうか!……だが報酬はどうすればいい?君達は冒険者なのだろう?ギルドを通さず、仕事を請け負うのはご法度だろう」
「これは、人助けなので仕事ではないです。だから、ギルドを通す様な事ではありませんよ」
タウロは、笑顔で答えた。
「ありがとう……!……はっ!そう言っておいて、後から報酬に私の体を要求してくるのでは……!?くっ!殺せ!」
どうもラグーネは男性に余程、偏見がある様だ。
タウロは苦笑いしたが、本人は真剣な様なので、約束する事にした。
「それでは、エアリスが契約魔法が使えるので、無償で手伝う事を約束し、それを契約しましょう!」
タウロがそう提案するとエアリスは、
「いいけど、簡単なものにしとくわよ?」
と、契約魔法でタウロとラグーネの間に入り、呪文を唱えると二人の契約を交わした。
「では、これで、無償で手伝えますね」
タウロが、ラグーネに頷くと、ラグーネもやっと頷き返した。
「それでは頼む」
ラグーネの話では竜人族の村で流行ってる病は、人の間で流行ってるものとは少し違うらしい。
竜人族の間でのみ、ごく稀に起きる死病だそうだ。
症状は、高熱と、吐き気、節々の痛み、鱗の生えている部分に炎症が起きて爛れていく、そして、徐々に体が弱っていって、最後は死ぬ事もある。
確かに人だと鱗が無いので炎症が起きる症状の病気は無い。
「そうなると特殊だから……」
タウロはマジック収納から、以前から回収しストックしていた薬草をいくつか取り出した。
どれも、高価な値が付く貴重な薬草だ。
「これらに、以前から気になって一応とっておいた薬草が……」
真っ赤な色の薬草?を、追加して出した。
「それは火竜草?……だが、その草は、何の効能も無い雑草と言われているが?」
ラグーネが知識があったようで、指摘した。
「そう、単品では何の効能も無い薬草と、説明書きがされています」
「火竜草が薬草?初めて聞くのだが?」
ラグーネは半信半疑だ。
「僕も確信は無いので今から、これらの材料を元にポーションを作ります」
そういうとまた、マジック収納からポーション作りの道具を出すと、その場で作業を始めた。
時間をかけてタウロが作業をしている中、エアリスがラグーネに色々と話を聞いてみた。
竜人族は珍しいのだ、聞きたい事はいっぱいある。
「竜に変身できるって本当なの?」
「それは、言い伝えだけの話だ。私達は人種とさほど変わらないぞ」
ラグーネは、よく聞かれるのだろう、笑って答えた。
「じゃあ、竜人族特有のスキルがあるって話は?」
「それは、竜人族にもよるが、私は『竜騎士』というスキルを持っている」
「持ってるのね!?凄いじゃない!どんなスキルなの!?」
「そうだな……。ナイトの能力に、近いがあれほど重装備化せずに軽装備で耐久性を上げる能力を覚えるな。あと、敏捷、跳躍力も格段に上がる。他にも火や吹雪を吐く能力も覚える」
「へー!『竜騎士』って強そうね。じゃあ、ラグーネはどこから来たの?」
「私は北の竜の森から来た。ここからはかなり遠いが、私は脚力に自信があるからな、情報を集めながらここまでやって来たのだ」
「竜の森?聞いた事が無い地名だけど……」
「私達竜人族だけが呼んでいる地名だからな。一般的にはアンタス山脈地帯のどこかとだけ言っておこう」
ラグーネは、住んでいるところは言葉を濁した。
やはり、明かすにはまだ、信用が足らないという事だろう。
色々話していると時間が過ぎ、タウロが作業を終えた。
「──よし!完成した。思った通り、このポーションの効果を鑑定したら、ラグーネさんの言う通りの病の症状に効果があるポーションになってるよ」
タウロがラグーネに渡す。
「調合の仕方を教えるから、村に戻ったら作って見て下さい」
タウロはマジック収納から大量の高価な薬草類を出して、ラグーネに渡した。
「こんなに!?ありがとうタウロ殿!何と言っていいか……。くっ!殺……、あ、すまないいつもの口癖がつい……」
あ、それ、口癖なのね?
タウロは気になっていたラグーネの台詞がただの口癖とわかって安心するのだった。
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